事件発生
学園祭当日。三毛根高校の学園祭は、二日に渡って行われる。朝早くからにゃー子たちは、最終準備に追われていた。
校門の前では、この日ばかりは入場が許可されるので、保護者をはじめ近所などの一般客も今か今かと開場を待ちわびていた。
にゃー子は、店の飾り付けにもう一工夫施そうと看板制作に取りかかっていた。
にゃー子は、クラスの皆が見守るなか、毛筆で木目調の看板にすらすらと流れるように文字を紡いでいく。
そのたびに、皆から感嘆と称賛の雄叫びがあがった。
出来上がると、拍手がおこり、男子生徒たちが落ちてこないようしっかりと入り口の上の方に固定した。
そして、男子は、執事風の、女子は、メイド風のコスチュームに着替えるため、各々別々の更衣室へ向かっていった。
先に着替えを済ましてきた愛梨沙とメイとマユが戻ってきて、店の入り口の看板に気づいた。
「あれ、にゃー子が書いたの?」
「すごいですぅ」
「いあー、達筆だわー」
各々、口々に感想を述べた。
にゃー子は、得意げに鼻先を掻いた。
メイが不意に首を傾げた。
「旨さ爆発!!って、お読みすればいいんですよね…」
「私もなんか違和感感じるのよね」
愛梨沙も空中に何度か文字を書きながら呟いた。
「そう?気のせいじゃない」
マユは別にどうということもなく、看板を見上げている。
「あ、にゃー子さん。わかりました。爆の字ですぅ。爆の火へんが足りません」
「ホント。にゃー子、火が足りないわ」
愛梨沙とマユもメイに言われて気づいた。
旨さ暴発。
おちおち、食べていられない危うさを含んだ魅惑のクレープ屋の誕生に気づいた瞬間である。
「にゃー、おろしてー頼むからおろしてー」
「にゃー子、ムリよ。固く縛ってあるもの」
「時間無いし、気づきゃしないわよ、あきらめな、にゃー子」
愛梨沙とマユはにゃー子の肩を軽く叩いた。
そこに、薫子が職員室から様子を見にクラスにやって来た。
「あら、看板作ったのね、雰囲気がでていいわね。橘が書いたの?」
「はい。あ、でも…」
「旨さ暴発。いいんじゃない。斬新で…。爆発の一歩先にいった感じね」
他のクラスメートも着替えを終え、続々戻ってきた。
「じゃ、ホームルーム始めるわよ、みんな、教室に入って」
薫子の促しにみんな教室に入
ってしまった。
にゃー子は、一人遅れてぶつぶつ泣き言を言いながら教室の中へ入っていった。
あっという間に一日が過ぎた。忙しさのため、にゃー子も看板の事は忘れてしまった。
一日目の後片付けを終え、帰り支度を始めたころ、マユが生徒会から途中経過の情報を極秘に仕入れてきた。
「みんなー、2-Aと2-Dでトップ争いしてるって。もう一息明日もがんばろーぜい」
みんな一斉にどよめきたった。にゃー子も自然に笑顔がこぼれ、メイは手をたたいて喜んだ。
クラスのみんなが下校するころには、日もすっかり傾き、うす暗闇と静寂だけがそこに残された。
ーーー
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次の朝、にゃー子と愛梨沙は早めに学校に向かった。気合の入ったクラスメートたちも早めに登校していて、準備に大忙しであった。
その時、調理場にいた誰かが悲鳴を上げた。
その声で、にゃー子たちを含めその場にいた者たちが調理場に何事が起ったのかと駆けつけた。
「あ、あれー」
悲鳴を上げた女生徒がしりもちをつき指差す方向には、小麦粉の入った大きな袋が一つあった。
男子生徒たちが恐る恐る中を見るなり声を上げた。
「こりゃ、ひでえな」
にゃー子が覗いてみると得体のしれない虫がたくさんワサワサと湧き出していたのである。
一緒に覗き見た愛梨沙は、体をこわばらせ、キャーと言って教室の外まで走り出してしまった。
「どうしよう、これ。もう使えないぜ」
「あれほどしっかり管理しとけって言ったのに」
「一晩でこんなに虫湧くか?ふつう」
皆口々に感想を漏らした。にゃー子は、何かを察知して廊下に出た。




