その3
「サクマはどうしますか?」
「どうって?」
「カルラを助ける行くのかってことですわ」
「欠けてはならない仲間だ。 当然助けに行くさ」
里に帰ったカルラにどんな仕打ちをされているのか考えると恐ろしい。
仮にも大国の姫なのだから家出娘にはキツい罰を受けているかもしれないのだ。
グズグズしていられない。
素材収集なんて後回しだ。
カルラを救ってから行動すればいい。
「決まったとなれば善は急げ。 乗り込みに行くぞ」
「お待ちなさい。 策も無しに全裸で特攻するバカがいますか。 カルラの身なら保証されておりますので大丈夫ですわ」
……うぐっ。 凍てつく氷の槍で胸を貫かれたごとく的確なリーネの一言。
仲間のことになるとヒートアップしてしまう。 冷静に先を見据えないと命が幾つあっても足りないなと反省する。
「熱くなってすまない。 具体的にはどうすればいい?」
「大国を相手にするのですから相当な戦力が要りますわ。 ですが、姫を連れ出すと乗ってくれる方はまずいませんわ。 なので私を含めたサクマ、トルカの三人で攻略する必要がありますの」
ふむ。 大国に喧嘩を売るなど正気の沙汰ではないよな。
他人の力を借りることも出来ないで三人で助けるか……無理ゲーな気がしてきた。
アイデアなど思い付かない。
大国相手にどう対処すべきか。
「三人しか居ませんが助けることは可能ですわ。 サクマが受け継いだ創造能力があれば」
「いやいや、ちっぽけな人間一人が創造能力があるといえ限度があるぞ。 大国相手出来るほど自信はない」
過大評価のしすぎだ。
前日に漆黒の剣士から洗礼を受けただけで一歩も及ばなかった。
まして魔法を操れない創造なんて強くも何ともない。
物質を操るだけで最強の武装も造れない俺に力はないのだ。
「サクマは勘違いしてますわ。 創造能力の扱いを熟知してないのですから自信がないのですわ。 かつて前任者が降臨していた時代は人類最強の男と恐れられていましたわ」
リーネから怒気が籠った一喝。
熟知をしてない……か。
まだまだ扱いになれてないのに侮っている自分自身に怒りが芽生える。
奴との対決で退けたのも創造能力があってこその賜物だ。
自信を持つように心掛けよう。
人類最強と謳われた彼女に近づこう。
目標は定まった。
一歩でも彼女のような人類最強になるよう創造能力を使いこなす。
……魂を食い潰されてもな。
にしても驚いたのが種族が人間ってことだ。
序列一位の翼懺が前任者だと予測していた。
強者を束ねる集いには頂点の生き物だとばかり思い込みがある。
なによりカルラの言葉が信用出来ない原因もある。
序列三位以上は消息が不明で存在するかも怪しいと言われてもにわかに信じがたい。
「リーネの一喝に気合いが入ったよ。 創造能力があれば突破可能は分かるが肝心の物質の調達はどうする?」
「そうですわね。 手っ取り早いのが高難易度の依頼をクリアするのがいいですわ」
金稼ぎってことか。
物質を手に入れるのに効率がよいのがお金を払い、物を受けとるってことだ。
いちいち現地調達していてはいくら時間合っても足らない。
なので必要な物質が一ヶ所に集まる売り場から買い物をしようとリーネは言っている。
「近辺にギルドがあるのか」
「よくご存じですわね。 足を運んだことありまして?」
「ないな。 テンプーレトな場面だから分かるだけさ」
「テンプ……レト?」
眉を潜めて何を言ってますのと目で訴えかけてくる。
知らなくて当然だよな。
レクシリアにない言葉なのだから仕方ない。
「俺の世界の言葉だよ。 意味は予想通りの展開ってことだ」
「珍妙な世界ですわね。 遠回りする言葉を作るならくてもいいですのに」
とは言われても略称や四文字熟語など意味を違う言葉で詰め込む文化の世界なので理解しがたいだろう。
世界が異なればこうも相違が生まれるのは当たり前だ。
それでも異世界を渡っても会話はぎこちなくできる。
コミュニケーションを取れれば問題はない。
「サクマさん、サクマさん。 お腹は空きませんか?」
「あー、確かに胃の中が空っぽだな。 もしや朝食でも作ってれるのか?」
「はい! 腕を振るいますよ」
白いシャツの裾を捲って二の腕を掴みガッツポーズを取る。
ここの宿屋は泊まった客に朝食を出すシステムなのか。
通りで食堂があることだ。
「随分と気に入られてますが……あの子に如何わしいことしてないですわね?」
「してない。 苛められただけだっての」
疑いの視線が離れずチクチクと痛い。
変態と罵られ弄ばれたのになぜ如何わしいことをしたと疑われるのだ。
小さい子は可愛いと思うが恋愛感情はない。
まして性の対象にもならない。
ロリコンと疑うのは止してくれリーネよ。




