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28.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 困っていそうだったロビンの頼みで、カミーユという女魔術師を探していたアリスたち。しかし、アリスは急に口を塞がれて……。

 電話を切った桃子は、先ほどロビンが指さしていた路地に向かって走り出した。


 その様子を、アリスは口を塞がれた状態で見ていた。


 ロビンに口を塞がれたアリスは、すぐ後ろにあった建物の中に連れ込まれた。最初は何が起こったのか分からず、抵抗すらできなかった。だが、こうして桃子が走って遠くへ行く様子を見て、確信した。


 何が目的かは知らないが、アリスはロビンに騙された。


「やっと、どっか行った。千夜族がいると厄介なんだよなぁ」


 そう呟いたロビンの声は、先ほどまでとは違って、随分と大人びたものだった。おまけに、アリスの口を塞ぐ手もなんだか大きい気がする。


 そっとロビンへ視線を向けてみると、そこにいたのはさっきまでとは似ても似つかない男がいた。無精ひげを生やした、目も髪も黒い男だ。しかし、千夜族ではない。


「お前、新卒魔術師だろ? 仕立て屋の奥の部屋に連れて行かれるってのは、魔術師だけなんだよ。キュクノスの構造も知らなさそうだったし、別世界出身者か?」


 口を塞がれているし、緊張のせいで声は出ない。


 だが、男はアリスの顔を見て自分の見立てが正しかったことを悟ったらしい。ニヤリと笑った男は、近くのソファにアリスを投げ飛ばした。


「魔術師ってのは、高く売れるんだ。恨むなら、無知な自分を恨むんだな」


 ——人さらい!?


 男の目的を知ったアリスは何とかして逃げようとしたが、後ろ手に冷たくて重い何かで手首同士を固定されてしまった。


 身動きが取れず、猿轡(さるぐつわ)までされたアリスは涙の浮かんだ顔で男を睨みつけたが、男は何食わぬ顔で電話し始めた。


「——ええ、一匹捕獲に成功しました。ただ、千夜族が二人いたのでソイツらの口を塞いでおかないといけないかもしれません。……大丈夫ですよ、足はつけません。前のカミーユとかいう女だって、魔術師の連中はまだ見つけられていないんですから」


「っ!」


 カミーユも、この人に攫(さら)われたらしい。しかも、魔術師たちはまだ彼女を見つけられていない。


 ということは、アリスも——。


「——え、名前ですか? 苗字は分かりませんが、アリスって名前だと思いますね。別世界出身の……」


『バカ野郎!』


 相手の声が、アリスにも聞こえてきた。


『今年の新卒魔術師のアリスなんて一人だけだ! いいか、お前がさらって来たのはアリス・ランフォードだ! あのランフォード家の娘だよッ!』


「ラ、ランフォード!?」


『そうだ! さっき、ポポフの真似をして電話して確認したから間違いねぇ! 今、ランフォードの子供たちは全員こっちにいるんだよ!』


「なんだって!?」


 男が素っ頓狂な声をあげた瞬間、カーテンの閉められた窓ガラスが派手に割れた。


「なんだ……!?」


「アンタを捕まえに来たんだよ!」


 鬼の形相で窓から飛び込んできた桃子は、男の鳩尾(みぞおち)に鋭い蹴りを食らわせてアリスの元へ走ってきてくれた。


「アリスちゃん、大丈夫!?」


「も、もこ……!」


 猿轡を取ってもらったアリスが思わず涙に震えた声を上げると、男が落としたスマホから『はあ!?』とこちらも素っ頓狂な声が聞こえてきた。


『桃子だって!? もしかして、斎家の!? おい、人形持ってる千夜族いなかったか!?』


「に、人形!?」


『斎家と言ったら人形だろうが!』


「くそっ……!」


 腹を抑えながら立ち上がった男は、懐から取り出した杖を二人に向けた。


「こんなところで捕まってたまるかよ! 別世界から来た餓鬼なんかに、捕まってたまるか!」


『おい! お前の敵う相手じゃない! 逃げろ!』


 電話から聞こえてきたその声は、男に届いていないらしかった。


 男が不気味な色に光る杖を振り上げ、大きく息を吸いこんだ瞬間だった。割れていた窓から、再び人が入ってきたのだ。


 その人は、杖を握る男の腕に踵落としを食らわせると、床に着地してすぐに踵落としを食らわせた男の腕を取った。


 一瞬の出来事だった。アリスが入ってきた人の正体に気付いた時には、男は勢いよく床にたたきつけられていた。木組みの床が割れて、盛り上がってしまっている。


「へ……。じ、俊宇……?」


「……桃子、先走りするなって言った」


 意識を失った男の手を後ろ手に縛りあげ、俊宇は桃子を思い切り睨みつけた。


「……一人で乗り込むな。……危ない」


「無茶するなとは言われたけど、先走るなとは言われてないもーん」


「……」


 さらに強く睨みつけられると、やっと桃子は「すみませんでした」と素直に謝った。


「……本当に分かってる?」


「分かってるって。それより、ユーゴくんは?」


「……アイツは、一番難しい仕事してる」


 そう言って俊宇は、通話の切れたスマホを指さした。

お読みいただきありがとうございました!

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