ダメでした
朝起きると奈々葉にガッチリホールドされていた。もし、俺に男の象徴がまだあったら大変な事になっていただろう。
奈々葉の豊満……とはいい難いが豊かな胸が俺の顔を埋めている。
「ん……んん、あ、おあようミーナ」
「息がし辛いから離してくれないか?」
いくら女になったからって性癖までが劇的に変わることは無かった。
今でも女の人が好きだし、こんな事をされたら興奮する。
奈々葉にばれないうちに離れないと失望されてしまう。
「あ、ごめんね! こんなに顔を赤くして……苦しい思いをさせちゃったね……」
苦しいと言うか美味しい思いをした。
「ミーナ、大丈夫?」
「そ、そんなうるうるした目で見なくても大丈夫だ」
今更だけど俺、奈々葉と一緒に寝てるんだよな……。なんか凄いテンション上がるな。
奈々葉と一緒に寝るなんて前世の小学生以来だ。
「おはようございます。ナナ様ミーナさん、朝食の準備ができましたよ」
「おはよう、カナムラ」
「……おはようございます」
カナムラの顔を見ると昨日の夜を思い出してしまう。
ドロドロになられて体の隅々までに入り込まれた上にコピーされた上に俺の姿がドロドロにされるというグロ映像を見せられた。
自然に睨んでしまう。
「朝から機嫌の悪そうな顔ですね。生理ですか?」
「アハハ、カナムラ様は冗談が得意なんですね。ぶっ飛ばしますよ?」
そもそも、俺はまだ生理来てない。
「貴方が私をぶっとばす前に私が貴方をぶっとばします」
「だったら、その前に私がぶっ飛ばします」
「いえ、私の方が先にぶっとばします」
「こらこら、二人とも喧嘩しないの!」
何でだろう。カナムラとは反りが合わない。
まぁ、もう媚びを売る作戦は半分失敗しているし、そこまで気にすることもないか。
「あ、ナナ様。ナナ様宛に手紙が来ていましたよ」
カナムラはポケットに入れていた手紙を奈々葉に渡す。
ん、気のせいか? 手紙にとんでもない名前が書いてあった気がするんだが。
いや、気のせいだよな。
「ん、タウからじゃない。何か依頼かしら?」
あー、聞こえない。確かに、魔王を倒した勇者が知り合いでもおかしくない。
だが、国の最高位の『国王』から直々に手紙が来るなんておかしいだろ。
俺の厄介センサーに「これは厄介な事になるぞ」と反応している。
「今回は……ん? 王城まで来い?」
「招待状ですね。あ、王城までの馬車代が入ってますね」
このアルファ国の現国王『タウ・アルファ』。
五代目国王の時以来の名君と名高い。だが、暴君でもあると言われている。
先代国王から王位を継いだ翌日には国の法律のいくつかを変え、先代国王が作った魔族の国と人類の国の間にある壁を破壊した。
そんな事をすれば、いつ魔族が攻め込んでくるかも分からない。
故に、タウ・アルファは魔族との戦争を望んでいるという噂が山に住んでいた俺の所まで来た。
「まぁ、タウが私を呼ぶなんて余程の事でもあったのかもしれないわね。朝食が終わったらすぐに行きましょうか」
「では、遠出の準備をしてきます」
俺はとある事情で国王とか貴族とか、地位の高い人間とは会いたくない。
ここはなんとか留守番する流れに……
「さて、そうと決まれば早く朝食を食べちゃいましょうか。ミーナ」
「えっ、あの、俺は留守番してたいなぁ。なんて……」
「……ダメ」
奈々葉は笑顔のまま拒否してくる。
「そ、そこを何とか」
「――ダメ」
「お、おねが」
「ミーナ……。絶対ダメ」
「……はい」
だ、ダメだぁ。目が笑ってない。顔は笑ってるのに目は笑ってないよ!
怖い。怖すぎる。これ、あと一回お願いしたら馬車にくくりつけてでも連れて行かれるやつだ。
「プフッ」
カナムラがドアの隙間から俺達のやり取りを見て笑っていた。
あ、あいつぅ……。
「それじゃ、ご飯食べましょうか」
「あぁ、分かった」
腹をくくるか。
あれは、四年くらい前の事だった。
いつものように家族で夕ご飯を食べている時だった。
「なぁ、前々から聞きたかったんだけど」
「ミーナ口に物を入れて喋らないの。あと、言葉遣い」
「んぐっ、あぁ、前から聞きたかったのですわけど」
「ブフッ!」
「ちょっと、あなた! 汚いじゃない!」
「す、すまん。ぶふっ、ミーナの女言葉が下手過ぎてついな」
お母さんが父さんの口から発射されたパンくずを掃除する。
……だから女言葉なんて使いたくないんだよ。
「なんで、お母さんと父さんはこんな山奥で暮らしているんだ? 一番近くの村まで行くのにも何時間かかかるだろ」
「あぁ、そんな事か。それはな、父さんと母さんは国から指名手配されているからだぞ」
「ブフッ!?」
「ちょっと、ミーナ! 今掃除したのに!」
「あ、別に悪いことをした訳じゃないぞ。なんか気づいたら指名手配されててな。いつの間にかこん
な山奥でしか暮らせなくなってたんだ」
「なんか気づいたら……」
「ガハハハッ! そう、なんか気づいたらだ!」
指名手配ってそんな軽いことじゃないだろ。しかも国からって、本当に何をしたんだよ。
だけど……お母さんも父さんも悪い人には見えない。
もしかしたら、なんかすごい秘密を知ってたりして、指名手配されたとかなのか?
それが四年前の事。
父さんとお母さんは国から指名手配されている。
その息子……娘だとバレたら捕まってしまうかもしれない。
復讐を果たすまでは捕まるわけにはいかない。
なんとか、なんとかバレない様にしないと。
「ナナ様、到着しました」
「ん、んん~、馬車ってやっぱり腰が痛くなるわね~」
グーっと背伸びをする奈々葉。まぁ、奴隷市場に連れて行かれた時に比べればだいぶ楽だったけどな。
だけど、やっぱり腰いてぇ。
「クルマが恋しいわ」
「クルマ……?」
「いや、なんでもないの。気にしないで」
俺は奈々葉の言葉に内心同意した。
「ナナハ様。お待ちしておりました」
「うわッ!? だ、誰!」
気配なく背後に女の人が立っていた。
なに、この世界の人って気配なく背後に立つのが普通なの!?
「私はカラット、王側近騎士団団長です」
「タウが私に出迎えなんて珍しいわね」
「はい、丁重に出迎える様言われましたので」
奈々葉の奴、国王とそんなに中がいいのか。
すげぇな。
「――ミーナ様を丁重に迎える様にと」
「……え? 俺?」
感想を頂いて嬉しすぎて、即書きました。ありがとうございます。




