その16
こそこそと後ろで作業していれば怪しまれるよな。
譲渡した魔法ならコンパクトか可能と分かれば良い収穫だ。
品定めの続きといこうぞ。
「大体が20銀コルト……どうしようか」
「お悩みなら5銀コルトの商品もあるよ。 質は保障しないがね」
「とりあえず全て見せてくれ」
「あいよ」
予算上どうするか悩んでいたら安い魔法瓶を見せてくれるなんて嬉しい限りだ。
さて、即悪品とは言っても魔法の集積体には違いない。
「殆どが効果が薄い魔法だよ。 あまりオススメはしないねぇ」
「ふむふむふむ。 一つの効力ばかりだが単純なものか……これなら使い道の用途が枝分かれするな」
複数効果や効力は低くても一色なら扱いが利きやすい。
炎や水と単純な物しかないこそ創造のバリエーションが無限に拡がるとゆうもの。
単体で造っても良いし、複数で新たな物質を造ってもオーケーだ。
ならいっそう魔法瓶の購入は……。
「……並んでいると魔法瓶を根こそぎ買いたい」
「くっくっくっ。 冗談およしよ坊や。 もし買うなら金コルト50枚は必要だよ」
「百の承知さ魔法屋。 冗談なく50金コルトを支払ってやる」
「ふぅぐぅ!?」
心を打たれ歪んだ顔を見れないのは残念だな。
面をしていなければ表情を拝めニヤニヤと満悦出来ただろうに。
非常に残念。 ……日に日に性格が悪くなってるような。
「こんな大金何処から手に入れたのかね! 盗みをしたんじゃないだろうね」
「盗みをしたと決めつけるのは心外だな。 つい二時間前にデュアルを狩った報酬金だ」
「あの紅蓮の悪魔を狩ったのかい! ……体内から魔法の残留も感じ取れないとなると……坊や魔法を操れないね?」
「その通りだが」
「ますます薄氷を踏むような香りしかしない坊やだね。 魔法を持たない人間がどうやって仕留めたのか藪の中だね」
洞窟に入る直前の岩を取って剣を造り、剣技だけで圧倒しましたと正直に話したら信じてくれるかな?
まず信用してくれる筈もない。
魔法も自在に操れない人間が最凶モンスターを討伐できる術など存在しないからだ。
正常な脳みそを持ってるなら誰しも倒せないと解答がでる。
人間の域を凌駕していない奴に限ってはな。
代表としては俺の中に眠る人類最強の彼女に仲間のトルカがそうだ。
彼女の記憶は無くとも人生の中で身に付いた経験は体に染み込んでいる。
トルカに限っては無意識でも敵を攻撃するようプログラムされている戦闘民族。
英雄と比べても遜色ないのではないかと思考を巡らすぐらい異質な強靭さを持っている。
「どう紅蓮の悪魔を狩ったのかは黙秘させてもらう。 知られてはまずい情報でね」
「追求はしないよ。 金コルト50枚支払ったお客に問い詰めるのも無粋だしねぇ」
しつこく質問攻めするなら購入した魔法瓶をブロックにして立ち去ろうとしたのにな。
人間相手でも客と見なしてくれるのは嬉しい限りだ。 老婆さんよ。
「魔法屋。 棚の上段から右端に大事そうに置いてある魔法瓶……あれはどんな効力がある?」
手に届くテーブルに置かれた魔法瓶とは違い、棚に配置された魔法瓶は底知れず圧迫感。
一言で魔境。
別次元の魔法を肌に伝わるのだ。
ただ、なぜか赤紫の液体が気になってしょうがない。
初めて観察するのに興味を示したのはなぜだろうか。
だから魔法屋に訪ねている。
「あれかい、超回復の魔法ファインだよ。 珍しい魔法ファインだから売るにしても金コルト20枚ってとこだよ」
「超回復………一つ質問させてくれ。 答えてくれたら買おう。 いつ仕入れた超回復の魔法は?」
脳内に引っ掛かる超回復のキーワードに心当たりがある。
早朝に知ったカルラの能力と酷似している魔法の結晶。
憶測なカルラはここに訪れている。
「そうさね。 つい先日に女の霊闢が''無償でいいから魔法を置かせてくれ''と変な客だったよ。 効力が超回復ときたもんだから要望通りに商品として売っているのさ」
「……ありがとう。 超回復の魔法も頂こう」
「くっくっ、毎度あり」
やはり的中だ。
俺が魔法屋に来ることを予測して少しでも助力になるように超回復の魔法(ファイン
)を置いたのだ。
自分の身のことなど置き去りにして他者を優先するか……ますます救出してやらないとな。
大国に捕まったお姫様を……。
「すまないが魔法瓶をしまう袋とかないか?」
「あいあい毎度常備してあるよ。 持っていきな」
泥棒が好んで使いそうな深緑の布袋を貰う。
もうちょっとマシな袋はないですかねと言いたいが失礼で口には出せない。




