て
「はい名越くん!」
「先生、お話します。じつは自記にだけ伝えていません」
そらみろ、……え。なんで自白してんだよ。露骨にいじめの告白か。
先生も不思議に思い、尋ねる。
「あら……どうして? 翔太くんもクラスの一員よ。仲間外れは良くないね」
そうだ、そうだ! それが一番良くないんだ。
説明してみろ。
「全部、自記のためを思って敢えて伏せていたんです」
「はい? 説明を続けてください」
なんだ? 突然、意味不明なことを持ち出してきたぞ。
名越は先生の問いに答えるべく教壇に視線を向けて、何やら熱弁。
「あいつは漢字の表現問題が今でも苦手のままですから」
それがどうした?
そこまで露骨に見下しまでするつもりか。
大きなお世話だ、お前なんかに何がわかる!
踏まれても蹴られても僕は腐った林檎ではありましぇん!
「俺たち、みんなの夏休みの時間を少しぐらい削ってでも、自記にこの教室で良い思い出を残させてやりたいと思って話し合ったわけなのです──」
名越の席は中央列の真ん中あたり。
発言するときは挙手をした後、起立するから彼の顔はよく見えている。
先生は、折を見て僕の方も見ている。
その先生の目を盗んで名越が薄笑みを浮かべたり、意地悪な言い方をする様子は見られないけど。
「まあ! それは素敵なことね。男の友情……羨ましいわね」
はあ? そんなワケないだろ。
先生ェ、……しっかり僕を見て!
ウソに決まってます、そんなの。
さっき、あれだけ言葉の奇襲で僕の心を踏んだり蹴ったりしたくせに。
先生はどういうことかを尋ねて見届けようとしているだけだよね。
本気であんな奴のいうことに感心してないよね。