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25.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 アエラスの首都、キュクノスについての説明を受けながら、ついにアリスたちは最後の制服が買える仕立て屋に到着した……。

「えっと、それで飛行虫っていうのは?」


「あ、それは私も分からないなぁ。ねえ、飛行虫ってなに?」


 桃子も首をかしげると、俊宇が「……別世界で言う所の飛行機」と教えてくれた。


「……でっかい()が、人とか荷物を載せて飛んでる。……でも、虫だから寒い所苦手。……だから、ここじゃなくて下を飛んでる」


「ふーん。……うわっ!」


 丁度、そのタイミングでアリスの視界に大きな蛾が現れた。それはそれは、大きな蛾。羽の鱗粉(りんぷん)や複眼、腹のシワまでハッキリ見える。


「うぇ……」


 虫の苦手なアリスは思わず低い声を上げ、下を覗くのをやめた。


「えー……。人が乗っているようには見えなかったけど?」


「何言ってるんだよ、腹の中にいるに決まってるじゃんか」


 ユーゴはさも当たり前かのように言うが、アリスにはどうしても信じがたい事実だった。


 とりあえず。下へ行く時は、絶対に門を使おう。絶対にだ。


「そう言えば、(いつき)ってあまりこの世界のこと知らないよな」


 ユーゴは興味が移ったのか、視線をアリスから桃子へと移した。


「俊宇の方が詳しいような」


「ああ。だって私、今まではこっちの世界に来ても王宮の外には出たことないもん」


 桃子は笑いながら、顔の前で手を左右に振った。


「来ても滞在時間は三十分とか、長くて二時間とか。お父さんが仕事の関係でこっちに来るとき、一緒について来るくらい。で、お父さんの仕事が終わるのを待つ間、然兄たちに遊んでもらってたんだよ」


「へえ。だから、買い物の仕方とかは知らなくて、黄先輩たちとは面識があったんだ」


「そういうこと。特別買い物をすることもなかったし、何なら然兄たちがジュースとか準備してくれてたし。でも、両親の仕事を手伝うこともあったから、魔法の使い方とか、魔術のこととかは知ってるの」


「なるほどねぇ。俊宇は?」


 ユーゴが俊宇に視線を向けると、なぜか俊宇は小さく肩を震わせ、視線をふい、と逸らしてしまった。


「……俺、兄貴がこっちにいるから。……いるのはガイアだけど」


「あ、そっか。李家だもんな」


「……それより、制服」


 俊宇はそのまま歩き出し、ユーゴとアリスの二人は顔を見合わせて首をひねった。何だか分からないが、俊宇はあまりこの手の話をして欲しくないらしい。


 その場から十分ほど歩くと、目的地の仕立て屋が見えてきた。


 妖精が服を仕立てる、鉄の棒のようなもので出来た看板が目印だ。ショーウィンドウでは、それぞれタキシードとドレスを着たマネキンたちが優雅に踊っていた。


 中に入ると、かなりの人でにぎわっていた。裁縫道具たちが空を飛び、客たちのサイズを測ったり、布を止めていたり。店員たちはマネキンを前に客と話し合っている。


 店に入って来てすぐ、アリスたちの元にも店員がやってきた。中年の男性店員は、にこやかに「いらっしゃいませ」と客人たちの顔を見回した。


「本日のご用件は何でしょう?」


「新しく、制服を仕立てて欲しいんです」


 代表してユーゴが店員に答え、懐から手紙を出した。


 その手紙を見て、店員はハッとし、深々と頭を下げた。


「かしこまりました。それでは、こちらへどうぞ」


「ありがとうございます」


 手紙を元の場所にしまったユーゴを先頭に、アリスたちは店の奥へと案内された。こちらには、ほかに客はいないようだ。


「——改めまして、いらっしゃいませ。ご登城、おめでとうございます」


 深々とお辞儀をした店員は、飛んできたリストたちを手にアリスたちを見つめた。


「して、制服の形は皆さまスタンダードでよろしいでしょうか?」


「はい。……あ、スタンダードって、謁見の時とかに着るちゃんとしたヤツな?」


 ユーゴはアリスたちの方へ顔向け、説明してくれた。


「さっき斎が言ってたようなカスタムのない、ちゃんとしたヤツ。ほら、結婚式に参列するときとかに着る……」


「ああ、了解。理解した」桃子は笑顔を見せた。「まずはスタンダード。それから、自分に合った役職を見つけて制服もそれに合わせて変えていくってことね」


「そういうこと」


 桃子に笑顔を見せたユーゴは、再び店員と向かい合った。


「すみません。えっと、全員スタンダードで、支払いは別々で」


「かしこまりました。ネクタイとリボンがございますが、いかがいたしましょう」


「あ、それもあったな……。みんな、どう?」


 再び振り向いたユーゴのその問いに、桃子はリボン、アリスと俊宇はネクタイがいいと答えた。


「——だそうです。あ、俺もネクタイで」


「かしこまりました。リボンが一点、ネクタイが三点でございますね。では、皆様のサイズを測らせていただきます」


 店員のその言葉に、そこら中からメジャーだの、鉛筆だの、紙だのが飛んできた。メジャーがアリスたちを測ると、勝手に鉛筆が紙にその結果を書き込んでいく。


 最後に、手が描かれたパネルに触れれば、制服の注文も完了だ。


「お支払いのシステムがございますので、お名前をちょうだいすることはございません。制服は完成次第、お城にお届けさせていただきます」


 あっという間に最後の買い物も終わり、手ぶらのアリスたちは再び外に出た。


「——一瞬だったね」


 アリスがポツリと呟くと、隣で桃子が「そうだねぇ」と同意してくれた。


 とはいえ、これで買うものは全てだ。あとは、謎の「困っている人を助ける」だけ。


「どんな困りごとでもいいんだよね?」


 アリスが尋ねると、ユーゴは頷いた。しかし、彼も顔をしかめている。


「困ってる人を助けるって、毎年のお題になってるらしいんだ。でも、どういう人を助けたのかは、誰も知らない。俺も来る前にリーダーとクレアさんに聞いてみたけど、教えてもらえなかった。他の先輩方もそう」


「……難しい」


 俊宇がそう呟いた瞬間、桃子が「あ」と声を漏らした。


 彼女の視線の先にいたのは、道端でうずくまっている男の子だ。年は、アリスたちと同じくらいだろうか。


「みんなで、あの人を助けたらいいんじゃない?」


 桃子の提案に、アリスたちの顔がパッと輝いた。

お読みいただきありがとうございました!

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