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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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第十三話 花火の下、もう一度

夏休みも残り1週間、静まった夜の勉強机。

宿題のテキストも残り数ページのところで、スマホのバイブ音にシャーペンが止まる。

「乙葉と美華、帰ってきてるんだ!」

スマホを覗くと夏祭りの誘いのメッセージだった。

毎年夏休みは3人で祭りに行くのが恒例になっている。


「今年は何を食べようかな〜」

祭りの日を想像しながら宿題を仕上げるスピードが上がっていくと


「珠凛ちゃんって夏祭り行くの?」

ドアのノック音と貴大君の声が同時に、静かな部屋に響く。手が一瞬止まる。


「乙葉と美華と行くー!」

「そうかー。オッケー」


貴大君の寂しそうな声と遠ざかる足音に、タイミングが違ったらどうしていただろうかと思う。その日の夜は宿題に手がつかず終わらせることができなかった。


乙葉の白と水色の浴衣姿を見ながら、りんご飴の列に並んでいる私。

「珠は宿題終わった〜?」

「もちろん!終わったのは昨日だけどー!」

「さすがだね〜!あっ美華!!」

「お待たせ〜」

「美華の浴衣可愛いじゃーん!ピンクいいね!」

「珠も可愛いよ〜!青もいいじゃ〜ん」

おばあちゃんの家から帰ってきた日に夏祭りにくるアクティブな美華である。


「えっ、めっちゃ可愛いじゃん!」

「3人ともビジュやばくね?俺、金髪の子だわ」

派手な髪の女性が3人も揃えば、すれ違う人が振り向くのは無理もない。そんなことはいつものことで、いちいち気にするような素振りも見せない私たち。


「次何食べる?めちゃお腹減ってるんだけど〜」

「美華食べ過ぎ!じゃあ焼きそばに行こうか〜」

「それいいね〜」

乙葉が焼きそばの方に指をさすと、横にある金魚すくいの屋台が目に入る。


「あっ」

つい足が止まってしまう。金魚すくいの人たちに紛れて貴大君を見つけた。その横に肩を寄せて笑う前川さんも。

2人の笑顔に無意識に下唇を噛んでいた。

自分だけ取り残された気がした。


なんで、胸がこんなに重いんだろう。

友達といるのに、ひとりみたいだった。


「珠?どうした〜?」

「金魚すくいでもしたいの〜?」

「えっ?焼きそば早く並ぼうー!」


人混みの流れが一瞬止まったように感じながら、祭りの熱さと焼きそばの香りに胸がザワつく。


やっと見つけた空いているベンチ。3人横並びで焼きそばを食べながら、箸を止めた美華が

「ってか、さっき藤崎君いなかった?」

「たかぴーいた?」

とぼける私を鋭い目で見る美華に、何か見透かされている気がした。対照的に乙葉は

「珠は藤崎君に誘われなかったの〜?同じ家にいるのに〜」

「誘われたというより、夏祭り行くか聞かれただけだよ」

「絶対それ、誘おうとしてたじゃん!ねぇ美華!」

「そうだね。別にうちらに気を使わなくてもいいよ。私たちが先に誘ったから優先したんでしょ?」


美華の言う通りにぐうの音も出ない。

「でも乙葉と美華と夏祭り行きたかったし!」

「それならいいけどさ」

「うちらはずっと仲良しだからね〜!珠も美華もよろしくね

〜」

少し冷めた美華と、空元気に答える私を乙葉が包むように抱きしめる。

自然と笑顔になる3人には、側から見れば微笑ましく見えている。


「あれ?珠凛?」

暗くてよく見えないけど、高身長なのはわかる。

「やっぱり珠凛じゃん!」

少し癖っ毛の茶髪の爽やかイケメン。一瞬、目を大きく開く。


「珠、誰このイケメン?乙葉知ってる?」

「やばっ!かっこいいじゃん!知らないよ」

2人は焼きそばを食べながら、立ち上がっている。


「覚えてないの?友也だよ!」

「えーー!あの友也ー?」


彼の名前は銀田友也。私が親を亡くしてから、唯一心を開いた人だ。でも中2の夏に親の転勤で海外に引っ越してしまった。


「そうだよ!元気で良かった!あれ?笹川さんと前鶴さんでしょ?」

「なんでうちらのこと知ってるの?」

「怖いー!エスパーですか?」

「一応、同じ中学校だからさ!」


目を丸くする2人に、頭を掻きながら笑う友也は

「中学の時はモヒカンだったしね!サッカー部の銀田って覚えてない?中2までいたんだけどなー」


乙葉と美華はお互い指をさし合って

「あーー!思い出した!」

「いたねーー!めっちゃ変わってるじゃん!」


中学の思い出話で盛り上がる4人。友也との再会に心躍る。

「ちょっとお手洗いでも〜!美華!一緒に行こう〜」

「いや、お手洗いとか言ったことないだろ、乙葉!」


なぜか乙葉はこっちに振り向いて片目を閉じて、笑っている。友也がベンチに腰をかけて

「あの2人とはいつから仲良しなの?」

「中3から同じクラスになって、仲良くなったんだ!」

「そうなんだ!珠凛の雰囲気が変わったぐらいだから、心を許せる友達が出来て良かったよ」


中学の頃の嫌な思い出と少しの希望を見せてくれた友也を頭によぎりながら、絞り出した声で

「友也のおかげだよ、あの時普通に話しかけてくれたから」

「たまたま席が横だったからだよ!あはは」

頭を掻きながら笑って誤魔化す友也に、私は中学の頃の気持ちが少し灯ったのを、全身に走る鳥肌で気づいた。


ブーブー


スマホの画面が光る、乙葉からのメッセージ。


「ちょっと美華と金魚すくいしてくるから、2人で楽しんで〜!」


2人が空気を読んでくれているのは、わかるけど…今は複雑な気持ちで、2人がいてくれた方が楽だった。


「なんか2人とも戻れそうにないみたいだから、どっか行こうか?大丈夫?」

「俺は全然いいよ!」

屋台に囲まれた一本道を歩きながら、奥の鳥居に向かう。見上げる友也の横顔に中学2の夏を思い出す。


3年前の奥の鳥居で花火を見ながら震える私。少し悲しそうな友也が目の前にいた。

「実は今日で珠凛と会うのが、最後なんだ」

「なんで?」

「実は引っ越しすることになって…」

「そうなんだね…」

「意外とあっさりだね…」

涙を堪える友也の言葉に、堪えきれなかった私。

涙でぼやけて、逆に美しく見える花火に心苦しくなった。

「珠凛のことが好き」


その瞬間、花火の音が消えた。


息が触れる距離で、彼の声が震えていた。

そっと抱き寄せられて前が見えない私の唇に、唇が重なった。


「うわー、鳥居はすごい混んでるね!」

顔が熱くなることを思い出していたら、鳥居の下まで来ていた。


「ここ懐かしい!そうだ!珠凛に言っとくわ」

「なにー?」

私の胸の鼓動があの日の続きのように早くなる。


「俺、こっちに戻ってきたから、またよろしく!」

「そうなのー?」

「2学期から羽織高校!」

「私と一緒じゃん!」

「マジー?めっちゃ楽しみなんだけど!」


ドッカーン


私たちの笑い声は花火の音に消されて、少しの期待感を感じて、何かが動き出した音が、胸の奥で鳴った。

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