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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
カルムクラインの生き残り
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新しい執務作業




2日目。

夜明けの鐘と共にリディオノーレは飛び起きる。


まだ眠いが、洗濯に行かないといけない。

とりあえず着替えて、洗濯物を抱えて洗濯場に向かった。

まだ時間が早いおかげで誰もいない。

とりあえずたらいと石鹸を借り、水場で洗濯する。


一通り洗い、きつく絞ると自室に帰る。

自室に干すのが無難だろうと思って、紐を壁から壁に張っている。


「よし」

とりあえず一仕事終わり、隣のサムエルの部屋に向かう。


「おはようございます」

ノックをすると身支度を終えているサムエルが扉を開けてくれた。


「私、早く起きたつもりだったんですが……、サムエル様はいつ起きたのですか」

リディオノーレは驚いて尋ねる。


「リディオノーレと同じ時間ですよ。さあ、朝食にしましょうか」

サムエルは微笑む。


「ご飯はいつもどうしているのですか」

リディオノーレは尋ねる。


「グレイザック様の専属の料理人がいますので、その方に頼んでいます」

「専属がいるのですか」


「………少々特殊な生い立ちの方ですからね、グレイザック様は」

サムエルは言葉を濁しながら微笑む。


「朝食を食べに行きましょう」

「はい!」

リディオノーレはいそいそとサムエルについていった。





「おはようございます、グレイザック様」

起床の鐘が鳴り響いた直後に執務室に訪れる。


「おはようございます!」

リディオノーレも元気良く挨拶する。


「ああ……」

彼はすでに仕事をしていた。

返事も適当だ。


「グレイザック様、朝食です」

「ここに置いといてくれ」

グレイザックは顔も上げず、命じる。


サムエルは慣れた手付きでグレイザックの机に朝食を置いていく、


「リディオノーレ、今日の仕事だ」

グレイザックは書類の束を渡す。


昨日よりは少ない……気がする。

気がするだけだが。


書類を受け取り、昨日使った机を使う。

サムエルもすでに補助に入っている。

グレイザックは手掴みで食べられるパンをかじりながらサインや印鑑をしていく。


スープは飲みやすく、マグに入っている。

効率的だ。

野菜も食べれるようにパンに野菜が挟んである。

よく考えてある。


リディオノーレは早速書類仕事を始める。


「サムエル、このふざけた申請を出す町長は誰だ」

グレイザックは顔をしかめながら尋ねる。


「こちらは……アナメール町長ですので……グリモーツですね」

サムエルは記憶を辿りながら答える。


「……あぁ、あのタヌキか」

グレイザックは吐き捨てる。

「この申請は却下だ」

グレイザックは不可の印を押し、サムエルに渡す。


「手が止まっているぞ、続けろ」

グレイザックはちらりとリディオノーレを見て、そう注意する。


「も、申し訳ありません」

彼女は謝罪し、すぐさま続きをする。

アナメール町長は一体どんな申請をしたのだろうか。


聞きたいが聞ける雰囲気でもないので無言を貫く。


「リディオノーレ、これもやってくれ」

グレイザックは書類の束を渡す。


「!!!」

量に目を見張る。

「まあ、何となく分かるだろう」

グレイザックはにやりと笑って仕事を続ける。


とりあえず彼女は集中して、最初にもらった計算書類の束をやっていく。



「……ノーレ!!!


「リディオノーレ!!」


「こら!リディオノーレ!!」


(うるさいなぁ……)

などと心中で思いながら彼女は計算書類の最後の1枚を仕上げていた。


「こら」

グレイザックは彼女の耳をつまんだ。


「いたっ!!」

リディオノーレは思わず大声を上げ、睨みつけた。


「!!!!」

相手を見た瞬間、あわあわと焦る。


「やっと気付いたようだな」

グレイザックは耳から手を離し、不機嫌な顔を近づける。


「も、申し訳ありません!ほんと、外部の音を遮断するクセがあって……」

しどろもどろになる。


「要改善だな。集中しすぎだ。どうやったら声が届くのか考える」

グレイザックは腕組みをしながら睨む。


「ごめんなさい……」

しゅん、と項垂れるリディオノーレ。


「集中できるのは凄いことですが、この感じだと見張る者がいなければあなたは寝食忘れて没頭する未来が見えます」


「う」

彼女は思い当たる節があるのか声を漏らす。

「どうやら思い当たるところがあるらしいな」

グレイザックはやれやれ、と呟くと彼女の頭をぺちんと叩いた。


「食事にするぞ。それが終われば、残りの書類を仕上げてみろ」

叩かれた頭を彼女は撫でながら、うぅと彼を見上げる。


「返事は?」

「……はい」


彼女はしおしおと食事に向かった。




食後は残りの書類に取り掛かる。

「……?」

計算書類じゃない。


だーーーっととりあえず流し読む。

考え込む。

リディオノーレがサインしてもいいような書類ではない。


領主印が必要なものもある。

でも領主印がいらないものもある。


急ぎ案件とそうでないものもある。


とりあえず、急ぎ案件の領主印が必要か不要かでまず分けてみる。

そのあとに期限に余裕がある領主印必要不要で分ける。


1枚1枚注視しながら丁寧に分ける。

自分ならこう分けて仕事するだろう、と考えてやってみた。


結構大事な書類だ。

きちんと分けなければ、それをまとめあげるグレイザックの仕事が逆に増えてしまう。


丁寧に丁寧に何回も何回も確認しながら、リディオノーレは仕分けした。



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