張り裂けた二人
ぎぐしゃぐしてしまった私たちは、帰路についていた。
ウルが私の5歩先を歩いている。
二人とも何も言わず、沈黙が続いていた。
ウルはまっすぐ前を向いて、スタスタと歩いていた。
私はというと、さっきの出来事に落ち込みを隠せず、俯きながらトボトボ歩いていた。
どうすれば償いができるだろうかーー
そればかりが頭の中を駆け巡っていた。
あーー
そんなことをグルグル考えていたからか、私はなにかに躓いてしまったようだ。
おっとっと……
ギリギリのところでバランスをとったけれど、危うくこけてしまうところだった。
ふう、と息をついた拍子に前を向いた。
すると、こちらに振り返っていたウルと目が合ってしまった。ウルは心配そうにこちらを見ていた。
私は少し気まずくなり、へへ、と笑って見せた。
するとウルも表情を変え、ふん、と少し笑った。
「お前、やっぱりドジだな。」
「え、えぇ?」
「何もないところでこけるなんて、ドジの他ねぇじゃん。」
「うう、そんなことないよぉ。」
またドジだといわれてしまった私は、精一杯否定した。
でも、私はなぜこんなことで張り合っているのだろう。
ははは!
私はなんだかおかしくなってお腹を抱えてつい笑ってしまった。
私を見てつられたのか、ウルも一緒に笑ってくれた。
ウルは笑っていた顔から少し申し訳なさそうな顔に変え、頭をかきながら、
「……ごめん。さっきはカッとなっちまって……」
と言った。
私も笑うのをやめる。そして、今度はしっかりウルの目を見て謝った。
「謝るのは私の方だよ。私自身の問題だったのに、関係のないウルにまで迷惑を……いや、迷惑どころじゃないよね。これでウルは……指名手配されてしまうんでしょ。本当に、ごめんなさい。」
私は深々とお辞儀をした。
そして、さっきまで心の中で考えていたことをそのままウルに伝えた。
誠心誠意謝罪する意を込めて。
けれど、ウルが答えてくれたことは少し予想とは違った。
「いや、それはいいんだ.......もう。あの時はすごく焦っていたから。ついあんなことを口走っ知っちまって。それに、‘‘追われる‘‘っていうのは嘘だ。獣人嫌いの奴らもそこまではしないよ。それより.......いや、何でもない。」
ウルは何かをごまかすように私から一瞬目を背け、何かの考えを振り払うように頭を少し横に振ったように見えた。
「嘘だったの!?」
私は驚きを隠せず、少し大きな声が出てしまった。さっきまでの心配は何だったんだ、そう思ったけれどそれと同時に私は胸をなでおろした。
「ごめんごめん。」
私に視線を戻したウルはへらへらと笑った。
そして、私の方にゆっくりと歩み寄ってきた。
「だからもう気にすんな。仲直りだ。」
ウルはそう言って私に手を差し伸べた。
「うん。」
私は短くそう言って、手を握り返した。
ーーーーーーー
仲直りした私達はまた、談笑しながら歩いていた。
その時、ふと、私は横に目をやった。
そこには私が以前、一番最初に人間として暮らすため働こうとした、雑貨屋があった。
相変わらず、ショーウィンドウからはキラキラ輝くアクセサリーや素敵な小物が覗いていた。
「どうしたんだ?」
その言葉で、私は急に現実に戻された。
気づかないうちに私はその場で立ち止まって、そのショーウィンドウを眺めていたみたいだった。
「ごめん。なんだか綺麗だな、と思って。」
私は少し恥ずかしくなって早口にそう告げた。
ウルはそれを聞いて、私と同じようにそのショーウィンドウを見た。
「ああ、確かに、綺麗なブレスレットだ。お前、ああいうのが好きなのか?」
「う、うん。人間が作るアクセサリーってとてもキラキラしていて.......獣人界にはああいうものはないから。ずっと憧れがあるの。」
ウルが綺麗だ、と言ってくれたことで少し自信を取り戻した私はもう一度それを眺めて言った。
するとウルは少し考える様子を見せたあと、予想だにしないことを告げた。
「買ってやる。」
「え!」
私は驚きのあまりウルを見て、彼は正気かと疑った。
「でも、キラキラしたものは高いんでしょ。ホウセキ、っていうのが使われているって……」
ウルはそれを聞いて笑った。
「はは、すべてがそうじゃない。確かに、宝石が使われているのは高価だ。でも、あれはプラスチックだろ。さっきの嘘ついたお詫びに買ってやる。」
「え?プラ.......なんて?」
「まあまあ、安くキラキラしたもんが作れる素材ってことだよ。」
ウルはショーウィンドウを見ながら説明してくれた。
「そ、そんなものがあるの!?」
私が衝撃を隠せない様子に、人間はすごいだろ、というような顔でウルはにんまりと笑った。
「よし、そうと決まればお店に入って好きなもの選べ。」
「え、でも.......」
「なんだよ。」
私は想像してみた。昔からずっと憧れだったお店に入り、追い出されることもなく好きな商品を買うことが出来る。それって.......
「き、緊張するぅー!」
はははは!ウルは大笑いして
「大丈夫、俺が隣にいるから。」
そう言って、私の肩をポンポンとたたいた。
「う、うう.......」
私はそれでもごねた。
ただ緊張しているからだけではないということを私の心が叫んでいた。
だって長年の夢がこんなあっさり叶おうとしてしまっているなんて。それに、人間の店に入って、(さらにその店には苦い思い出が.......)自分の欲しいものを買うなんて!
さっき行った中古ショップはほとんどうウルが選んで購入したから、私はただ横についているだけだった。
「どうするんだ。買いたいのか、買わないのか、はっきりしてくれ。」
ウルがそういって私を急かしてきた。
「か、買いに行く!!!!」
私は周りの人が私を振り返るくらいには大きな声でそう宣言した。
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