ルミナとティリアの合流
私、冒険者ルミナは西へ西へと王都を離れながら、立ち寄った町でクエストをこなす。
今日は町の外の森でポイズントードの群れを倒した帰りだった。
「やっぱり私、モンスター相手ならちゃんと戦える。騎士より冒険者のほうが向いてたのかも……あっ!」
荒野を走る馬車を見つけた。
馬車は真っ黒なローブを着た人たちに囲まれていた。
5人くらいいる。
襲われているのだとすぐに分かった。
助けなきゃ!
私は走った。
「ぎゃああああああっ!!」
悲鳴を上げて護衛が一人倒れた。
「ぐはあああああっ!!」
また一人。
馬車から飛び出したのは薄紫の髪をした少女だった。
「ダメです大賢者様! 馬車を出てはいけません!」
「ワシが戦う! お前たちは逃げよ!!」
「大賢者様を殺させるわけにはいきません! くそっ! 馬がやられた!」
馬が倒れて、馬車も横転。
「大賢者が出たぞ! 魔法警戒!」
暗殺者が叫んで、すぐに防御結界が展開される。
そこへ、女の子が放った魔法が直撃。
ズドオオオオオオン!
魔法は結界に当たって消えた。
「むう。ワシの魔法を受け止めるとは、大神官はずいぶん大盤振る舞いで戦力を出したものじゃな」
暗殺者たちは結界の中からナイフを投げる。
キンキンキン! ……ドスッ!
全部を避けきれずに最後の護衛に刺さる。
「ぐうっ! ぎゃあああああっ!!」
ドブシュウウゥゥゥッ!
そこへ飛び込んだ暗殺者の剣が突き刺さった。
護衛が全員倒された。
女の子は魔法を使えるようだが、防御結界まで張られてはどうしようもない。
私はなんとか女の子の前に体を滑り込ませた。
「誰だっ!!」
暗殺者の一人が駆け込んできた私に気付いた。
私は馬車から女の子を背にかばう。
突き込まれる剣。
私は盾を合わせた。
【対抗盾】、発動。
ゴオッ!
暗殺者は吹っ飛んでスタン。尻もちをつく。
「こいつ、盾使いだ」
「慌てることはない。【対抗盾】はゴミスキルだ。そうそうまぐれ当たりするもんじゃねえ」
じりじりと距離を詰める暗殺者たち。
いっせいに襲いかかってくる。
ゴオッ! ゴッ! ゴオッ! ゴオオッ!
その全員を5連続の【対抗盾】でカウンターした。
暗殺者たちは全員スタンして倒れた。
防御結界のなくなった暗殺者たちに女の子の魔法が突き刺さる。
ドバアアアァァァッ!
ズドオオオオオッ!
ゴバアアアアァァッ!
暗殺者たちは全員死んだ。
「ごめんなさい。全力で走ったんだけど……」
護衛の人たちは全員殺されてしまっていた。
「いや、助けてもらったのはワシじゃ。何を謝ることがあろう。ワシもあと少し遅ければ同じ道を辿っていたじゃろう。お主のおかげで助かった。お主は命の恩人じゃ。ワシの名はティリア。お主は?」
「えと……ルミナって言います。ティリア、さん」
「ワシのことはさん、ではなくちゃん付けで呼んでくれ」
「えっ、でもなんか大賢者様とか呼ばれていたような気が……」
「ティリアちゃん、じゃ。よいな?」
にっこり笑うティリアちゃん。
笑顔なのに圧がすごい。
「じゃあえっと……ティリアちゃん。よろしく」
「うむ。よろしくの、ルミナ」
こんな目にあった直後だというのに、ティリアちゃんは全然動じていない。
大賢者とか呼ばれていただけあって、普通の女の子とは違うのかもしれない。
私はつい、護衛たちの死体に目が行ってしまった。
「彼らは国王が用意した兵士たちじゃ。ワシへのせめてもの礼とかなんとか。追放しておいて護衛を付けるとは、なんともあの国王らしい優柔不断さよ。どうやら彼らは何も知らされておらなかったようじゃな。みな勇敢な者たちじゃった」
「どういうこと?」
「国王は大神官のいいなりになってはいるようじゃが、ワシを殺すような真似ができるほどの度胸はない。つまり暗殺者を寄越したのは大神官の独断ということじゃ」
「大神官っ!?」
私は驚いた。
私が追放されたのは騎士団長の命だったが、あの時にも大神官が立ち会っていたからだ。
「ふむ、お主も何か知っているようじゃな?」
「それは……」
私はこれまでの経緯を語った。
「なるほど、騎士団を追放されて聖剣泥棒として追われていると。それは大変じゃな」
「ティリアちゃんほどじゃないと思うけど。まだ私のところへは暗殺者みたいな人たちは来ていないし」
ティリアちゃんは少しの間、考えるようなそぶりを見せた。
「その騎士団長とやらはお主の味方じゃな」
「えっ」
私に追放処分を下したのは騎士団長なんだけど。
「聖剣を勇者から盗んだとなれば、本来そんな処分で済むはずがなかろう。大神官に先んじて処分を下した騎士団長は、表向きはどうあれルミナを助けたいと思っておったはずじゃ。それで納得した勇者は相当なアホじゃな。まあ元々はルミナから強奪した聖剣、そこまで考えが回らなかったのじゃろう。その勇者たちは相当に騒ぎ立ててお主を糾弾したのじゃろ?」
「大神官の前のギースたちはたしかにすごい剣幕だったけど、そこまで話していないのにどうして分かったの?」
「簡単じゃ。ルミナから聖剣を奪った後ろめたさを隠すためじゃ。まったく、人から物を奪っておいて本来の持ち主のルミナを盗人だと糾弾するするとは、呆れた連中じゃな」
私はギースたちの心理まで考えていなかった。
ティリアちゃんは大賢者なんて呼ばれていただけあって頭がいいのだろうと思った。
ティリアちゃんは私を見つめた。
「とにかくワシらは遠くへ逃げなければいかん。ワシが西へと移動しておったのには理由がある」
「あっ、私も聞いたよ。西の最果て、魔の森に新しい国ができたとか」
私もそこを目指している途中だった。
「おお、ルミナも知っておったか。ビシャール王国やメルヴォーク王国との国境には暗殺者が先回りしておるやもしれぬ。が、魔の森にまで刺客が待ち伏せておるとは思えん。目指すは魔の森じゃ」
「うん! いっしょに行こうティリアちゃん」
目的は決まった。私たちは握手を交わした。
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