24.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
レオたちは王宮内で起こった事件を調べていたが、ヒューの従者・クレアが持ってきてくれた史料を見てあることに気が付いた。同じころ、アリスたちのお使いはというと……。
「——教科書、ノート買った。薬草学用の鍋も買ったし、すり鉢も。あとは制服だけだね」
買い物途中の四人はカフェに入り、休憩していた。
会計は今の所、どれもスムーズに行えているし、分からないことはユーゴが教えてくれるので、ここまでたどり着くことができた。
レオたちから教えてもらっておらず、驚いたのは一つだけ。買ったものは全て家に送ってもらえることだ。おかげで、アリスたちは色々と買った後だというのに、ほぼ手ぶらで歩けている。
ヒューからもらった買い物リストに目を落とすアリスの言葉に、桃子が「やったー!」と両手を高く上げた。
「待ってましたー! こっちの世界って好きなように制服をカスタムできるから、すっごく楽しみにしてたんだ!」
「へえ、そうなの?」
確かに、アリスのイメージでも制服はあまりカスタマイズできないイメージだ。むしろ、少し着崩しただけで怒られる印象が強い。
「カスタムできるんだったら、昨日の内からちゃんと考えておけばよかった」
そう言って頬を膨らませたアリスに、「制服に何でもカスタムできるってわけじゃねぇよ」とユーゴがどこか自慢げに言った。
彼のその態度にどこかモヤッとしたものを感じつつも、アリスは「そうなの?」と返した。
「そうだよ。一応、制服を見ただけで何の役職の人か分かるようになってるんだ」
「役職って……。みんな、魔術師でしょ?」
「そうだけど、その中でも役割があるんだって」
首をかしげるアリスに、俊宇が「……俺、説明する」とユーゴの肩を叩いた。どうやら、彼は別世界のもので例えた方がアリスには伝わるのだと、すでに理解したらしい。
「……軍隊だと、陸軍とか海軍とか。……色々と種類ある」
「そうだね」
「……その中にも、歩兵隊とか、……さらに分けられてる」
「名前は何となく聞いたことあるような……」
軍のことには疎いアリスだが、そう言った名前は歴史の授業で聞いたことがある。
「……魔術師も同じ。……一つのチームが、一つの隊だと思えばいい」
「ほう?」
理解していなさそうなアリスに、俊宇は一瞬視線を外してから、再びアリスに視線を向けた。
「……すごく簡単に言う。……陸軍とか空軍とかで、制服が違う。……魔術師も同じ」
「つまり、チームの中での役割が違ってるの?」
アリスがさらに首をかしげると、桃子が「まあ、そんな感じ」とスコーンを頬張った。
「チームの中で前衛を務める然兄みたいな人は動きやすい格好だし、レオ先輩みたいに銃を扱う人は燕尾服っぽい形になってる。一番カスタムがしやすいのは中衛かな。パウラ先輩みたいに、魔術でみんなをサポートする人。自分の得意魔術に合わせて服を変える人が多いんだよ。マントの内側にたくさん魔法陣を仕込んでいたり、薬を隠していたり」
「要するに、その決められた枠の中でしかカスタムは出来ないんだ。色々と条件が付いていたり、変えられない部分があったりすることがほとんど」
締めくくったユーゴの言葉にうなずき、アリスもスコーンを手に取った。
やはり、制服というのは、どこも少し堅苦しい物らしい。別世界にいた時、アリスはそれが嫌で仕方がなかったから、少し期待したのだが……。
とはいえ、これが課題なのだから仕方あるまい。
休憩を終えたアリスたちは、早速仕立て屋に向かうことにした。
目的地の仕立て屋は、商店街を抜けた先にあるらしい。あちこちから客引きの声が聞こえてくる道を歩いていくうち、アリスはあることに気が付いた。
「『落下注意』?」
そう言えば、レオにも「落ちるなよ」なんてことを言われた。あれは、不器用な兄なりに冗談を言ってアリスの緊張をほぐそうとしてくれているのだと思っていた。
だが、何やら意味がありそうだ。あちこちに『落下注意』なんて書かれた看板が増えてきたのだから。それも、街から人が落ちるイラスト付きで。
さらに進んでいくと、何やら詳しい説明の書かれた看板まで登場してきた。
『この先、落下注意。下に降りるときは門か飛行虫を利用してください』
——分からないことが増えた。
「……ねえ、桃子。さっきから落下注意とか、飛行虫? とか書かれてる看板があるんだけど、何のことだかわかる?」
「ああ、キュクノスは空中都市だからね」
「く、空中都市!?」
アリスが素っ頓狂な声をあげると、談笑をしていたユーゴと俊宇もこの会話に混ざってきた。正確に言えば、「見せた方が早いかな?」という説明方法の相談で。
「見た方が早いから、ちょっと待って」
ユーゴは道の先を指さした。人込みの向こう側に、レンガで作られた少し背の高い塀が見える。
「でも、本当に危ないから気を付けろよ」
「……毎年、何人か落ちてる。……肝試ししようとした人」
俊宇の言葉に喉がキュッとなったが、アリスは黙ってうなずいた。
そして、ユーゴが指さしていた塀から向こうを見て、驚愕した。
塀の向こう側には、広い空しか広がっていなかった。少し視線を下に向けると、背の高い山々に囲まれた、大きな町がいくつも存在している。だが、その終わりは見えない。丁度下に見えるのは人が住んでいそうな大きな街のようだが、地平線の辺りには畑も見える。
「アリスちゃん、この世界の四元素って知ってる?」
「よ、四元素?」
塀の下を眺めながら、アリスは声を震わせながら桃子に答えた。
「水とか火とか、ってやつ?」
「そうそう! 四元素は水、火、土、空気のこと。ちなみに、この国に存在する人間の国は四つ。それぞれに四元素が振り分けられているんだよ。このアエラスは『空気』。昔、お父さんに教えてもらったんだけど、四つの国はそれぞれの元素そのものを表しているんだって」
「そ、そう……」
「……ランフォード、ここは崖とかじゃない。……首都はアエラス王国の国土上空に浮いてる」
アリスが考えていることなどお見通しなのか、俊宇が口元を隠しながら教えてくれた。
「……俺もびっくりしたから、気持ちわかる。……キュクノスは、魔力石の反発を使って浮いてる。……磁石の反発に似た力」
「えっと、じゃあこの国は磁石で出来てるってこと?」
「いや、磁石ではないよ」
ユーゴは腕を組んだ。
「魔力石っていう、魔力をため込んだ石の鉱脈がアエラスの国土に縦横無尽に走ってるんだ。このキュクノスっていう首都は、それ自体が大きな魔力石そのもの。鉱脈から出てる魔力と、キュクノスから出てる魔力は丁度この下あたりでぶつかり合ってる。その魔力同士のぶつかる力によって、このキュクノスは浮いているんだ」
「へ、へえ……」
ユーゴはかなり詳しく説明してくれたらしいが、アリスにはチンプンカンプンだ。磁石の反発する力と構造は同じように思えてならない。
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