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7.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

ダリアという上級魔術師に会い、国民としての登録作業をしてもらいに行く途中のアリスたち。これが終われば、会いたくてたまらなかった長兄ラファエルと会うことにし、ついにダリアの部屋にたどり着くのであった……。

 これで、今日の楽しみが出来た。


 そうと決まれば、さっさと用事を終わらせてラファエルに会いに行くに限る。あんなに嫌がっていたレオも足取りが急に軽くなり、四人はやっと目的地に到着した。


 この王宮の六階には、上級魔術師たちの執務室がある。授業や会議などが無い限り、先生たちは各自の部屋にいることがほとんどらしい。


 ダリアの部屋は、その一番奥にあった。他と違って二枚扉になっていて、黒い扉に取り付けられたドアノブは大理石ではなく、オレンジと白の縞々模様の石になっていた。


「サードニクス」


 アリスがまじまじと見ていたので、気になったのだろう。ノックしようとしていたパウラが、アリスに微笑みかけながら教えてくれた。


「ダリア先生の石だよ。階級章のここ、みんな色が違うだろ」


 そう言って、パウラは羽の飾りを指さした。正確には、その根元部分に埋め込まれた黄緑色の石を。


「国王陛下が、一人一人を占って、選んでくださるんだ。陛下からのプレゼントだと言ってもいいね。占って、その人に一番しっくりくる石や、思いを込めてくださっているんだよ」


「え、全員?」


「そう、全員。アリスも、魔術師になったら陛下に選んでいただけるんだよ」


 もう一度アリスに笑いかけてから、パウラはドアをノックしてハキハキとした声で「失礼します」とドアに向かって話しかけた。


「中級魔術師のパウラ・ツヴィングリです。昨日、お願いいたしました件で、参上いたしました。入ってもよろしいでしょうか?」


「——ええ。お入りなさい」


 ゆっくりと二枚扉が開いて、アリスたちは部屋の中に招かれた。


 広いが、本だらけの部屋だった。入って左右の壁は本棚になっていて、隙間なく本が収まっていた。正面には花を模した明るい色のステンドグラス。それを背に、初老に近い女性が書き物をしていた。


 白髪交じりの茶色の髪に、釣り上がった明るい茶色の瞳。眼鏡をかけて、とても厳しそうな、ふくよかな体型をした女性だ。


「パウラ・ツヴィングリ、黄皓然、ご苦労様でした。レオ・ランフォードがここに来たがらず、苦労したでしょう」


 書き物をやめて顔をあげた彼女は、レオをジッと見つめた。レオが顔を引きつらせようが、パウラと皓然が吹き出しそうになっていようが、無表情で。いや、ダリアが無表情で、レオが顔を引きつらせているから、二人は面白がっているのだろう。


「えっと、ダリア先生。こんにちは」


 レオは顔をひきつらせたまま、笑顔を作った。


「本日はお日柄も良く……。えっと、ですね。えー……。はい、そのぉ……」


「——おめでとうございます。今年も留年せずに済みましたよ」


「本当ですか! よかったぁ!」


 あからさますぎるほどにホッとするレオに封筒を渡し、ダリアはその鋭い目をアリスへと向けた。


「お久しぶりです、アリス・ランフォード」


「え、あ、お久しぶり、です……?」


 久しぶりも何も、全く見覚えのない人に久しぶりと言われた時、何と返せばよいのだろう。


「とはいえ、あなたは私を覚えていないのでしょう。まだ、あの時のあなたは赤ん坊でしたから。改めまして、ダリア・クロフォードと申します。よろしくお願いいたします」


「は、はい! えっと、アリス・ランフォードです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 この感じ……。まるで、生活指導の先生と話をしているみたいだ。


 アリスがそんなことを思っていることなど知らないダリアは、「では、登録しましょうか」とゆっくり腰を上げた。


「丁度いいですね。勉強になりますから、あなたたちもよく見ておくのですよ」


 既に登録済みの三人が返事をすると、ダリアはアリスに手首を出すように、と言った。


「左右どちらでも構いません。手首の裏を上にしてください」


 言われた通り、アリスが左手首を返してダリアの前に出すと、ダリアはその細い手首に人差し指と中指を揃えて、うっすらと透けて見える血管の上に添えた。


 何が始まるのだろう、と思っていたアリスの手首にチクッと痛みが走った。


 そして、驚くことにダリアの指が離れると、それに引っ張られるようにしてアリスの手首から二、三滴の血液が抜かれたのだ。それなのに、手首には傷など一つもない。


 目を見張るアリスの前で、ダリアは小さな試験管にその血液を入れると、透明な蓋をして息を吹きかけて消してしまった。ダリアの息がかかった試験管は、空気に溶けるようにしてサラサラと消えていった。


 すると、今度はアリスの前にゲームのセレクト画面のようなものが浮かび上がった。手を伸ばしてみても、指はそれに触れられない。しかも、それにはアリスの顔写真と、誕生日や家族構成などの個人情報が書かれていた。


「そこにある情報、間違いはありませんか?」


「な、無いです」


「それは何より。戸籍登録上、あなたはルイス・ランフォードとアン・ポポフの娘になっています。ですが、引き落とし口座はカイルのものです。買い物の仕方などは、あとでそこの三人に教えてもらうとよいでしょう。何か質問はありますか?」


 アリスが首を左右に振ると、目の前の画面は音もなく消えた。


「これで、登録終了です。あなたは無事、このアエラス王国に届けられた出生届のアリス・ランフォードと同一人物であることが証明されました」


「はあ……」


 理解していなさそうなアリスを見て、ダリアは少し考えてから再びアリスを見つめた。


「あなたは生まれた時から、このアエラス王国の国民なのです。ヘレナとカイルがあなたの出生届を国に提出していますから。その時にも、あなたからは数滴の血液を提供してもらっています。そして今、私はあなたからもらった血液が、出生届の時に登録されていたあなたのものと一致するかを調べたのです。ここまでは理解していただけましたか?」


「は、はい」


「よろしい。アエラスの魔術師養成課程を受けるには、本人確認が取れなければなりません。なので、血液に含まれているあなたの魔力の波長が、既に登録されていたものと一致するか確認しなければならなかったのです。それに、あなたの場合は保護者も変更になっていますから、その変更に間違いがないかも確認しなければなりませんでした。法律で、五年以上国から離れた国民はこれをしなくてはならないのです。これをしなければ、あなたはこの国で買い物もできませんし、あらゆるドアをくぐることが出来ません」


「そうなんですか……」


「……登録をしなければ、あなたは図書館や医務室、食堂などに入ることができないのですよ。もちろん、これからあなたが生活することになる部屋にも。入れる部屋は、登録を行う場所と門のターミナルだけです」


 どうやら、よほど重要なことだったらしい。つまり、登録が済んでいない人間に待っているのは、送り返されるか、大人しく登録してもらうかの二択だけということだ。


 とはいえ、これで登録は終わったのでアリスたちはそろそろお暇することにした。この後は、待ちに待ったラファエルとの再会が控えている。


 ダリアに挨拶してから、四人は部屋を後にした。

お読みいただきありがとうございました!

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