第24話 見えてるのか見せてるのか
陽香のスマホに届いたのは階堂からのメッセージ。今まさに陽香も階堂にメッセージを送るつもりだったため、その驚きに拍車がかかっていた。
そしてさっきまで自身も居た、姉の詩恩の部屋へとノックをせずに入る。
その様子を見た詩恩は慌ててベッドから身を起こした。
「いきなりどうしたの陽香!?」
「あっ、ごめんね。つい慌てちゃって……。それよりもっ、階堂くんからデートに誘われちゃった」
「すごいじゃない! さっき二人で話したばかりなのに」
「そうなの、だから私びっくりしちゃって。それでお姉ちゃんに教えなきゃって思ったの」
「ありがとうね。階堂君からお誘いがあったってことは気になってる証拠よ。頑張らないとね」
「うん。私、頑張って階堂くんにアピールするね」
「陽香ならきっと大丈夫。だってお姉ちゃんは陽香のことを今までずっと見てきてるんだもの。きっと階堂君にもその魅力が伝わるはずよ。もちろん見た目だけじゃなくてね」
「お姉ちゃん……!」
そんな言葉を交わし、陽香は詩恩に抱きついた。詩恩はそんな陽香の頭を優しく撫でる。それは姉妹の絆ともいえる光景。
だからこの少し前に二人が交わした、「下着をチラ見せする」という会話も冗談などではなく、姉と妹、きっと二人の純粋な想いが込められているに違いないのだ。
【同時刻・階堂視点】
(朝陽奈さんを遊びに誘ってしまった……)
いやいや、「しまった……」じゃないだろ、俺。もう六月だぞ。朝陽奈さんと恋人同士になりたいならさすがに動き出さないと。
おそらく朝陽奈さんは今フリーだろう。だからまだ江並にも可能性があることになるわけで。もしそうなってからだとNTRする奴になってしまう。
前世では高校を卒業してから一年も経っていなかったが、一応俺には社会人の経験がある。そういえば同期の女の子と一度だけ、俺から声をかけて仕事終わりに二人で食事に行ったっけ。
結果は惨敗だったけど、経験値になったことは間違いない。失恋もムダではないと俺は考えている。
そして約束の日がやってきた。最初からいきなり休日にというのは早いかとも思ったが、今までのコミュニケーションの積み重ねから、きっと大丈夫だろうと勇気を出した。とはいえ返信が来るまでは落ち着かなかったけど。
待ち合わせは駅前広場。別に忠犬の銅像があるわけじゃないが、代わりによく分からんオブジェがあるので、待ち合わせスポットとして利用されることが多い。
天気は快晴。こんな日に推しヒロインと過ごせるだなんて。
約束の時間は正午。到着して数分後、道行く人々の中に一際輝くオーラをまとう人物が視界に入った。少なくとも俺にはそう見えた。
「階堂くん、ごめん、遅れちゃった」
「いやいや、全然遅刻じゃないよ。約束の10分前だから」
朝陽奈さんは少し息を切らしている。遅刻するかもしれないと思って、もしかして走って来てくれたのだろうか?
朝陽奈さんの私服姿を見るのはやっぱり新鮮だ。ゲームでも見たことはあるが、ワンピースや丈が長めなスカートが多く、全体的に肌の露出が少なかったと記憶している。
ところが今はどうだろう。白いブラウスにピンクのスカートだ。それだけだと普通に思えるがブラウスは両肩の部分だけ完全に露出しており、かえってそれが学校では見られない特別感を演出している。
そして少し見ただけでも白くて綺麗な肌であることが分かる。
そして俺が意識してなくてもどうしても、やはり朝陽奈さんの胸が大きいことを再認識した。
さらに胸元がひらいており、もう少しで谷間が見えそうなほど。もし朝陽奈さんが屈んだりしたら、絶対に目のやり場に困る。
それになんだかボタンが苦しそうにしているように思えてくる。もしかするとボタンが弾け飛ぶイベントのフラグだろうか?
現実にはそんなこと起こらないだろうが、変なところでゲームの強制力みたいなのが作用するかもしれない。正直それはちょっと見てみたいかも。
スカートはひざが見え隠れするくらいの長さで、そこは制服とあまり変わらない印象だが、違うのはその素材。ふわっとしてて薄そう。
朝陽奈さんがその場でくるっと一回転すれば、美しいだろうなとすら思わせる。これもまたふとした拍子に『見えそう』だ。……まぁ俺の語彙力なんてこんなものです。
とにかくいつもとは違う朝陽奈さんの姿に胸が高鳴った。推しとデートできるだけで夢のような話なんだ。しかも二次元じゃなく三次元。確かにここに存在している。
「——くん? 階堂くん? どうしたの?」
俺を呼ぶ声がする。それはいつも聞いている、どこか安心できる声。
「あ、ごめん。ちょっと考えごとしてた。俺、休みの日に朝陽奈さんと一緒にいるんだなぁって思って」
「それってもしかして私に見とれてたってことかなー?」
気がつけば朝陽奈さんが目の前に来ていた。それは本当に目の前で、俺が少しでも足を前に出すとその胸に当たってしまいそうなほど。なのでこの場から動くわけにはいかない。
「なんてねっ。私ってば自意識過剰だね。冗談だよー」
上目づかいで彼女がはにかむ。そんな姿に俺の胸はまた高鳴った。
そして目線を少し下に向けると、朝陽奈さんの胸の谷間がしっかりと見えていることに気がついた。果たしてそれは見えてるのか見せてるのか、俺にはまだ判断ができなかった。




