その13
――いや、待てよ。
現状女湯と男湯にいるのは俺、トルカ、リーネだけだ。
てことは俺を止める者はおらず覗き見したい放題のチャンスだ。
それと彼女らは男湯に来てるのはサクマさんだとは知らない。
これ程の絶好の機会を逃せば美少女の裸を拝める日はないと思われる。
創造能力を駆使すれば覗き穴は作れるし気付かれずに堪能できる。
さて……。
「やめておこう。 これに限る」
幾度となく挑んだ猛者はことごとく覗きはバレて袋叩きにされ、もしくは女湯にはババアしかいないや誰も居なかったオチになる。
何の因果関係なのか必ず覗き見したら不幸が訪れるイベントになるのだ。
歴代の勇者達みたいに同じ鉄は踏まない。
それに罪悪感があって申し訳なくなる。
「ねえねえ向こう岸に行ってみない?」
「嫌ですわ。 男の方も居るでしょうに」
「声も気配もしないし誰も居ないわよ。 一度は冒険したくなるじゃない。 リーネも行こうよ」
な、なにーー!?
……バカな。 あちらから仕掛けてくるだと。
どうしよう。 風呂から出ていくか、浸かっておくか。
彼女らが来るだけなのだから覗き見する悪意はない。
合法だし居座っても罪にはならないよね。
そうと決まれば待機するのみ。
「あ、身体洗っていなかったわ。 昇るのやめとこっと」
「……ふぅ、そもそも昇ろうとしないことですわ」
呆れてる様子が柵の先から伝ってくる。
リーネと同じくトルカが来ると期待した自分にも呆れた。
萎えたことだし十分に暖まったので湯船から出て、洗濯した制服と共に風呂から退場する。
水分を含み重たい制服は籠に置いて腰掛けにあるバスタオルを手に取り髪の毛を優しく撫でる。
痛まないように軽く叩いて水分を除いていく。
ある程度水分を取り除いたら全身くまなく濡れた身体を拭いていく。
拭き終えたら洗った制服に下着に触れる。
「水だけを取り出すイメージと」
衣服に入り込んだ水分だけをブロック化し取り除いた。
乾いた衣服からはほんのりとアセロラの香りがする。
汚れも取れたし気分上々っと……。
「汚れって汗や埃とかだよな。 物質なら洗わなくても良かったんじゃ……」
今更洗濯する必要性がないことに気付く俺のバカ野郎。
匂いだって原因となる物質を排除すれば途絶える。
もっと早い段階で気付けば無駄な洗濯をすることはなかった。 ……トホホ。
「結果的に綺麗になったから良しとしよう」
落ち込んでも仕方ないので前向きに捉えることにした。
下着を履いてズボンと布シャツだけを着て脱衣場を後にする。
身体の熱が冷めるまでは厚着となるブレザーは着ない。
脱衣場から出てすぐ休憩する長方形の椅子が有り座ることにした。
「いい湯だったな。 また来よう」
浸かった感想を述べ腰を掛けて休憩していると店主がこちらに歩み寄ってきた。
両手に温泉の定番となる牛乳瓶にうちわを持ってだ。
「お客さん風呂屋の名物、牛乳とうちわです。 どうぞご利用ください」
「え……コルトとかは払わなくてもいいのか?」
「いえいえ。 お客さんは十分に支払ってます。 私のサービスですから気にせず」
「んじゃ、遠慮なく」
気前がいいな。
入浴前に払いすぎてるとは言ってたな。
それで無料で提供してくれたのだと理解した。
有りがたく牛乳とうちわを受け取り店主は持ち場に戻った。
温泉はともかく牛乳瓶にうちわまでレクシリアにあるとは驚きだ。
牛乳瓶に至っては構造まで元の世界と同じで、うちわに関しては骨組に紙を貼ったとこまで似ている。
偶然にしては似すぎている。
……彼女が関わってる気がしてならない。
「ぷは。 牛乳うめえ!」
風呂屋を設計したのが前任者があってもなかろうが牛乳にうちわと考案したのはグッジョブだ。
涼しいそよ風をうちわで扇ぎながらキンキンに冷えた牛乳を飲む快適。
幸せすぎて溶けて蒸発しそうだ。
――十分後。
身体の熱が抜けるまでうちわで扇いでいと女湯から例の二人が出てきた。
「ありがとうねリーネ。 この思い出は墓場まで持っていくわ」
「なにもそこまで感謝しなくともいいですわ」
キャッキャうふふと眩しい可憐な花が会話してるのを眺めると目の保養になる。
風呂上がりだからか濡れた髪に胸や肩に水滴が付いていてエロい。
ふむ、女性の風呂上がりは色っぽく感じるのだろうか……不思議だ。
「見てみて、白い液体があるよ! 何なのかなこれ?」
「牛乳と呼ばれる飲み物ですわ。 風呂上がりには最適の逸品ですのよ」
ほう、リーネが知ってるとなると風呂屋は前任者が関わってるとみて間違いないな。
風呂付きの宿しか泊まらないとカルラからエピソードを聞いた辺り綺麗好きと分かる。
これらの条件を踏まえるとどう考えても建築したのは前任者だろうな。




