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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
カルムクラインの生き残り

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アラウィリア領主



アラウィリア城の上空から降り立つ場所を探していると手を振っている人を見つけた。

「アブストールだ。降りるぞ」

グレイザックを先頭にゆっくりと降り立つ。


そこにはアブストール他知らない人が数人待っていた。

グレイザックは天馬から降りると優雅に跪く。


「この度はご招待頂きまして誠にありがとうございます」

グレイザックが跪くものだから、リディオノーレ達も見習って跪く。


「久しいな、グレイザック」

アブストールの隣に立っていた男性が口を開いた。

黒髪で頬に傷がある精悍な顔つきな男性だ。

そして、グレイザックを呼び捨てにすることから地位が上の人だと察せられる。


「ご領主どのも息災なようで何よりでございます」

リディオノーレの推測は当たっていた。

頬に傷がある男性はアラウィリアの領主であった。


「グレイザックは相変わらず楽しいことをやっているそうじゃないか。来るのを心待ちにしていたぞ」

アラウィリア領主はチラ、とリディオノーレを見た。

そして続ける。


「紹介してくれ」

そう言われ、グレイザックはリディオノーレに隣に来るよう促す。

彼女は彼の隣に並ぶとアラウィリア領主をまっすぐ見上げた。


「私の弟子のリディオノーレでございます」

「リディオノーレと申します。以後お見知りおき下さいませ」

リディオノーレは述べた。


「そちがカルムクラインの生き残りか」

アラウィリア領主はリディオノーレをじっくりと見つめる。値踏みしている目だ。


領主が発したその単語にリディオノーレは眉を少しぴくりと動かしただけでにこりと微笑んだ。


「今はリディオノーレと申します」

彼女はハッキリと堂々と臆することなく言い切った。

そんな彼女を領主は面白そうに見つめる。


「カルムクラインの生き残りだろう?」

領主は唇の端を上げ、見下ろしている。


「グレイザック様の弟子でございます」

「グレイザックと同じように非情な手を思いつく弟子か」

その言葉にアブストールが領主を止めようとした動きを見せた。

あまりにも侮蔑が過ぎる。


リディオノーレは領主の言葉に笑みを深くした。

隣にいたグレイザックの眉が上がったが、彼女は気にしない。


「私のことをどう言おうと構いません。でもグレイザック様のことを貶さないで下さいませ」

リディオノーレは領主相手に言い切った。

臆することのない彼女の態度に護衛騎士2人とアラウィリアの者たちが顔だけで驚きを表す。


「カルムクラインの生き残りの娘よ。それは宣戦布告か?」

領主はまだ煽る。

「師匠を貶す者は許しません」

リディオノーレはまっすぐ見つめ返す。

領主もじっくりと彼女を見つめる。


数拍のち、隣のグレイザックがひとつ咳払いをして口を開いた。


「領主どの、冗談が過ぎます。こいつは本当にやりかねないのでそれくらいで許してやってください」

グレイザックは息を吐いた。

領主とリディオノーレのやり取りは見ていてハラハラする。


「………くくく、すまぬ」

領主は怖い顔をやめ、ひとしきり笑った。

緩んだ空気にリディオノーレも安堵する。


「リディオノーレ、そちのグレイザックへの思い確と分かった。試すような真似をしてすまぬな。その心意気、気に入った」

「………生意気言いまして申し訳ありません」


リディオノーレは謝った。


「良い良い。今のはこちらが悪かった。嫌な言葉を浴びせて悪かったな。夜に皆で食事をしよう」

「ありがとうございます。土産がありますので、運ばせて下さい。サムエル」

グレイザックはサムエルに指示をし、唯一天馬車で来ていたサムエルが馬車から荷物をたくさん取り出す。


「気を遣わせたな。では、また後ほど会おう。長旅ご苦労であった。リディオノーレ、アラウィリア領へ歓迎する」

領主はひらひらと手を振って城の中に入って行った。


姿が見えなくなって、アブストールは口を開いた。


「リディオノーレ様、無謀すぎます」

アブストールは頭を抱えながら述べる。


「師匠を貶されたら苛立つに決まってるじゃないですか。それを分かってやってるなら悪気ありまくりですし」

リディオノーレは頬を膨らませながら答えた。


「お前は馬鹿だろう。完全に逆賊じゃないか」

「でも領地的にはアインズビルの方が上なんですよね?なら、グレイザック様のことを貶す方が間違ってませんか?」

リディオノーレはまだ苛立っているようだ。


「もう良い。あんな言葉にイチイチ反応するな」

グレイザックは彼女の額を弾くとアブストールに案内を頼み、それぞれの部屋を教えてもらった後、グレイザックの部屋に集合した。


部屋に入った途端、リディオノーレに向かって愚痴を言い始めた男たち。

「領主相手に盾突かないでください」

サムエルが呆れる。

「見ているこっちが怖いです」

フェルバールも文句を言う。

もう1人の護衛もこくこくと頷く。


「………冗談でもああやって言う所が私は嫌いですね」

ムナグレークがぼそっと呟いた。

「ですよね!!」

呟きを聞き逃さなかったリディオノーレは同意を求める。


「……はぁ」

頭が痛い、とグレイザックはこめかみを揉む。

「これからはああやって言われることが増える。慣れるしかないぞ」

グレイザックは彼女を見つめる。


「だから、私のことはいいんです。グレイザック様を貶されたら何するか分かりません」

「何でだ。自分のことじゃないんだから放っておけばいい」

「自分のことは我慢できますが、グレイザック様のことは我慢できません!」

「断言するな。我慢しろ。もう少し感情を隠せ」

「無理です。グレイザック様に限らずですよ?サムエル様やグレーク様のことも同じように貶されたら歯向かいます」

彼女は腰に両手を当て、胸を張って言い切る。


その言葉にムナグレークやサムエルも少し目を丸くする。

グレイザックの眉も少しぴくりとした。


「私もですか?」

ムナグレークは思わず聞いてしまう。

「そうです。でも、あの方、グレーク様のお父様ですよね?文句を言って申し訳ありません」

彼女は謝った。

「………」

ムナグレークは困った顔をしている。


「グレーク様?」

彼の様子がおかしいので顔を覗く。

「……いえ。ありがとうございます」


少しの間無言ののち、ムナグレークは礼を言って微笑んだ。



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