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あの日見た桜は  作者: 森好子


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第一話:新築アパートの秘密

あの頃、私は少々責任の重い仕事をしていた。

そして新しい職場では、せめて生活に余裕を持とうと、少し家賃が割高な新築アパートに引っ越したが、

部屋は眠るだけの場所となり、へとへとに疲れて毎日真っ暗な道を自転車で帰る生活を送っていた。


そしてその部屋は、アパートが完成する前に契約したので気づかなかったが、ベランダに出ると一面に

古くからそこにあるような墓が目の前に広がった。

さらにアパートの駐車場から敷地までには、新築のアパートにそぐわない、かなりの歴史を感じる石段があった。


私は、このことから、寺を取り壊してアパートを建てたのではないか、という疑いを持つ。

せっかくの新築アパートなのに...ベランダをあけたら古いお墓に囲まれているなんて、

残念なことこの上ない。

とはいえ、引っ越してきたばかりでまた引っ越すような気力は無かった。

それでも、せめて家賃だけでも値引きしてもらおうと勇気を振り絞り

不動産会社に「心理的瑕疵」にあたり説明不足と直談判したが

「アパートが建つ前は空き地だった」「寺があった事実はない」の一点張り。

それなら何故古い石段や大量のお墓があるのか問い詰めても「知らない」と切り捨てられた。



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