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20話

◆20話


「今つきあっている彼からもらったの」


彼女は嬉しそうに目を細めて言った。


……うそ。


頭の中で、嫌な予感が、線としてつながりそうな恐怖に私は震えそうになる。


私がケンジにあげたスペイン土産。日本には、同じものはたぶん売っていない。


それと同じものを彼氏にプレゼントされたという女。


怖い。


……だけど、もっと追求せざるを得ないでいる。


決定的なことを聞くまで私は止まらない。これは怖いもの見たさ、のようなものなのだろうか……。


「彼ってカメラマンでしょ……?」


訊きながら、私はそれでも一縷の望みにかけていた。違う、と言ってほしい。お願い。


「あら、なんで分かるの?」


私は頭で何かを殴られたようなショックをかろうじて表に出さずにすんだ。


トモミがハラハラしたようすでこちらを伺っているのがわかる。


だけど、人は案外強いものだ……私はショックをおくびにも出さず『ケンジの福岡の単なる知り合い』を演じて、彼女から彼の様子を探っている。


女は一見、古風な日本美人に見えたが、話し出してみれば、今時の普通の美人だった。


ミサンガにあわせた色にネイルアートされている爪、それに彩られた指で黒髪をさらりとかきあげる仕草が、洗練されている。


つややかな唇は光沢のある口紅の上に、グロスを丹念に塗ったのだろう。


ナチュラルな色ながら色っぽい。


女の話によると、どうやら、彼は私のことなどすっかり忘れてしまって、この綺麗な女と暮らしているらしい。


哀しみを通り越して、私の中に、真夏の積乱雲のように強く急激に湧きあがってくる感情があった。


こめかみが痛くなるような怒り。




→終章2へ続く


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