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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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7/15

第七話 少し暖かい夜

私の机を囲んで、乙葉と美華が指を差し合いながら笑い転げている。その光景にも目を向けず、教卓に立つ女性は優しい声で


「そろそろハオリンピックのクラスの責任者決めたいんだけど、誰かやりたい人いる?」

先生はみんなに聞いてるけど、誰も目を合わせようとはしない。責任者は色々とめんどくさいって聞いてるし。

「今年は珠は何出るの〜?ウチら去年マジで弱くて、全部一回戦負けだよね〜」

「バスケとかかなー」

「珠のおかげでウチらバスケなら可能性あったもんね〜」

「それね〜!マジで珠はバスケ上手かった〜」

「小学生の時にちょっとバスケのチームに入ってたからねー」


昨年のハオリンピックでは、全部一回戦負け。

教室でずっとお菓子パーティーをしていた。


「じゃあ藤崎君から引いてちょうだい」

乙葉と美華の笑い声でよく聞こえなかったけど、急にクラス全体が爆笑に包まれた。

「1番最初に引いて、当たるとか運強すぎだろ」

「貴大、ふぁいとー」

男子の責任者は、貴大君になったらしい。

めんどくさい。でも、貴大君となら別にいいかな。

半々な気持ちで、残念そうな彼を見ていた。


「乙葉!マジでやりたくなくね〜?ウチらそんな時間なくね〜?」

「ほんとそれな!マジでなったら、バックレる自信あるわ〜」

2人はやりたくないと口にはしてるけど、意外とちゃんとやるのがこの2人だと私は知っている。


箱から手を出して安堵な表情が増えるたびに、胸のソワソワ感が高まる。次の次が私かと思っていたら

「私になっちゃったよ」

「じゃあ女子は遠藤さんで」


めんどくさいことを回避できたのに、少し期待していた私がいた。遠藤さんの引いた紙から、目が離せない。


その日の夕方、いつもより遅く貴大君は家に帰ってきた。

そのリュックには女子に人気の缶バッチが付いていて、体に電気が走った。あれは男子のセンスじゃない。

「何?その缶バッチ!可愛いねー」

「これ誕生日プレゼントでもらってさ」

まさかの誕生日プレゼント。貴大君ってプレゼントをもらう女友達とかいたんだと、私は目を丸くした。

「誕生日?たかぴー、いつ誕生日?」

「明後日だよ!」

女子にプレゼントをもらう貴大君に動揺して、勢いで私も誕生日プレゼントを一緒に買いに行く予定を提案していた。

「いいよー、いいよー」

「家族なんだから、遠慮すんなってー!兄妹なら当たり前だよ!」

たぶん男子からもらっていたら、そんなに強くは言わないと思う。少し強引だけどいいかと明日行くことが決定した。


部屋でベッドに横たわると、

「なんか少し恥ずかしいな」

同世代の人と2人で街を歩くなんて、初めてだと頭をよぎった。

「まぁ家族だし、えーと、服は…」

家族なら当たり前が魔法のような便利な言葉である。少しデートみたいだと鼻歌を歌いながら、鏡の前で服を選んでいた。


「珠凛ちゃん!こっち向いて!」

「次は下から覗き込むように!」

5月の初めなのに半袖で1枚で余裕な暑さの中、カメラのシャッター音が鳴り続ける。

「今日も良かったよ!それにしても今日は暑かったね!みんなでアイスでも食べに行くかい?」

「すみません!今日この後予定が…!またよろしくお願いします!」

「珠凛ちゃんが撮影の後に予定あるなんて、珍しいな」

この暑さの影響で撮影が長引いてしまい、貴大君との集合時間ギリギリになってしまったのだ。長い髪の毛をなびかせて人混みに向かって駆け抜けた。


「やべー、汗止まんねー、あ、待ってるじゃん」

スマホのカメラで髪型をチェックしている貴大君を発見。私が手を振ると、恥ずかしげに小さく手を振りかえしてくれている。


私と似ている色の組み合わせの服装。貴大君は

「いやいや、珠凛ちゃんのはオシャレだけど、僕は制服みたいじゃん」

と言うけど、けっこう似合っているし制服と違って、大人の男性に見える。私もモデルやってるから、服装には疎くはない。少しこの暑さのせいなのかな。


「珠凛ちゃんって何やってるの?」

「モデルしてるんだよ。たまに朝早い日とか帰りが遅い日は撮影だと思っといて。この前なんて、カメラマンの人と歩いているの見られて、「あいつはパパ活してる」とか言われちゃって、めんどくさいよ。勝手に決めつけられるのが一番嫌い。」


自分のことをあまり語らない私は、ついつい長く話してしまう。別に誤解されてる話なんていらないのに。

「珠凛ちゃんすごいじゃん!俺と歩いてて大丈夫?」

貴大君の何気ない「俺」の一言。それは私の胸の中の何かを掴まれたような感覚があった。


買い物中、気付けば私は色々と自分を知って欲しくなっていた。頭の中で半透明になっている貴大君と由紀恵さんのプレゼント。

「珠凛ちゃん!この服!母の日にどう?」


カーネーションの絵柄を見た瞬間、一瞬母の顔が頭によぎった。ハッと私は浮かれていたことに気づく。

「由紀恵さんに似合いそうじゃん!」

「母の日だし、ワンポイントにカーネーションって良くない?」

でも悲しい記憶を消すように、初めての異性との買い物は何もかもが輝いて見えている。


いろんな意味で

「めっちゃいいじゃーーん」


結局、貴大君はよくわからないリストバンドが欲しいって言うからプレゼントはあげられた。とりあえず今日のミッションは達成。


その日の夜。

久しぶりに楽しい母の日だった。みんなであんなに泣くから、貴大君の誕生日パーティーってことを忘れてしまっていた。


「お父さんもたかぴーも寝ちゃったみたいだね」

「珠凛ちゃん。本当にありがとうね。母の日のプレゼントなんてもらうの初めて」

ソファーで由紀恵さんのシャンプーの香りが、心地よく感じている私。

「あの服を見つけたのは、たかぴーだよ!意外と服選びのセンスいいんだよー」

「そうね!貴大が選ぶとは思わないわね。あははー」


母と由紀恵さんを少し重ねてしまって、急に目の前がぼやけてしまった。よく見えないけど、由紀恵さんは私の頭を撫で始めた。

「ずっと寂しかったね。今は私がいるからなんでも言ってね。珠凛ちゃんは強い子だから、弱音も言わないからね。」

「……うん」


由紀恵さんの温もりの中で私は…自分のことを考えていた。


あの日の、お父さんの泣き顔。

玉子焼きの甘い匂い。

私は泣かなかった。

頼りたい夜もあった。

でも、泣いたら終わる気がして。


ああ私。

…ずっと寂しかったんだ。


頬を伝ったものが、由紀恵さんの服に染み込んでいった。

「私もね、ずっと一人で頑張ってきたの。だから少しはわかるよ。頼るって、難しいよね」


初めて会った時から由紀恵さんは私の気持ちを理解していた。右耳にかかる吐息を聞きながら、少し視界が戻ってきて、

「由紀恵さんも寂しかったんでしょ?じゃあウチにも頼りなよ」

私は俯いた顔を上げて、由紀恵さんのいろんな思いを包むように抱きしめた。

「ありがとう、ありがとお」

「うん、うん」

鼻を啜る音と混じる由紀恵さんの言葉。

「ウチら今日ずっと泣いてるね。ふふ」

「珠凛ちゃんが本当にやざしいがら〜。貴大も優しく成長してくれれば〜」

「たかぴーけっこう優しいよー」

「そんなことないよー。私のプリンとか食べちゃうし」


気づいたら2人の涙は笑顔の晴れ模様に変わっていた。

今日が、貴大君の誕生日だったことを思い出して、胸が少しだけ温かくなった。


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