第13話 ダメになっていく過程を想像すると……?
ここにきて朝陽奈さんと文月さん、両ヒロインの共通点が発覚した。それは二人とも『想像するとつい手が伸びちゃう』いうこと。
ただ、同じようで実は違う。朝陽奈さんは好きな人への純粋な想いだが、文月さんは支配欲……?
「想像するとって、どんなことを?」
聞いてしまった。人は時として好奇心には勝てない。というか文月さんに対しては知っておいたほうがいいと、俺の第六感が警鐘を鳴らしている。
「そうですね、例えば私が男の人が喜ぶことをしたとしましょう。もしそれがその人の好みにバッチリはまった場合、きっとおかわりがほしくなるはずです。リピーターということですね」
男が喜ぶことってプレゼントをあげるとか、そういう微笑ましいことを指してる可能性はまだある……よな?
「だから私はそれに応えて同じことをしてあげるわけです。そしてどんどん沼にはまっていきますよね? そうやって私がいないとダメになっていく過程を想像すると……? 階堂さんは自分に置き換えて考えてみてください。ほら、手が伸びちゃいそうになりませんか?」
「ならないね」
「階堂さん、不健全ですよ?」
「どこがだよ」
「まぁそれはまた別の機会にねっとり問い詰めるとして、気になるものを選んでください。直感で大丈夫なので。早くしないと昼休みが終わってしまいます」
「読んでもないのに分かるわけないじゃないか」
「タイトルと表紙で決めるんですよ。まさに直感です」
「試し読みとかは?」
「今ここでしてみます? 一緒に」
「……いや、それはいい」
なんだか俺の癖を披露するみたいで実に気が進まないが、このままでは話も進まない。なので仕方なく適当に指さすことにした。
「だったらこれが——」
そう言いかけてとっさにストップをかけた。俺が選ぼうとした本の表紙には、銀髪ショートボブの女の子が制服姿で描かれている。それはまるで文月さんのようだった。
(こんなの選んだら絶対イジられる!)
そう考えた結果、金髪ギャルが不自然に制服を着崩して、下着や肌を露出しているイラストの表紙のものを選んだ。
「ほうほう、これですね? 金髪ギャル達が毎日順番に俺の家に来てエッ——」
文月さんがそこまでいったところで、俺はとっさに文月さんの口を手で覆うようにして塞いだ。
「タイトルを読み上げようとするんじゃない!」
まさか本当にこんなことする場面があるなんて。
「ここは学校で少ないとはいえ周りに人もいるんだから、ちょっとは自重しようか」
「んっ……!」
そう言うと文月さんはコクコクと頷いたので、俺は手を離した。
「階堂さん、いいですねぇ……! 不覚にもゾクゾクしてしまいましたよ……! やはり階堂さんに頼んで正解でした。フフッ、とりあえずこれですね。お姉ちゃんに頼んで買ってもらいますね」
「俺の名前は伏せてくれよ」
「えぇー、なんでですかぁー? お姉ちゃん、きっと階堂さんみたいな人を気に入ると思いますよ」
「俺みたいってどんなのだろうか」
「んー、従順?」
「いやいや、俺は文月さんの頼みを聞いてるだけだから」
「そうなんですよねぇ。なんだかんだ言いながらも付き合ってくれてるんですよね、階堂さん」
「それはまぁ一応俺を頼って来てくれてるわけだし、できる限りのことはしたいから」
俺がそう言うと文月さんが少し微笑んだような気がした。
「そういえば階堂さんって彼女いるんですか?」
「いない。けど気になる人ならいる」
「そうなんですかー」
「文月さんは?」
この話の流れなら聞いても大丈夫だろう。
「彼氏ですか? いませんよ。でも最近になってアプローチをかけてきてる人がいるんですよねぇ」
意外だった。おそらく江並のことだと思うが、こうもあっさりと答えてくれるとは。
でも文月さんなら江並の真意が分かってそうな気がするんだよな。




