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61話 チェーン みんなに稽古をつける(前編) 冒険者養成所 60日目

 門を潜ると女子からチェーンを奪い、いつものたまり場へ行く一行。


 初めてたまり場に来る女子もいるので張り切っている男達。


 リックはいよいよ試合ができると意気込んでいた。



 たまり場に着くと男は一斉に素振りを初めて、それから型の稽古に精を出す、なぜかリタも同じように稽古に参加するのだった。


 そんな男子たちを女子は興味津々で眺めた。


 リックとストアはチェーンに付き添い仲間の現在の状態を説明する、チェーンは時折、足の運びかたや素振りの仕方を丁寧に教えていったのだった。


 ほんのちょっとした指導で今まで悩んでいたことが解消し喜ぶ仲間達、チェーンもうれしそうだった。


 ウォーミングアップが終わり、いよいよ試合形式の稽古が始まる。


 

 最初に登場してきたのはもちろんクリストファーだ。


 クリストファーは最初は嫌がるのだが始めるとずっと続ける性格なので剣の型の稽古もウォーターカッターの訓練も怠けず続けている、だからこそあのウォーターウェイブを出せるようになったのだ。


 剣の太刀筋も様になってきたがどれくらいチェーンに通用するかが楽しみな対戦だ。



「いつでもかかってきなさい」


「お願いします」



 そういうと上段に構えて踏み込んで打ち込むクリストファー、いつもながらの力強い打ち込みだ。



「ブン」音に驚く女子達。


「バシーン」 



 それをまともに受け止めるチェーン、怪力のクリストファーに打ち込まれてもバランスを崩すことがない、何度か同じ動作を繰り返すクリストファー、しかし動きがワンパターンなのがネックだ、チェーンは今度は攻めに転じて、連撃を繰り出す、それを受けとめるクリストファー、習った防御しながらの崩しを試すがチェーンは全然崩れない、またお互い向き合いクリストファーが踏み込んで打ち込むとかわされて、引くと同時に踏み込まれて胴を打ち込まれ1本を取られた。



「クリストファー君は習った事は出来ているようだが技と技のつなぎが出来てないよ 攻撃したら下がるのはいいが防御のことを考えてない 防御は防御ではなく攻撃したら防御 防御したら攻撃とつなげていくのが大事だ これからは意識して練習しなさい」


「わかりました ありがとうございます」


「パチパチパチ」と女子達が拍手を送り、その後に男たちも拍手した。



 次に出てきたのは子分達9人だった、もちろん全員、武器は槍だ。


 女子達もなにやらガヤガヤと騒がしい、チェーンもまさか9人が一度に出てくるとは思わなかった。



「本当に9人を相手をしないといけないのか まいったな」とチェーン


「リックとの練習はいつも多人数でやってるんです」とハリー


「わかった かかってきなさい」


「お願いします」と子分達



 子分たちは前に5人、後ろに4人の二列に組んで前進を開始した、さすがのチェーンも攻撃はできず、横に移動するのに終始した、子分達は作戦を変えて横一列に並んでからチェーンを半包囲し、最後は3人組に分かれて包囲網を作ろうとする。


 場所を限定されているのでチェーンは包囲されてしまうがうまく移動しながら同時攻撃をさせなかった。


 段々シビレを切らしてきた子分たちは守備よりも攻撃を重視して一勢突き、上下一勢突きを3組が各々繰り出すがストア張りの避ける技術が冴えるチェーンを捉えきれない。


 女子達もチェーンが避ける姿を固唾を飲んで見守っていた。


 チェーンは子分達の攻撃の後の引くタイミングが遅れるとすかさず踏み込み下を狙っていた槍を踏みつけて、そのまま飛び込んで中に入り込んでいく、すると二人もパニックってしまい次の手を出せないうちにチェーンに3人とも1本を取られてしまう。


 6人になった子分たちにチェーンの攻撃が過激になっていく、子分達の攻撃してきた槍をギリギリで避けて、なんと片手で槍を掴んだ、引き離そうと力を入れるとサッと放し、バランスが崩れるとその他の槍を剣でかわして中に飛び込むとあっという間に3人に1本を取る、残った三人は動くに動けなくなり、攻撃するタイミングを失い、チェーンに飛び込まれて全員1本を取られた。


「パチパチパチ」今までよりすごい拍手が女子達から送られる。


「いやー苦労した これなら山賊も退散するよ しかし一度崩されると立て直せないのはいけないな 崩された時の練習も取り入れると良いだろう 本来は敵を倒す目的より自分達の身を守る為だと思うので守備に徹して 敵を駆逐するのは冒険者に任せるように」


「ありがとうございました」と子分一同



 子分達も精一杯戦った満足感で笑顔がこぼれていた。


 傷ついた子分達を見て、リリーが言った。


「あの 私はヒールが使えるので手当をしたいのですが」


「痛がっている子がいたら治してくれるとうれしい」とチェーン


 子分達は一斉にリリーの側に群がった。


「さすが リリー 天使と呼ばれるのもわかるね」とリック


 そうすると、ペギーやカミラやニーナも声を出して。


「私達もできます」と名乗りを上げた。


「天使が4人もここにいたんだね」とリック。



 女子達は奪うようにヒールを掛けるのだった。


 そして子分達はつかの間のスキンシップを楽しんだのだった。




 続いて出てきたのは長身イケメンのアレクシスだ、もちろん二刀流だ。


 アレクシスは我流だが、リックやストアには勝てないが負けるたびに考えて負けないように工夫を凝らしてきた、それ以外の相手にはパワーとスピードで圧倒できている。


 どこまで通じるかアレクシスは燃えていた。



「よろしくお願いします」


「かかってきなさい」



 アレクシスに守るいう言葉はない、7・8割の力で休まずチェーンを襲う二刀流の連撃、攻撃するイトマを与えないアレクシス、チェーンも防御に精一杯に見える。


 女子達は9人の見事な連携にも驚いたがアレクシスの終わることない連撃にも驚きを隠せない。


 7.8割に力をセーブしているのはもちろん隙を作らないためだ、しかし時々、全力の一撃を入れてバランスを崩そうと企んでいた。


 チェーンは剣を習わずに隙を与えず攻撃をしてくるアレクシスに感心していた,剣術をリックやストアに習わない意地がこの攻撃方法を考え付いたのだろうと感じていた。


 頃合いはヨシとアレクシスは全力の一撃をチェーンに叩き込むが微動だにしないチェーン、アレクシスは焦り攻撃が雑になってくる。


 チェーンも頃合いはヨシと反撃に打って出る、反撃と言ってもアレクシスの剣を力の方向に合わせてアレクシスの剣に叩きこみ始めた、右方向には右に左には左でアレクシスの攻撃のバランスを崩しにかかったのだ。


 必死でバランスの崩れを食い止めようとするアレクシス、しかし連撃のリズムが狂い始める、そして無理に連撃を繰り出そうとして大振りになり、隙を作ってしまうとチェーンが素早く飛び込んで来て胴切りが決まってしまった。



「パチパチパチパチ」女子達の拍手が止まらない。


「素人にしては見事な二刀流だ しかしパワーに対応されるとやはり素人の遊びでしかない アレクシス君はやはり一から剣術を習うべきだよ」


「オ オレ 私も習いたかったのですが何度頼んでも父が許してくれなかったんです」


「調子に乗って強い魔物と戦って死んでしまうのを恐れたんじゃないのかな」



 黙り込むアレクシス。



「君もココを出れば立派な大人だ どうするべきかは君が決めたらいい」 


「考えてみます ありがとうございました」


 周りからは温かい拍手に包まれるのであった。

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