その1
明くる日の朝。
鶏が鳴き出す声と同時に起きた。
早朝からコケコッコーと近所迷惑になるぐらいうるさい。
頭がまだ目覚めてなくフラフラと立ち上がり欠伸をすると目に涙が滲み裾で拭いとり寝ている彼女達を確認する。
「こんなにうるさいのによく目覚めないな」
何羽いるのか一匹が鳴けば連動してもう一匹も鳴く。
サイレンを鳴らし続けているかのようだ。
ふと、よく観察するとカルラがいない。
下の階にでもいるのだろうか。
カルラを気にする前に点検することがあった。
「さてと身体の具合は………異常なしと」
あの大鎌を振るったおかげで筋肉痛は逃れないもののそれ以外の支障はない。
全身はちゃんと動くし吐き気もなく気分も普段通りだ。
身体の方は何事もなくほっと長い溜め息を吐いた。
「そうそう顔のチェックと」
鏡は部屋に置いてなく代理で窓ガラスを鏡として使う。
皮膚の状態にニキビはないかお肌のチェック。 鼻の穴もチェックし問題はなしと。
まつ毛も……。
「――待て。 俺は朝早くから何をしている」
起きてすぐに顔のチェックなど人生でしたことがない。
それにここまで肌を気にするような性格ではない。
夜に風呂に入り毎日洗顔をするぐらいだ。
鼻毛が伸びていれば風呂上がりに切る程度。
俺は起きてからしないはずの行動……まさか。
「予想以上に進行している」
容量を超えた代償は高く無意識まで蝕んでいる。
一人称でさえ俺と呼ぶようになっている。
只でさえ侵食は止まらず少しずつ進行しているとゆうのに追い討ちされる。
前任者が集めるよう言われた物質は一つも確保していない。
のんびりとしている暇はないようだ。
人格を失う前に早々に集めないとな。
「眠っているお二人さんは置いといてカルラを探すか」
夢見ている二人の微笑ましい寝顔をずっと堪能したいが今は後にしよう。
超回復能力があるといえカルラの容体は伺いたい。
もしもの後遺症があれば一大事だ。
さっそくカルラに会いに行くため部屋を後にし一階に降りる。
カウンターには誰もいない。
焦っていて気づかなかったが宿屋から入って左口にに食堂らしき部屋がある。
相変わらず木がメインに装飾された部屋は等間隔に長テーブルが6つ。
一つのテーブルに八つの円形の椅子が置いてある。
部屋の奥には注文カウンターらしきのと厨房が伺える。
「学校を思い出すな。 懐かしい」
元居た世界ではここより十倍くらい広い敷地があったがクラスの仲良し達とよくフライドポテトだけ買い食いしてた。
他にはチキンナゲットに焼きそばと油っこい食べ物ばかり注文していた。
しばしば戻りたいと願うが帰れない。
戻ったところで居場所もない。
神様と名乗っていたカルラは霊闢と呼ばれる種族で奇跡を起こせる力など多分ないだろう。
……はて、最初に出会った時に神と言ったのは何故だろうか。
今になっておかしいと気付く。
会った際にカルラに訪ねてみるか。
「あー、変態のお兄ちゃんだ。 早起きですねー」
朝一発の失礼な言葉を吐くのは昨日お世話になった元気な店主娘。
ブロンズの髪を垂らし小顔でふっくらとしたほっぺたを持つ娘さん。
手には藁の籠。
中には鶏の卵が無数にある。
収穫していたのね。
通りで朝からうるさいわけだ。
「あのですね、昨日もそうですけど変態と言うのは失礼ですよ。 何も癪に障ることはやってない筈ですが……」
確かにタダで泊まらせて貰ってるのには感謝はしている。
だからと言って変態と罵っていいわけではない。
いや、豆腐メンタルなので精神的に傷ついているので反論はさせて貰ったのだ。
「初対面で可愛いだのくりくりした目が小動物みたいだとか感想述べてたくせによく言えますね。 私は可愛いと思われるのが大嫌いなんです!」
「……え? んんん?」
頭の中で呟いてたのが口に出していたのか。 ……んなわけないよな。
思ったことを口にしていたなら彼女達から軽蔑の眼差しがあっただろう。
確実に。
口には出してない。
顔にも出してない。
二つ以外に情報を読み取れる能力があるとしたら一つだけ。
――心を読む能力、または心の声を聞き取る能力のいずれのどちらかだ。
現在進行形で読み取られ放題だろうが防ぎようがない。
おっかねえ能力だこと。
「すごいすごい変態のお兄ちゃん! ほぼ的中ですが少し違います。 見直しました」
「見直したなら変態と呼ばないでくれ」
「分かりました。 お兄ちゃんと呼ばせて頂きます」
……ふーんんん。
耐えるんだ自分よ。
ここで真っ先にある言葉を頭に浮かべたらまた変態と呼ばれるぞ。
はあー……と、よし!
煩悩は捨て去ったぞ。
深呼吸すれば案外落ち着くものだな。
実に危なかった。
しかし、少し違うとはなんだろう。
解釈の仕方が間違ってるのか、もしくはニュアンスが間違ってるのか分からないな。




