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26.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

無事に買い物を終えたアリスたち。残るは「困っている人を助ける」だけなのだが……。

そして、別世界にいるルイスの元には、一本の電話がかかってきて……。

 灰色の雲が覆う空を、ルイスはボーッと眺めていた。


 子供たちが魔術界へ行ってしまってから、この広い屋敷は随分と静かになった。今までなら、レオとアリスが家の中をバタバタと走り回ったり、一階と二階で大声で会話したりするたび、「少しは静かにしろ!」と怒ってきた。


 しかし、それがなくなってから、怒るストレスから解放されたことよりも、静かで寂しいと感じることの方が多くなった。今だって、ルイスの膝には子供たちのアルバムが広げられている。


「——あなた、無自覚なだけで立派な親バカね」


 ルイスのデスクにコーヒーを置きながら、アンは肩をすくめた。


 彼は昔から「俺は親バカじゃない」なんて言っているが、こちらから見れば親バカ以外の何でもないのだ。アンが何度注意したって、彼は子供たちのお願いなら何でも聞いてしまうのだから。特に、アリスのお願いは。


「古いアルバムまで引っ張り出してきちゃって。それ、いつの?」


「……レオが四歳の時の」


 素直に答えたルイスは、アルバムに視線を落として写真を撫でた。そこには、雪で楽しそうに遊ぶ、幼い金髪の兄妹が映っていた。別世界に来て初めての冬に撮った写真だ。


「ああ、これね。雪でびしょびしょになるまで遊んで、次の日にアリーが熱を出したのよね。しかも、あなたと一緒に。子供たちと何時間も外で遊んで疲れ切ったせいで……」


「それは覚えてなくていい」


 頬を膨らませてから、ルイスはアルバムをめくった。


 写真たちに向けられる、ルイスの優しい瞳を見て、アンは再び肩をすくめた。


 不器用なこの人は、絶対に「寂しい」なんて言わないだろう。「元気に過ごしているか?」という一言だって。本当は、子どもたちが大事で、心配しているくせに。


 さっきの雪の日のエピソードだって、アリスがまだ外で遊びたいと言ったから、ルイスが一緒に外で遊んでやった結果だ。レオは二人より先に帰ってきてアンと一緒に暖を取っていたが、二人は日が暮れるまで外で遊び、結果的に風邪を引いた。


 ルイスは基本しっかりしているが、時々幼いことをする。もしかすると、彼なりに子供の意見を尊重した結果なのかもしれないけれど。


 そんな彼のデスクには、アルバムなど広げなくても子供たちの写真が飾ってある。三人の子供たちが、ソファで団子になって眠っている写真だ。


「そんなに寂しいのなら、電話でもしたらいいのに」


「別に寂しくなんて思ってない」


 小さなその言葉に、アンが今度はため息をついた。その時だった。


 ルイスのデスクに置かれていたスマホの画面が点き、震えだした。だが、残念なことに電話をかけて来たのは子供たちの誰でもなかった。


「——はい、ランフォードです」


『久しぶりだな、ルイスくん!』


「……お久しぶりです、お義父さん」


 電話の主は、アンの実父ガブリエル・ポポフだった。御年六十八歳、現役の近衛兵隊長だ。


『なんだ、なんだ! 元気がないな! 子供たちがいなくなって寂しいのか!』


「いえ、そんなことは……」


『それよりだな、ちょっと聞きたいことがあってな!』


「あ、はい……」


 困ったことに、ガブリエルは強引な人だった。ルイスはこの義父と話をするたび、アンは本当にこの人の娘なのかと本気で疑ってしまう。


 そんなアンは、こちらを見て必死に笑いをこらえているようだった。


『実は、王宮でちょっとした事件が起きているようだ。そのことは知っているか?』


「——事件、ですか? いえ、知りませんが」


『そうか。いや、私も今は陛下と一緒に出張中でな。王宮に残った部下から聞いた話なんだ。知らないならいいんだ。もし知っていたら、ラファエルたちに教えてもらおうと思ったんでな』


「そうでしたか。しかし、あの三人は今王宮にいるのですから、きっとそのことも知っているでしょう。私から注意をするまでもありませんよ」


『それもそうだな! いやぁ、忙しいのに悪かったな! それじゃあ、また!』


「はい。お疲れ様です」


 電話が終わると、アンは我慢していた分も大きな声で笑いだした。涙まで浮かべて。


「……おい」


「分かってる。私は正真正銘、ポポフの娘よ。でも、その人の娘ではないわ」


 涙をぬぐったアンは、ルイスに強気な笑みを見せた。


「いくら私の父が豪快な人でも、わざわざ関係のない人に城内の情報は知らせないし、公衆電話から連絡なんてしない。仕事には真っ直ぐな人よ、断言できる」


「知ってる。お前と意見が一致しているのなら、俺の勘も鈍ってない証拠になったな」


 小さく笑ったルイスは、アルバムを閉じた。


「どうやら、俺たちを平和ボケしたアホだと思っているマヌケがいるらしいな」

お読みいただきありがとうございました!

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