21話
◆21話
ミサンガを拾った場所は、ここから少し離れているようだ。
「歩くとちょっとここからは遠いわよ」
とはっきりとした口調で女は言った。私は歩いてもかまわなかった。
しかし歩くよりはタクシーを使ったほうがラクだということで、その階段を降りきると大通りに出て私たちはタクシーを拾った。
女が案内してくれたのは、古い洋館だった。
白い塗装が少しはげてはいるものの、優雅な手すりを伴ったテラスを持つ立派なものだった。
「あそこに落ちていたの」
とそのテラスを指差して女は言った。
女にお礼をいい、帰りのタクシー代を多めに渡して帰した。
その洋館には、青々とした芝生に、白いベンチが置かれた庭があった。
私は迷わずその庭へ足を踏み入れた。
他人の家だというモラルはすっかり抜け落ちてしまっていた。
すると、庭で一斉になにかが動いた。
それは猫だった。20匹以上の猫の群れだった。
芝生やベンチの上、屋根やテラスで、思い思いの姿でくつろいで猫たちが、
見知らぬ私たちの侵入に一斉にこちらを向いたのだった。
「ひゃ〜、なんかコワイかも……」
トモミがあとずさりした。
1匹の三毛猫が、走りよってきて、私を見ると激しく鳴いた。
歓迎しているというより追い返すような激しい鳴きかただった。
こちらを向いていた猫たちが反対方向を一斉に向いた。
「……どなた?」
奥から出てきたのは
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