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土曜日の昼下がり、駅前には二人の陰。
「ゆずき今電車だって、メール来た」
「なんで主役が遅れるんだ」
結居蘭と黒木は今日の主役を待っていた。
コンビのベンチに座り、先程買ったお茶を黒木は少し飲んだ。
駅の方から人がどんどんと出てくる、結居蘭はその中に真希を探すと、小さな彼女はすぐに見つかった。
真希は二人に駆け寄った。
「お待たせフレンド!」
「主役が遅れるとはいい度胸だな」
「おはようゆずき」
「おはようフレンド! あたしもなんか買う。ポテチとコーラでいいか」
「うん、そうだね」
「僕は遠慮しとくよ。お茶とおにぎりでいい」
「はぁ? パーティーだぞ! ポテチでコーラだろうが」
そんな事を言いながらコンビニに入る。
真希はカゴにポテトチップス塩味BIGサイズと二ℓのコーラ、チョコレート菓子を入れレジへと持って行った。
結居蘭と黒木は先程買い物を終えていた為、何も買わなかった。
買い物が終わった所で、真希が先頭を歩き、駅へと向かった。
「三駅先だぜあたしんち」
「なるほど」
そして三人は真希の家へと向かった。
***
「親とゆまは仕事で居ねぇからゆっくりしてけ」
由真と言うのは真希の姉だ、ネイリストの仕事をしている。
「おじゃましまーす」
結居蘭と黒木は声を合わせてそう言った。
二階へ上がれば、二部屋あり、その右側の部屋にはまきと書いてあるボードがドアにぶら下げられていた。
その部屋へと入ると、こぢんまりとした部屋だった。
赤と黒の家具、机にはノートがあった。
きっと日々の妄想を書き殴ったものだろう。
「にゃあ」
真希の部屋から三毛猫が出てきては、黒木の足に擦り寄った。
「おおルシファー、ここに居たのか」
真希がそう言っても返事をしない。
黒木は猫を優しく撫でると、真希の方を見た。
「この毛玉は女の子か? 女の子なら、擦り寄るのを許す」
「ルシファー・たまこって言うんだぜ! 女だ、な! たまこ」
「にゃあ」
どうやらルシファーは嫌で、たまこと呼ぶと返事をするらしい。結居蘭もたまこを撫でたいとゆっくりたまこに触れた。
嫌な顔もせず大人しく結居蘭にも撫でられた。
「かわいい。良いな猫。私は鳥飼ってるよ」
「へぇ! いいな」
「僕は鯉飼ってるよ」
「鯉……くろきさんらしいね」
「にしきくんとにしおとにしきちと、にしきちゃんとにしことにしみ」
「六匹も飼ってんのかよ……すご」
荷物を置いてから座ると、真希が「コップ持ってくる」と部屋を出た。
たまこは真希のベッドの上で寝ていた。
真希はすぐに戻ってきて、コップを机の上に置き、ノートは本棚にしまった。
三つのコップにコーラを注いだ。
「おい、僕はいらないと言っただろ」
「いいからほら! 乾杯!」
「乾杯、ゆずきおめでとう」
「ちっ……乾杯」
黒木も渋々コーラを飲んだ。初めて飲んだらしく怪訝な表情をしていた。
「やったぜー! 三人でパーティー楽しいぜ!」
「まだコーラしか飲んでないよ」
「集まれた事が楽しいんだぜ。フレンド達、ありがとうな」
真希は立ち上がると、本棚から古びたノートを取り出した。
「これ、あたしが幼い頃書いた落書き帳」
そこには魔法だとか悪魔だとかなんだとか色々汚い字で書いてあった。結居蘭はそれを見て楽しそうな顔をした。
「昔からこんなだったの?」
「そうだぜ! あたしは今も魔法使いさ」
「くだらない」
黒木はノートに対して見向きもしなかった。
「お前だってプリンスだろ? あたしは魔法使いってのわかるだろ?」
「わかるだろって、魔法使えないだろ? 君は魔法使いではない。僕はかっこよくて強いからプリンス、そうだろ?」
「スカーレット・ウィザードを怒らせたなクソゴリラ! デコピン」
「いった! 何するんだブタ!」
いつものが始まったよと、結居蘭は特に気にする事もなくノートを読んでいた。
「いいなー、楽しいよねこう言う世界があるって」
「流石ゆいら! わかってくれるか」
「うん。私は、本の世界に入り込むの好き」
「楽しいよな! みんな、それになりたいとか色々あるだろ? あたしはずっとそれなんだよ……でもさ」
真希は少し暗い顔をして、視線を落とした。
「みんな、昔の自分なんて嘘の様にやめちまう。そんなの子供っぽいとかダサいとかイタイとか言いやがる」
「自分の信じる物を信じれば良いだろう。そんなの、相手がどう思おうと関係ない」
「そうなんだよ。でもさ、あたし……ずっと友達居なくて。欲しかったのにさ、あたしの世界がわからないならば、あたしもお前らの世界なんて興味ないって思ってたんだ」
小学生まではごっこ遊びを一緒にしてくれる友達が沢山居たと言うが、中学に入ったくらいから、男子も女子もごっこ遊びをしなくなってしまったと真希は寂しそうに語った。
それからは一人で妄想ノートを書いたり、ギターを弾いたりして過ごしたそうだ。
そこから黒木と友達になり、結居蘭とも友達になったと言う。
「そんな時、くろきに出会って、更にはゆいらにも出会えた。二人と友達になれてさ、あたし、すげー嬉しいんだよ」
「そういえば、お前は何故、僕を友達だと言ったんだ?」
「一緒に宝を探した友って所かな」
「私は?」
「ゆいらって名前が聞いた事なくて、絶対に異世界人だと思って興味があったから。あとは、お前がつまんねぇ顔してたからつい物申したら、お前が困ってたから助けたってとこかな」
「私はゆずきが居てくれて本当に良かった。友達になれて、良かった」
「ありがとフレンド!」
真希はそのまま結居蘭に抱きついた。
「――僕も、良かったと思ってる」
「へぇ、やけに素直だな気味わりぃ」
「真面目な話だ。僕は友達が欲しかった。でも出来なかった。僕を僕として見てくれるお前には感謝している」
「くろきー! 大好きフレンド!」
そのまま真希は黒木にも抱きつこうとしたが、黒木に止められた。
「これからもよろしくフレンド!」
「うん」
「あぁ、そうだな」
三人は笑い合いながらパーティーを楽しんだ。
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