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2/8

サッカーは試合終了のホイッスルが鳴るまで分からない

あくまで

フィクションです

そこんとこ夜露死苦

山形県


最上川のボートに乗り

日頃の募金活動とユーチューバー活動に多忙に追われる日常を横目に

船底から感じられる川の流れや、水面を渡る涼やかな風を体感

初夏の日差しに照らされ鮮やかに輝く新緑

見渡す限りに広がった新緑が日頃の疲れを忘れさせてくれた


川に揺られながら、風を感じるひととき


自分がいかにちっぽけな存在だと

実感出来ることが

嬉しくもあり

寂しくもある


そんな中、先日の山形市内にある

県の運動公園で募金活動をしている時のことを思い出した


募金活動の休憩中


小学生のサッカークラブチーム同士が試合をしていた


なんと


13対9


?

野球の試合か


試合終了でちょうど、落ち着いてたので、両サッカークラブチームに募金の協力をお願いした


募金が終わると


負けたチームの監督が寄ってきた


なんと、高校時代のサッカー部の後輩だった


実は、私達は高校時代

沖縄の那覇西高という強豪校に在籍し

共に

全国大会に出場し

同じ釜の飯を食べた旧知の友だ


後輩はJ3のプロで活躍していたが

腰を痛め、引退し

近くの町工場で働きながら

クラブチームを見てるという


その夜、二人で飲むことになり

サッカー談義と昔話に華を咲かせながら、ひょんな話になった


なんと、山形にいる間、時間がある時でいいから

アシスタントコーチに入れないかの打診であった


私は、後輩と違って

中学までは県選抜に選ばれたりしたが

高校ではあまり伸びず

卒業後は軽くフットサルしかやってなかった

そのフットサルですら大分ご無沙汰と伝えたが


高校時代

後輩の面倒見が良く

明るく

教えるのが上手かったし

有名ユーチューバーが指導すると子供たちもモチベーションが上がるから是非と

ゴリ押しされた


正直、試合を見た感想は


残念につきる


元来、私は

勝算のない戦いに行かない主義だが


元カノがどはまりしてた博打に

たまには乗ってみるのも

一興かと


山形のユーチューブ活動と募金活動を

サッカーのクラブチームが出来る範囲で協力してくれるのを条件に

アシスタントコーチを引き受けた


ボートから降り


決心した

アシスタントコーチやるからには

県の強豪校にも負けないチームを作ってやると


募金活動の合間のクラブチームの帯同が始まった


まず、自分自身がサッカーから離れていたため

勘を取り戻すため

クラブチームのコーチ(後輩)が参加している、社会人チームの練習に参加させてもらった


サッカーやってた人なら分かると思うが

長年サッカーから離れてからプレイすると

思い通りのボールコントロールが出来なかったり

本来のポジションの動きや連携に戸惑う上

何より体力のなさがキツかった


自分はこんなに下手になっていたのかと


M1予選1回戦敗退並みの屈辱と絶望を味わった

(詳しくは本編に記載)


その日から

朝夕の走り込みと、自主練を行うようにした

小学生に教える前に自分が過去のレベル(せめて高校)ぐらいにならなければ

何を教えても

子供たちは聞く耳持たん


どんなにキツイ自主練も

あのM1目指した

お笑いの大峯千日回峰行

に比べれば

浜辺美波よりも大分かわいいってもんだ


ちなみに漫才の修行で一番キツかったのは

どんな状況でも

ぶれずに漫才をするために

持てるネタ全て通しながら

フルマラソンする

という

地獄のトレーニングだ


やり切った時には

日をまたいでた


開始3キロで逃げ出した相方の首根っこ捕まえて

2mのロープで互いに逃げられないようにし

半強制的に行った


正にお笑いデスマーチ

(死の行軍)

M1決勝という

クリスマスボールを目指した

若気の至り


なんとも恐ろしい修行である

てか、それだけでギネス級じゃね


それに勝るとも劣らんトレーニングをした


そこまでして

自主練した理由

学生のコーチ経験者なら分かるだろう

ガキは下手くそに用はないっちゅーことや


求められるのは先ず

巧さ

プレイの上手さに勝るほどの説得力はなし


知識もコーチングも指導力も

全部後回し


まずは、自分が全盛期になるほどの鍛錬が必要なんじゃ

クラブチームにも顔を出しながら

2週間で

高校の現役以上のパフォーマンスと体力を手に入れた


顔を出してる社会人チームから正式なオファーが来たが

募金活動で全国飛び回る流浪人なので丁重にお断りした


拙者は流浪人

時が来たら

また、流れるでござるよ


てか

ワイこんな短期間でこんな上手くなれたんなら

プロなれたんちゃう

という悲しい被害妄想は置いといて


小学生クラブチームの指導が始まった


このチームを見て

まず思ったことは

ボールが足につかないことだ

ドリブルがぎこちない

パスが乱れる

シュートが的外れ

ボールキープもズサン

味方の連携も全部だめ

ゴール前なんて自動ドアみたいにいつでも

ボールが入れる状態


初めて、見た試合なんて

キーパーを奇跡的に抜いて

無人のゴールのシュートを外すなんて

逆に奇跡


後輩と話し合い

先ずはトラップの練習を徹底的にさせた


君たちにサッカーの本質を教えよう


私とコーチで高速でボールパスとトラップを見せた


案の定、子供たちは


そんな、速くパス、トラップ出来ねーよ

の不平不満の嵐


出来る

私は大声で断言した


サッカーの本質は

止める

蹴る

そして、動く

少年

パスは速く強くだ!


パスは速く強くが基本

なぜなら

受け手がフリーでいられる時間は短いからだ

ボールが遅いと

受け手に届くまでにDFに詰め寄られてしまう


それを防ぐには

ボールを圧倒的に速く動かすほかない

数秒のちがいが展開を大きく変える


サッカーはどんどん

時間とスペースを削りとる方向に向かっている


ダイレクトパスや

スペースへのパスなどは

チャレンジするパス

失敗はつきものだが


この足下へのパスは

成功率100%を目指さねばならん


ひゃ、100%ー(子供たち)

どひゃ~


基礎なのだ

用意のできた者同士で

目を合わせて出すんだ


これが出来なければ技術が足らないということになる


華麗なフェイントや芸術的なスルーパス以前に

ショートパスのレベルが低ければ

ゲームをコントロールすることは

困難なのだ


子供たちの目が変わった


アシスタントコーチは

このチームでどこを目指してるんですか?


このクラブのキャプテンが尋ねた


もちろん

世界だ


その日から、空気が変わった

ドリブルやシュート練ももちろん

行ったが


その数倍をパス、トラップの練習

ロンド(輪舞曲)

別名、鳥かごと言われる練習を徹底した


地味でつまらない練習ほどキツイものはない

あまりのキツさに保護者からもクレームが絶えなくなり

辞める子さえ出るほどだった


キツイ練習から3週間が過ぎた

部員の三分の一が辞めたり

練習をサボるようになったが

残って、頑張った選手たちはホントに上手くなった


1人を除いては


その子は

フォワード志望だった


身体が小さく

ボール扱いも下手

身体能力も高くなく


正直、長所は一つも見当たらず

サッカー自体向いてないのではないかと思うほどだった

同世代のライバルにゴール前で何度も吹っ飛ばされる彼を見て


君に、フォワードは無理だ

後方に下がる提案をした


小学生にとっては残酷な言葉だ


その子は顔色ひとつ変えず

頷いた


悔しくないのか?


その日、以降

彼はモクモクと、アウトサイドフリーキックの練習をはじめた

キツイ練習の後にも関わらず

暗くなっても

練習を止めない彼を見て


私は勘違いに気づいた


彼は何も持っていない選手ではなかった


柔らかくキレイなシュートフォームと

誰にも負けない内に秘めた闘志を持っていた


確かに

優れたフリーキッカーには才能も必要だろう


だが

真のフリーキッカーは飽くなき反復練習によってのみ育つ

ボールを蹴った数

雨の日、風の日、暑い日、寒い日、気圧の変化に対応出来るキック

ディフェンスフォーメーションに応じた切り替え

その他もろもろ


彼は、フォワードを辞めてから

1日100本のフリーキックの練習を欠かしたことはない

彼は天才じゃない


しかし

最強のフリーキッカーだ


将棋でいうと

最弱の歩の駒だった彼が

成り金に変化するのをキッカケに


チームも変わり始めた


初めて県の運動公園で試合を見た相手と練習試合することになった


試合前のミーティング


アシスタントコーチから一言と頼まれた


お前ら、練習はきつかったか?


全員が頷いた


今のチームが私が指導したチーム史上、一番キツイ練習だったはずだと告げた(初指導だから当たり前)


だが、それに耐えたお前たちはホントに強い


厳しい練習

培った技術

固まった絆

湧いてくる自身


足りないピースは一つだけ


サッカーじゃ

手は使えないからな


勝利を掴みにグランドに行くぞ


おぅ(選手たち)


最後に一言


ドンウォーリー

ボールイズベストフレンド


試合が始まった


久しぶりの試合ということもあり

最初の10分は皆、動きが固かったが


ボール回しをすることで、固さが取れ

先制点奪取に成功した


点が取れたことでチームに勢いがつき


10対0の大勝利を収めた


そのうちの3点は元フォワード(今はサイドバック)の彼が関わった

2点はフリーキックで直接決め

1点はフリーキックからアシストがついた


後輩のコーチが初勝利だと

狂喜乱舞していた


いや、勝つの初めてなんかーい


我がチームの快進撃は続いた


弱いチームには安定して

勝てるようになったが

中堅クラスだと、頑張っても引き分けが精一杯だった


新しい策がいる


不敗の魔術師

ヤン・ウェンリーよ


何か、ミラクルをくれ


ぽく、ぽく、ぽく、ち~ん

閃いた


答は、オランダにあり


「トータルフットボール」

全員が流動的にポジションチェンジを行う戦術

これをさらに改良する


何かヒントは


グー


お腹空いた

スーパー行こう


スーパーって

なんか

買いすぎるんだよな

何でかな


実は、スーパーというのは、左回りに作られる構造が多い

人間というものは心臓が左にあるように線対称な生物ではない

右利きの人が多いのも

心臓が右手だと守りやすいからだともいわれてる


人間は心臓を中心にして左回りに動くことを好む傾向がある


ひったくりの犯人が見知らぬ土地で犯行を行うと

8割が突き当りを左に逃げるらしい


トータルフットボールにもこの応用が出来ないだろうか


目まぐるしく、オフェンス、ディフェンスを交互に行う中で

パス回しを起点に

オフェンスは右サイドから四人ずつしかけ

最初にオフェンスに参加した四人は

左サイドから後方に戻る


ディフェンスに戻る際にも、積極的にオフェンスのパスに絡めさせ

ディフェンスに向かうという意識を

敵から刈り取る


そうすることで、敵はオフェンスもディフェンスもフィールドの全体で我がチームのプレッシャーにさらされることになる


イケる

小学生に難しい戦術だが

これを極めたら全国が見える


よし、この戦術を


「スーパー左回りの法則」

と名付けよう


・・・

ダサすぎる

却下


まさに

トータルフットボールの夜明け


ネオトータルフットボールの誕生だ


この練習を始めて

気付いたことは


流動的に攻守の切り替えが行われるため


ディフェンスラインが安定しないという

欠点が浮き彫りになった


練習試合でもそこをつかれ

相手に大量得点されることもあった


その、欠点を克服すべく

キャプテンにディフェンスのスペシャリストになってもらい、攻撃参加は控え

ディフェンスラインの統率役にした


キャプテンとして、周りに気配りする能力が適したのか

優秀なDFとしてメキメキ頭角を表し

キャプテン無しでは

ネオトータルフットボール

は語れないくらいの完成度となった


JFA U-12サッカー選手権大会 山形予選

が開幕した


1回戦

アップの前からガチガチな選手たち

このままじゃあかん


試合開始前


戦う前から冷静さを欠いてるやつは

勝負の前にすでに負けている

今のお前らがそうだ


アシスタントコーチ、なんですかその言葉?

キャプテンが尋ねた


アルコバレーノという世界的に有名な方の

有難い言葉だ

グランドに立つ前から試合は始まっている


グランドの中に持ちこめるのは

練習で培った自信だけ

今すぐ、緊張のコートを脱ぎ捨てろ


ハイッ(選手)


返事が小さい

大声はシャウト効果を持つ


戸沢村の幻想の森の中でも聞こえる声を出せっ


ハーイっ(選手)


気合が入ったのか

1回戦から中堅クラスのチームと対戦だったにも関わらず

5対1で

下馬評を覆す形となった


試合後

アルコバレーノってどこの国の人ですか?

と聞かれた


漫画の人だ


なーんだ、漫画かよ


選手達が馬鹿にする中

勝てたからいいじゃん

と心に留めた


今や、かつての万年1回戦負けのチームとは思えない快進撃が続いた

続く、2回戦、3回戦も危なげなく勝ち進んだが


4回戦、前回大会の準優勝チームと対戦

下馬評は圧倒的に不利だった


にも関わらず

両者譲らずの攻防

両チーム無得点のまま

後半ロスタイムで

フリーキックを獲得


キッカーはもちろん

あの男


数カ月前

フォワード降板

を告げられた少年が

ファール位置に就いた



あの日も、こんな雨降りだった


アシスタントコーチには落ち込んでる

感じがしないと言われたが

そんなことなかった


自分の全てを右足にかけることにした


血がでようが、雨が降ろうが、夜になろうが

蹴るしかなかった


自分の存在価値を証明したかった


選手は無理だ

マネージャーの道もあると言われた


親からも、試合に出れないなら

塾とかに変えたらと

家族会議も行われた


1年間だけ執行猶予にこぎつけた

1年で結果を出す

1年でダメなら勉強に集中する

と親に血判を渡し

背水の陣に身を置いた


フリーキック練習は

自分に合ってる気がした


練習から2週間

初めて、チーム練習でフリーキックを決めた

初めて、コーチとアシスタントコーチからお褒めの言葉を頂いた


キーパーには

お前に決められたって

もう、オレのキーパー人生終わりやん

と煽られた


知るか

これから、右足を磨き

何百本と決めてやる


その日から

アシスタントコーチも練習後に

フリーキックの練習に付き合ってくれた


募金活動とユーチューバー活動が忙しいにも関わらず、合間を縫って付き合ってくれた


そこから、劇的に技術の向上を感じた


自分一人の自主練と

マンツーマンのコーチで

こうも変わるものなのか


いや、アシスタントコーチのアドバイスが的を得ていた

そして相性の良さを感じた


練習でフリーキックの精度が増す度に

居残り練習に付き合う選手も増えた


アシスタントコーチの期待に

いや、皆の期待に応えたい

自分の可能性を証明したい


その想いがより一層

練習に熱が帯びた


コーチやアシスタントコーチ、みんながいなかったら


この場に立つことが出来なかった


決めるときに決めるぜ


後半ロスタイム

時間もないこの状況

延長戦になれば

ベンチ層の薄さで敗色濃厚


フリーキックのゴールの確率は

約5〜10%

チームの命運は彼に託された


彼の右足から放たれた

ボールは

美しい弧を描き

ゴールマウスの右端ぎりぎりに

吸い込まれた

後、わずか1mmでもズレたら入ってなかったであろう

奇跡のゴール


この瞬間、彼のフリーキックは

三苫の1mmを超えた

※あくまで小学生のお話です


会場からどよめきが起き

試合終了のホイッスルが鳴り

激闘に幕が閉じた


その翌日の準決勝

相手は

前回のベスト8だったが

前日の試合に全てを出し尽くした

我がチームは

5対0と

嘘のようにボロ負けした


山形県の募金活動も無事成功を収め

次の街に向かい

旅立とうとして

駅に向かった


駅には、サッカークラブの子供たち、父兄、スタッフ、コーチが見送りに来てくれた


アシスタントコーチは前回の大会で

解消したが

いつか、大きな舞台で再会しようと

子供たちと約束した


別れに、色紙と十円玉で作られたメダルを頂いた


後輩には

募金活動が落ち着いたら

いつか必ず、私もチームを作る


その時は全国大会で会おうと約束して

硬い握手を結んだ


しかし、その夢は叶うことはなかった

(本編参照)


ありがとう

FC山形サクランボファイターズ


我が、FC山形サクランボファイターズは

永久に不滅である


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