40.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
※手違いで、「39.」と回が前後してしまっています。申し訳ございません。
物語の順番は、タイトルの数字通りになります。
〈あらすじ〉
無事に魔術師になれたアリス。だが、クラスの侯爵令嬢、ルイーズに目を付けられてしまったらしい。早速、ルイーズに悪質ないたずらを仕掛けられたアリスに、先輩たちは……?
「なんだよ、不機嫌だな」
「ルイーズだよ!」
既に部屋着に着替えてくつろいでいたパウラに、アリスはネクタイを解きながら訴えた。
「あの子、私のこと転ばせたの! っていうか、すごく足が痛い!」
「怪我ですか?」
ソファに座り、痛む左足の靴下を脱いだアリスは「ほら!」と皓然に訴えた。
白い足には、何かが巻き付いたかのような痕がついていたのだ。コードのような細い線状のものだろう。
「……鞭ですかね」
アリスの許可を得て足首に触れた皓然は眉をひそめた。それから、救急箱に入っていた物で手当をしてくれた。アリスにはよくわからないが、塗るシップの様なものだろうか。
「明日にはよくなっていると思いますけど、無理はしない方が良さそうですね」
「ありがとう、皓然」
やっと笑顔を見せたアリスだったが、やはり怒りが収まることは無かった。
「ねえ、あのルイーズって子……」
「大変だよ! ルイーズがアリスに目を付けててさー!」
勢いよくドアが開いて、アダンが部屋に入ってきた。彼は引っ越し手続きがあるからと、集まりが終わってから別行動をしていたのだ。こちらに来たということは、無事に引っ越し作業は終えたらしい。
「今、その話を聞いていたところ」
レオはアダンを部屋に入れると廊下を見回してからドアを閉めた。
「でも、頼むから人に聞かれるところで貴族の悪口は言うなよ」
「おっと、ごめん」
素直に謝ったアダンは、改めて「ルイーズがさ!」と訴え始めた。
「ぼくらのことが気に入らないみたいで、嫌がらせしてくるんだ! 特にアリスのことが気に入らないみたいでさ、教室に入る時に何て言ったと思う?」
先輩たちが「さあ」と答えると、アダンは肩にかかる髪を払って鼻を鳴らした。
「『金髪だからって、調子に乗ってんじゃねーよ。この平民風情が!』だって! 一貴族令嬢として、これどうよ!」
「多分、もっと言葉遣いは綺麗だったと思うけどな」
肩をすくめたパウラだったが、「でも、確かにそれはひどいな」と言ってくれた。
「でしょ!? パウラ、ルイーズに何か言ってやってよ!」
「残念だけど、ボクにそんな力はないよ。それはアダンも分かってるだろ?」
アダンが言葉を詰まらせると、パウラは「大丈夫」と新人二人に笑って見せた。
「うちのチームがこれまで、どうやって生き残ってきたと思ってるのさ。知識で殴るのが、うちのやり方だよ」
「知識?」
首を傾げたアリスに大きくうなずき、パウラはアリスの左足を指さした。
「ダリア先生も法に触れる行為は慎めって言ってただろ? これだって、立派な犯罪行為だ。だって君は、ただ歩いていただけなんだから。貴族だろうが上級だろうが、法律には逆らえない」
「なるほど! お兄ちゃん、この怪我の写真を撮って! 証拠を残さないと!」
「さっすがー! 呑み込みが早いね、アリス」
パチパチと拍手を送るパウラにため息をついてから、レオはアリスの怪我を写真に収めた。とはいえ、レオも後でこうするつもりでいた。ルイスにも昔から、「何かに使えるかもしれないから、証拠集めは日頃からしておくように」と言われている。
さらに心強いのは、ここには法律に詳しい人間がいるということだ。
「特に、皓然は法に強いからね。ボクらを舐めてかかると痛い目を見るって、教えてやろう」
「ぼくらも捕まらないで済む範囲で、ですけどね」
救急箱を持って立ち上がった皓然も、薄く笑った。
アリスは知らないかもしれないが、ルイスは魔術界の元弁護士だ。その付き人を務めるにあたり、皓然も法や憲法に詳しくなければならない。パウラとレオも、もちろん法学に触れているが、皓然の知識はそれ以上だ。
「安心して下さい。時間はかかるかもしれませんが、絶対にルイーズに一泡吹かせてやりましょう」
「うん!」
アリスとアダンは皓然に元気よく返事をして、タッチを交わした。ルイーズのおかげで、二人はすっかり仲良くなっていた。
それに、アリスは初めて、友達が味方に付いてくれた心強さを感じていた。家族が味方に付いてくれるのと、少し違う安心感がある。
それを見ていたレオの手を、突然アルが鼻先で小突き始めた。
「うん? ——あ、そっか。ありがとう、アル」
急に部屋に戻ったレオは、アリスに小箱を持ってきた。
「なにこれ?」
「父さんと母さんから。登城祝いで預かってた。危うく、忘れるところだったよ。アルには感謝だな。今日、渡すように言われてたんだ」
小箱を受け取ったアリスは、ふたを開けて「あっ」と声をあげた。
スマホだ。どうやら、両親はアリスがスマホをこちらに持ってきていないことを知っていたようだ。
「こっちでも、スマホって使えるんだね」
「別世界の物とはちょっと違ってるよ。まず、充電はいらない。魔力と日光で自然充電されるから。それに、スマホが全部やってくれるから」
「どういうこと?」
「やってみた方が早いよ。ほら、電源入れてみ」
レオに言われるまま、アリスが箱からスマホを取り出すと、スマホはひとりでに飛び上がって驚いているアリスの前に浮かび上がった。
「本人認証を行いマス。画面にタッチして魔力を登録してくだサイ」
言われるがまま、画面にアリスが触れるとスマホは一瞬、大きく震えた。
「本人認証が完了しましタ。アリス・ランフォード様、これからよろしくお願いいたしマス」
あんぐりと口を開けているアリスの前で、スマホは再び持ち主の手に納まった。
「ね?」
「うん……」
「じゃ、早速だけど俺らは連絡先を交換しておこうか」
レオは自分のスマホをポケットから取り出すと、アリスのスマホの上にかざした。すると、二台とも画面がついてそれぞれが持ち主の前に浮かび上がった。
「レオ・ランフォードさんと連絡先を交換しますカ?」
「アリス・ランフォードさんと連絡先を交換しますカ?」
兄妹が許可を出せば、連絡先の交換は終わりだ。再び、手の中にスマホが戻ってきた。
アリスはこれを、チームメイト全員と行った。それから、チームのグループチャットにも入れば連絡先交換会は終わりだ。
「これ、本人同士がいないと連絡先が交換できないから、父さんたちの分は今度帰った時に交換しろよ。それまでの間は、俺がスマホを貸してやるから」
「分かった」
素直にうなずいたアリスは、新しいスマホをあちこちの角度から観察してみた。どこからどう見ても、別世界のスマホと同じようにしか見えない。それなのに、機能がこれほど違うのは魔力が関係しているのだろうか。
そう言えば、皓然も別世界でこれを使っていたではないか。今、思い出したけれど。
「何はともあれ。二人とも、これからよろしくな」
もう一度そう言ってくれたパウラに、アリスとアダンは笑顔で答えた。
「よろしくお願いします!」
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