すべてが消えた日
私は見ていた。ただ見ているしかなかった。燃え上がる炎、真っ赤に燃え上がる森。火は勢いを増していた。その姿はもはや、今まで住んでいたなじみのある場所ではなかった。
この森の中にいる動物、そして私達一族の狐獣人皆、助からないであろうことは誰が見ても明白だった。
「お母さーん!!みんなー!」
私は声の限り叫んだ。返事はなかった。助けに行くにも、もう目の前まで火が迫っていた。肌が焼けこげそうなほど熱い。
もう耐えられないーー
そう思った私は燃え盛る森から逃げるしかなかった。
私は走った。泣いた。後悔していた。
あの時、みんなといればーー
いっそのことみんなと一緒に死ねたのにーー
やはり両親が正解だったのか。
あれほど人間は危ないから人間の街に行くなと言われていたのに。
あの時私が言うことを聞いて、この森にみんなといていればーー
ーーそのあとのことはあまり覚えていないーー
あの後、あの火事を起こしたのは人間の魔女だと知った。
「獣人族は危険な存在だ。人間界を征服しようと企んでいるということが占いの結果で出た」のだという。それを多くの人間は信じた。
なぜならもともと私達獣人は人間から蔑まれていたから。
「獣人は人間になりきれなかった醜い生き物。」
「森の中で非文明的な生活をしている汚い人間もどき」
「野蛮で獰猛」
こんな風に思っている人間がほとんどだったから、魔女の言うことを信じた、もしくはうまく利用して獣人を滅ぼそうとしたのかもしれない。
私達の住処は、結界が張ってあって、普通の人間はこの場所に行くことも、見ることもできない。
しかし、魔女がその結界の場所を特定して、私たちの住処を暴いてしまった。
そして、私達一族を私以外全滅させた。
なぜそこまでしたのか、わからない。
魔女の言うことはもちろん嘘だ。
人間の世界を征服しようだなんて誰一人思っていない。
それに、人間が抱く獣人のイメージも全くの間違い。
私達は、言ってしまえば獣の姿への変身能力、住んでいる場所を除いて人間とほとんど変わりない存在だ。もちろん森の中で文明を築いている。
......でも、ほとんどの人間はそのことを知らない。
そして、知ろうともしない。
自分たちと少し異なる存在が怖いのだろうか。
でも、そんな世の中でも私は、人間に憧れをを抱いていた。キラキラしたアクセサリー(ホウセキ、というものが使われているらしい。)、見たことない食べ物ーー
だからこそ私は、みんなに反対されながらも、こっそり人間の住む町へと足しげく通っていた。獣人だとばれてしまうと面倒なことに、ましてや殺される可能性すらあるので、こっそり、素敵なお店を影から見る、くらいの程度だったけれど。
ーーでも、そんなことをしていたから、みんなと死ねなかったんだ。
私は今、辺り一面灰になってしまった私の住んでいた村にいた。私の家は跡形もなく消えていた。
そして今私は、何もない原っぱで、死のうとしてる。
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