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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第三章:霊谷の森の姫

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その9


『グポポポ……ワガ……カテトナレ』


 鉤爪をクロスさせ殺る気が満々のようだ。

 体勢を低くし仕掛ける気だが先手はこちらから貰う。

 デュアルに恐れることなく一直線に駆け出す。

 岩の剣をギラつかせデュアルの射程圏内容に入ると鉤爪が空を切る。

 足を踏み止め後方に下がると奴は絞り出した声で『グポッ!』と叫んでいた。

 仕留めたと確信していたようだが残念だったな。

 最初(はな)から攻撃する予定はなかった。

 そう、突進したのはお前ご自慢の武器の速度を計るためだ。

 予測してやっと完璧に回避出来る攻撃の速さは尋常ではないが俺の敵ではない。

 敵ではないとゆえ気を緩めば胴体は真っ二つで即死だ。

 まだ隠し玉を持っていてもおかしくない。

 慢心すると死に直結する。

 慎重に行動せよと自分自身に命令する。


『ニン……ゲン……スグニ……バラバラに……シテヤル』


 片言ではあるが殺意が籠っているのはよくわかる。

 こちらから仕掛けたいが二度同じ手は通用しない。

 フェイントも警戒されている今は奴の出方を伺うしかない。

 相手が動き出してから勝負だ。


『グポガカァ!』


 先程見せた低い体勢の構えからカエルが跳躍したかのように瞬時に距離を詰めてくる。

 すかさず鋭い爪が右手から迫るのを岩の剣で受け止め火花が散る。

 第二撃目の地を切り裂く凶器に対して防ぐ術はない。

 防ぐ術がないなら回避する他はない。

 バックステップしてもあの長爪の刃物から逃れられない。

 なら生き抜くにはたった一つの方法しかない。

 押して駄目なら引いてみろの逆をすればいい。


「うおおおしゃ! ……無事成功」


 ほんの隙間である股の間をスライディングで通り抜けたのだ。

 無傷で背後に回れたのは大きい。 ここからなら奴の死角だ。

 予想だにしない回避の仕方に対応したことないようだな。

 遠慮なく無防備な背中を斬らせてもらおう。


『グギギギッ!』

「見事な反射神経だ。 仕留め損ねたか」


 斬ることには成功はしたが傷は浅い。

 息をするより速い跳躍技を土壇場で使い、難を逃れたのだ。

 上手い身のこなしだ。

 決闘慣れをしている。

 ……これなら俺の限界値を調べるのに最適な敵だ。

 一人でやって来たかいがある。 


「人間に斬られて無様だな。 出し惜しみせずに全力で来いよデュアル」

『グポ……』


 やっと強敵と認識したようだ。

 たかだか人間だと油断した結果の傷口だと知ったか。

 ……フェイントに股抜けは対応される。

 騙し技系統をやれば死あるのみ。

 ならどう戦うのかと問われればこう答える。

 純粋に剣術のみで奴を凌駕するだけと。

 剣なんてまともに握ったことなくとも彼女が磨き上げた経験を生かすだけだ。


『コウカ……キソウ……』


 デュアルがそう唱えると鉤爪が紅に染まっていく。

 火炎が帯びたように熱を発する凶器は触れたら只ではすまないと経験上告げる。

 当たった時点で大ダメージなのに更に凶悪になるとは鬼かよ。


『ユクゾ!』


 またも飛び込みで懐に詰めてくる。

 紅の爪が胴体へと襲いかかるが岩の剣で受け流す。

 もろに受け止めなんかすれば破壊されてしまう。

 体勢を崩したデュアルに一閃を入れるが交わされ天上に移動していた。

 天上を足場代わりに蹴りをして次は頭蓋骨を狙ってくる。


「っぅ!」


 コンマ一秒の動作で鉤爪を弾き上空攻撃を防いだと思えば地上に足を付けば跳躍してきた。

 紅い線が目の前に迫るのをバクテン回避する。

 止まない連撃はまた上に移動してからの脳天狙い。

 上体をずらし熱を帯びた奴の武器を流しいく。

 休ませてくれない紅の暴君。 

 このままでは消耗戦に持ち込まれ体力が底を尽きてしまう。

 最悪の事態を避けるには打開するしかない。


「底なしかよ」


 真正面特攻に失敗したら跳躍して天から切り裂き。

 単純な行動パターンだが相手を休ませず魔法(ファイン)も使わす時間も与えない連撃の雨。

 速さも常軌を異している。

 幾度もこの必勝パターンで狩ってきたのだろう。

 ――だがな、俺には通用しない。

 打開策は浮かんだ。

 今から実行に移し奴を討ち取る。


『ニン……ゲンヨ……ソンナ……モノカ』

「お前の動きは掌握した」


 挑発してもいいがお前の行動はワンパターンなんだよ。

 上空からの切り裂きは対応はしにくい。

 だけども弱点でもある。

 空中では方向転換出来ないだろ。 

 なら剣を振るう必要はない。

 俺がしっかりと武器を握って待つだけで奴は倒れる。

 腰を低くして鉤爪が接触しない位置まで体勢を落とすと……ブスリと肉を貫く音が持ち手から伝わる。


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