モンスターの襲来と結界
〜モンスター〜
ミシェルはため息をついた。私の名前、こんなに簡単に決めてしまって良かったのだろうか。どうせなら、もう少し考えて…も…。
何かを見たかのように、真剣な表情でミシェルは立ち上がった。セラとジェズも気づいたようで、目を合わせてきた。
「モンスター、入りましたね。町に」
セラは真剣な表情で、太刀を抜いた。体ぐらいの大きさを両手で斜めに構えた。ジェズも、体の倍はある槍を真っ直ぐに構えた。
「…。セラ、西をお願い。ジェズ、東へ。私は、北を殺ります」
ミシェルは気をめぐらしながらそう言うと、扉を大きく開け放ち、走りだした。風の切る音が耳元でヒュウヒュウとなる。一瞬で違う景色がコロコロと変わり、やがて二体のモンスターの姿が見えた。
歯を食いしばり、ズザザッという音を立て止まる。上を見上げると、建物の上にいる狼のような巨大なモンスターがうなり声をあげながら、こちらを見ていた。そのうちの一体は、反対側にいる人々のほうを先に襲おうと足に力を入れた。
「ピュィィィィィ」
その時、ミシェルは口笛をふいた。高く、澄んだ音が空気を振動させ、辺りに響き渡る。モンスターは耳をピクリとさせるとミシェルの方に完全に意識を向けた。
「覚悟して。今の私は甘くない」
ミシェルは目を細めた。冷たく震えそうなくらい殺気のこもる目つきに変わる。腰にかけた双剣を抜くと、低く構えた。その瞬間、ミシェルの体がぶれる。モンスターが驚く暇もなく、モンスターの目の前にミシェルの姿が現れた。
「キャウッ!?」
モンスターは慌てて人を簡単に引き裂けるだろう爪を振り回すが、少しも当たらない。動きが単調すぎるからだ。ミシェルは、空中で避けながらも回転をつけ、モンスターの足を斬りつける。血しぶきがパッと散り、ミシェルの頬や黒い服にベシャリとついた。ガクンと倒れたモンスターの背中に、ミシェルは双剣を何度も斬りつけた。一体のモンスターが死ぬと、もう一体のモンスターは怒り狂い、ガァァァァ!!と吠えた。生臭く、生暖かい息が突風のようにミシェルに叩きつけられる。
「…」
ミシェルは迫り来るモンスターの牙をくるくると回転して避け、建物の上に着地すると、気を落ち着けた。時間の流れが遅くなり、ユラユラと目の前でなにかが揺れた。モンスターの牙はゆっくりと迫ってきている。ゆらゆらと揺れる気。それを動かすイメージをしながら、他のものには聞き取れない言葉を発すると、それは中心へと集まり、光を放ちながら形を作る。…巨大な氷塊だ。モンスターの牙はミシェルの目の前にまで来ていた。魔法でつくった尖った氷塊は、ミシェルが手をモンスターに向けると、ヒュッと音を立てすごい速さで飛び、モンスターの口の中から体を貫いた。
「ガァァッ!!」
モンスターはしばらくピクピクと動いていたが、ついに動かなくなった。人々はしんと静まっていたが、徐々に騒ぎ始め、安心したようで、建物から出てきた。歓声が上がり、中には抱き合う人もいた。
「ありがとうね。こりゃ少ないけど礼だ」
ミシェルは突然お金を渡され戸惑う。
「わ、私は…」
「いい、いい。俺達の命と比べたら安すぎるものだ!」
ミシェルは仕方なく、腰の袋に入れる。そして、気をめぐらせ、二人の戦闘も終わったことに気づき、宿に戻る道を歩き出した。
〜結界〜
「お疲れ様でーす。ミシェル、連戦でしたけど大丈夫でした?」
セラとジェズは先に宿にいて、セラは隣の席を空けた。ミシェルはセラの隣に座った。そして、
「大丈夫、ですよ。それより、今までよりもモンスターの入ってくる数、増えてませんか?」
と言った。セラはゴクゴクと水を飲んでいたが、途中で止まると、
「そうなんですよね〜結界ゆるくなってるんだと思いますよー。どうしたらいいんでしたっけ?」
と言い、首を傾げた。ミシェルは知らないのでジェズの方に目を向けた。ジェズは眉をあげると、
「結界強めるためには、力を込めりゃいいんだ。ミシェルは知らねーかもしんねーが、結界ってーのはこの町守ってるやつでな。神秘の洞窟にいきゃわかる 」
と説明した。ミシェルは少しだけ間をあけると、立ち上がった。するとセラが目を輝かせ、
「行くんですか!?私達も行きますよ、ねっジェズ」
と言った。ジェズは少し眉を寄せ、
「南にあるんだが…。込める力が弱いと効果は無い。ミシェルなら大丈夫だろうが…反動で力が抜けちまうぞ?」
と忠告した。
「大丈夫。行こう」
ミシェルはそう言うと、双剣を腰にかけ、神秘の洞窟に向けて出発した。




