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ギャルゲーのモブに転生したけどまだ発売されてないR-18バージョンだった  作者: 猫野 ジム


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第25話 着けてくれてた

 目の前では上目づかいの朝陽奈さんが俺の顔を覗き込んでいる。そして「私にみとれてたのかな?」と俺に問う。


 それからすぐに彼女は「冗談だよー」と、はにかむ。それが本気なのかは分からない。

 でも俺は正直に答えよう。言葉にしないと伝わらないし、それに見とれてたのは間違いないから。


「うん、見とれてた。可愛いなと思って」


「えっ……と、ありがとう、嬉しいな……!」


 朝陽奈さんはそう言うと、まるで困っているかのように笑う。それが照れ笑いであればいいのになと俺は願った。


「あの、階堂くん? どうしたの? そんなに見つめられると恥ずかしいよ……」


 バッチリと目が合っている。そんなの俺だって恥ずかしいさ。でも気を抜いてはいけない。

 なぜなら少しでも目線を落としたら、朝陽奈さんの胸を見てしまうから。


 ただでさえ目を見られてるのに、そんなことしたら絶対に気づかれる。そうなるとさっきの俺のセリフが途端に嘘っぽくなるような気がするんだ。


 それにしても改めて意識してみると朝陽奈さんの目、本当に綺麗だな。二重まぶたに長めのまつ毛、うるっとした瞳。こうやってじっくりと目を見る機会は意外と無いのかもしれない。


「そろそろ行こうか」


「う、うん。そうだね」


 人通りが多い道を並んで歩く。時にはお互いの体が軽くぶつかりそうになりながら。

 周りからは口数が少ないと言われてきた俺だけど、今は驚くほどに言葉がスッと出てくる。


 昼食にはカフェを選んだ。目星をつけてはいたが、朝陽奈さんと話しながら決めようと思っていたから。


 前世とは違って今の俺は高校生なので、あまり予算はかけられない。お酒も飲めない。

 なので社会人と比べると選択肢が限られてくる。大きな違いはそこじゃないだろうか。


 もちろん『どこに行くか』も大事だけど、やっぱりデートは『誰と行くか』が一番だろう。今日という日の終わりに、朝陽奈さんが俺と過ごしてよかったと思ってもらえたらいいな。


 対面してテーブルに座り注文を待つ間も雑談をしていたが、話が少し途切れたタイミングで朝陽奈さんがスマホの操作を始めた。


(もしかして退屈させてしまってる?)


 二人きりなのにスマホを操作されると、想像以上にメンタルにダメージがあるんだな……。


「階堂くん、ちょっとこれ見てくれる?」


 朝陽奈さんはそう言ってスマホを俺に近づける。そこに映し出されているのは、もうお馴染みとなったR-18小説の販売画面。


「私ね、ついにこれ買っちゃった!」


 相変わらず表紙イラストの女の子の露出度は高い。俺はこれにどう返せばいいのだろうか。


「そうか、よかったね」


 出てきたのは結局なんの面白味もない言葉だったが、それでも「うん!」と嬉しそうにしてくれている。


 ふとスマホから目を離すと、思った以上に朝陽奈さんが近かった。数十センチといったところだろうか。さすがに身を乗り出しすぎでは?


 しかもまた胸の谷間が見えているが、今度はそれに加えて下着がチラ見えしている。しかも前に俺が選んだものだということが分かるほどに。


 そういえば以前に、朝陽奈さんが俺が選んだものをはいてるって言ってたことを思い出した。まさかマジだったとは。


 もしかして意識して着けて来てくれたのだろうか? 正直に言うと嬉しい。しかしまたもや目のやり場に困る。

 エロ小説の画面を見るか、朝陽奈さんの目を見るか、胸元を見るか、不自然に全然違う方向を見るか。……そんなの一択じゃねえか。


「階堂くん、そんなに見つめられると私……」


「えっと、とりあえず座り直したらどうかな?」


「う、うん」


 それからの朝陽奈さんは、店を出るまでなんだか俺の様子を時々チラッとうかがっているように思えた。


 それからも一緒に過ごしたが、朝陽奈さんはよく靴紐を気にして直したり、暑いからと言ってブラウスの胸元をつかんでパタパタさせたり、そもそも距離が近かったり、終始目のやり場に困った。


 そして夕方、暗くなる前に解散ということになった。


「今日は来てくれてありがとう」


「ううん、私こそ。階堂くんと一度お出かけしてみたいなって思ってたんだ」


「それは俺もだよ。また誘っていい?」


「うん、もちろん!」


 こうして最高の一日が終わった。俺はベッドの中で今日という日を振り返りながら、やっぱり朝陽奈さんが好きなんだということを確信した。


(俺が選んだ下着、着けてくれてたな)



【同日の夜・朝陽奈 陽香の自宅にて】


 自室へ帰って来た陽香(はるか)は、姉である詩恩(しおん)の帰りを待っていた。


 やがてドアの外から陽香に向けた「ただいま」という声が聞こえると、隣の部屋のドアをノックする。「どうぞー」という声がしたので入り、真っ先に詩恩に抱きついた。


「陽香いきなりどうしたの!?」


「お姉ちゃ〜ん! 階堂くんが私の胸を全然見てくれないの……」


「私が言ったことなんだけど改めてセリフだけ聞くとすごいこと言ってるわね……。アピールできなかったってことかしら?」


「頑張って下着が見えやすいようにしてみたんだけど、階堂くん私の目しか見てくれないの。私って魅力がないのかな……」


 そんな弱々しい声を聞いた詩恩は少しだけ何かを考えている様子だったが、陽香の頭を優しく撫でた。


「フフッ、そういうことね。階堂君、なんだか可愛いわね。大丈夫よ、それは陽香に魅力がないってことじゃないからね。きっと階堂君も陽香に嫌われたくないんじゃないかな」


「そう……なのかな?」


「今日一日、階堂君と過ごして陽香はどう思った? 怖いと感じた?」


「ううん、全然怖くなかった。楽しかったよ」


「それならよかった。こうやって少しずつ相手のことを知っていくのよ。そしてそうするうちにやっぱり好きだなって気持ちが大きくなったら、その気持ちを大切にして、振り向いてもらえるよう頑張るの」


「うん、私、頑張るね!」


「お姉ちゃんはいつでも味方だからね。……ところで階堂君の(へき)は何か見つけられた?」


「癖かどうかは分かんないけど、お姉ちゃんが買ってくれた本の話をしたらすごく真剣に聞いてくれたよ。それに私がお願いしたらいろいろ選んでくれたり。きっと階堂くんもえっちな本が好きなんだね」


「陽香、とりあえずそれをお姉ちゃんにも教えてくれるかしら。それに癖は身体的なものだけじゃないからね」

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