ふぁいなる
蜜柑子は河東を狂おしく抱きながら、世迷言を漏らしていたという。
「翔太はね、わたしの父親よ。だからあいつを消せばわたしも完全に消せる」
河東も心を囚われて以来。
見えない鎖に長年繋がれた「内なる世界」を蹂躙され続けた犠牲者だったのかもしれない。
◇◇
相談依頼の探偵事務所の所員が見つけたことを彼らに報じてきた。
あくまで推測なのですが、
翔太さんの残した備忘録。
蜜柑子さんの筆跡で書き換えられていた箇所ですが。
これ、
あなぐら無理なく遊んだ結末……とある、ここ。
「あなぐらむ 理なく あそんだ 結末」と見て見ました。
学卒の皆さんにはもう、アナグラムの説明は要りませんよね。
蜜柑子さんは、久井谷 蜜柑子。
つまり、クイダニ ミカコ それは記載にあった「醜い過去だ」となります。
「翔太、わたしはお前の醜い過去だ」
取り調べで河東さんが自供した蜜柑子さんの世迷言。
翔太さんが蜜柑子さんの父親なら、
「わたし」と「おまえ」は位置が逆になりますね。
しかしアナグラムは言葉を入れ替えて別の意味を持たせる「遊び」です。
その場合、醜い過去だ、これが名に置き換わり
「翔太、わたしはお前のクイダニミカコ」といっている可能性があります。
それなら翔太さんへ向けられたメッセージとしては娘のミカコだ。
という名乗りとして捉えられもします。
クイダニ。
偶然にこの苗字だった娘に父親が知ってか知らずか、ミカコと名付ければ。
娘さんは、アナグラムという言葉遊びの存在により生き地獄を味わったかもしれません。
仮に翔太さんが父親なら苗字は明らかに異なります。
関連性は不明です。
翔太さんが将来結婚される相手の苗字が久井谷で、入り婿だったりすれば……
強引で申し訳ありませんけど。
翔太さんと蜜柑子さんの年齢差からは父娘はあり得ない。
外的時間と内的時間でいえば、心の闇は内的時間の中で構成される意識から生じる。
心の闇は時間概念を俯瞰して観る余裕を狭くするため「客観的時間」を遠ざける傾向にある。
他者と自分を比べるのも侵された「時間の病」を使い続けるから排他性が生じやすくなる。
内的時間の使用を止め、時間の病を治療する必要がある。
内的時間の長期使用は迷いを生みだし、他者の持つ「内なる世界」の存在の破壊に向かうのです。
つまり殺意も内的時間の乱用がもたらした弊害なのではないでしょうか。
パズルのような断片的ピースがあったので辻褄合わせをしたに過ぎません。
そのことはご留意ください。
仮説を唱えれば切りがありません。
事件は河東さんの自供で確定しています。
翔太さんが生き埋めにされなければならないほどの強い動機はまだ不明です。
肝心の主犯と見られる蜜柑子先生の消息は途絶えたまま。
皆さんの大切なご友人であった翔太さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
私たち探偵社にできることはもう何もございません。
あとは警察にお任せする以外にはない。
当方に謎解き調査のご依頼をして頂き、ありがとうございました。
了
ふぁいなる(不愛なる)エピソード
読了ありがとうございました。




