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家庭の躾ってことよね、と女子が難しい顔をしながらいった。
河東は、「多分な」と呟き返した。
だが宿の管理人曰く、激しい叱責の声はもっと幼いころからずっとだった、と。
◇◇
数十年後、少子化に伴い学校は隣接校と合併。
あの校舎は予備施設としてリニューアルするため取り壊された。
『六年二組、友情の記念カプセル』は業者により掘り起こされ、当時の卒業生に奇跡的に贈り届けられていた。
この学校でタイムカプセルの記念イベントを催した記録はどこにもない。
だがこの時期まで学校側は感知出来ておらず、発見されたので届けられる運びとなった。
あの日のまま放置されていたことになる。
「おい見ろよ、これ! 自記翔太の備忘録がどこにもないぞ。代わりに……」
当時の同窓生が集まれるだけ結集した様だ。
あのイベントはその日限りの約束だったはずだから、嬉し恥ずかしでお目に掛かりたいと同窓会という名目を立て集合となった様だ。
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【あなぐら無理なく遊んだ結末の備忘録】
『タイムカプセルイベントを提案した甲斐あり、河東よ褒めて遣わす』
『そのとき一人の忌まわしい生徒をこの手でようやく葬ってやったわ!
願いを叶えてくれた代償、告白文書をここに確かに記す……』
翔太──お前は……わたしの、醜い過去だ
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「河東くんは外せない仕事があって来れないのよね」
「働き盛りの男の事情だよ、許してやれ」
「俺のは、どれだっけな」
「なんだよ、これは!? でも、どこかで見たような大人の字だ……」
「俺覚えてるよ。題は、翔太の備忘録……とかだったはず。まさか差し替えられてんのか?」
「案外、在校生が掘り当てて、いたずらして埋めちゃった説あるかも」
「あんた馬鹿ね! 文面を良く見なさいよ。私たちだって打ち明けられなきゃ分かんないのに。なにをいたずらで書き換えるのよ」
「だよなぁ。OB舐めてんのかってフルボコにされるの目に見えてる内容だぜ」
「そうよ。あんたたちは全員分確認したんでしょ? これ他に誰が知ってるのよ」
「とおい昔のことだぜ……隈なく覚えてる奴いるか?」
「そーだよ、転生前の話なんかもう思い出せねーよ!」
「えーかげんにせいっ!」ビシっと。
「素人相手に裏拳ツッコミはパワハラっすよ?」
「ゆいちゃん芸人デビューしたんだぁ? あとでサインちょーだい!」
「一体どういう意味なんだ? だれが書いたんだ? なんの冗談だよ!」
「どうしたの?」
「学校に泥棒でも押し入ったか?」
「だから、どうしたのよ!」
「馬鹿言うな、泥棒が校庭なんか掘るかよ! そんでご丁寧に埋めていくか?」
「怪盗ルパンなら、卒なくこなすだろな……」
「くそぉ、予告状の報道見逃したぁ──っ!!」
「どこのルパンが小学校の校庭に盗みに入るのよ? おバカはいいからきちんと説明しなさいよ!」
「これって……俺たちの担任だった……蜜柑子先生の字なんじゃないか!? オレ、大好きだったもん!」
「許可出しくれたの先生だったよね? 先生も参加したのよね?」
「だれか卒業アルバム持参してたわよね。確認しましょうよ!」
「か、河東を褒めるって何のことだよ?」
「企画提案者だからだろ、つーか、自分で書かないよな、そこ?」
記憶の整理は当事者でも大変だ。
皆すでに三十歳を過ぎて家庭を持ったり、社会人だったりで。
久しぶりに集まれば、てんやわんやだった。




