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3. 皇帝との謁見

ちょっと長めです(当社比)

「我が国の輝く太陽、そして月であらせられる、皇帝陛下、そして皇后陛下にエルミス公爵が次男、」


「あー、もうそこまでで良い」


 この国で一人しか座ることが許されない、豪華な玉座に腰掛け、頬杖をつき、飽きたように手を振ってみせるそのお人は、皇帝である。


 隣には、たおやかに微笑む妃、皇后が座っていた。


「ケヴィンは、真面目ですもの。貴方、最後まで聞いてあげても良いではありませんか?」


 ほほ、と笑った口元を、扇で隠し、優雅に微笑む様はまさに皇后らしい威厳をたたえている。

 皇帝は、ふむそうかの? と呟くと、まあ良いだろうと立ち上がった。


 そして、彼は、挨拶の姿勢から正していたケヴィンと、その隣に立つ自身の愛娘に近づいた。


「アリシア、ケヴィン。そなたらがパートナーになりたいとの事だったな?」

「ええ、そうですわ、お父様」


 ここは謁見室ではあるが、周りには重鎮しかおらず、父と呼んでも黙認してくれる人しかいない。

 母も、上品に微笑んだままだ。


「うむ、許可し・・・」


「お待ちになって」


 皇帝が鷹揚に許可を出そうとしていた矢先、皇后が制止した。

 彼女も、そっと立ち上がり、アリシア達のもとへ近づいてくる。やがて、あと数歩で二人の元へ辿り着くだろうというところで、足を止めた。


 柔らかく微笑み、首を傾げる。


「二人とも、あまりにも一緒に行動しすぎではないかしら? もちろん、側近として、ケヴィンがそばにいてくれるのは安心よ」


 けれど、と微笑みを絶やさぬまま、彼女は続けた。


「それは、アリシアに婚約者が出来てからも、その関係を続けるつもり?」


 その言葉に、二人ははっとした。

 皇帝が難しい顔をしているけれど、多分あれは自分の判断ミスを悔やんでいるだけだとアリシアは思い、無視した。


「・・・けれど、わたくしは婚約者のことについて、夜会で考えたくないんです。お母様もご存知でしょう?」


 アリシアの反論に、皇后はやはり笑みを絶やさぬまま、首をこてり、と傾げた。


「それはいわゆる我儘ではないかしら? いつまでも、婚約者を探さないのは許されないわ。早く降嫁先を見つけなければ、皇室としても、もう嫁いでいるはずだった皇女を養わざるを得なくなるわ。貴女はそのことを望んでいるのかしら?」


「・・・いえ。望んでおりません」


 早いところ、嫁ぐ先を見つけなさい、と母は言っているのであった。

 それは事実だけれど、正論は鋭く、重い。


 そっと俯くと、皇后がアリシアを慰めるように言った。


「辛いわね。考えるのは、嫌よね。でも、それが皇族よ。分かってくれるかしら」

「・・・はい、お母様」


 と、そのとき、周りで静かに様子を見守ってくれていた重鎮の一人、スワード公爵が声を上げた。


「発言を許可していただけませんか」

「許可します」

「ありがとうございます、皇后陛下。確かに、皇后陛下のおっしゃる通り、アリシア殿下はそろそろ婚約者を決めねばなりません。でしたら、ケヴィン殿を婚約者候補に据え置いたらどうですか」


 彼の言葉に思わず、アリシアは息をのむ。隣に立つケヴィンを窺うと、無表情でスワード公爵を見つめていた。

 その瞳には、何の感情も浮かんでいない。


 アリシアはそれを確認すると、胸の中がさああっと冷えていくような気分になった。


「それは、・・・」


 さしもの皇后も困ったように皇帝を見た。


 どうしたのだろうか、さっさと返事をすれば良いはずなのに。アリシアが首を傾げると同時に、他の声がした。


「お待ちください! 我が家にも、優秀な弟がおります。ぜひ、候補にしてほしい。そうでないとフェアじゃありませんよね?」

「我が家もです! 今は騎士として働いておりますが、必ずや殿下に相応しい者に引き上げます」

「我が家にもおりますよ、長男です。喜んで、皇女殿下をお迎えいたします」


 声をあげたのは、それぞれ高位貴族ばかりだ。彼らの声に、皇帝が困ったように玉座に戻り、腰掛けた。


「陛下、ご決断を。殿下の婚約者候補を募りますか? であれば、我が家からはケヴィン殿を推薦いたしますよ」

「スワード公爵の後押しがあればありがたいですが、仮にもケヴィンは我が家の息子。私が推薦人の第一人者になります」


 スワード公爵の堂々とした宣言に、ルミシエ公爵が慌てたように口を挟む。


 混沌としてきたこの場をどうにか収めようと、皇帝が口を開きかけるが、それを制したのは柔和で美しい笑みを浮かべた皇后だった。


「静かになさい、二人とも。スワード公爵とルミシエ公爵の希望は分かりましたから」


 静かだけれど、断固たる彼女の制する意図をしっかりと汲んだ、二人の公爵は押し黙った。


「けれど。確かに、あなたたちの言うとおり、アリシアも婚約者をそろそろ決めなければなりません。アリシア、それは分かっていますね?」

「・・・はい。分かっておりますわ」

「よろしい」


 アリシアの返答に満足げに頷いた皇后は、皇帝を見遣る。

 そろそろ、取り仕切ってくれの合図だろう。


 皇帝は、気を取り直したかのように咳払いをすると、厳かに周りを見回した。


「みなの意見はよく分かった。皇室として今後、迅速に考えてゆくつもりだ。そのときには、そなたたちの意見もまた、求めるつもりでいる。それから、アリシアのパートナーの件だが・・・」


 そこで言葉をきり、そっと視線を彷徨わせる皇帝。どうすれば良いのか、改めて考え直しているようだ。

 皇后も、悩ましげに扇を開いた。


「うむ・・・悩ましいところだが、やはりケヴィンでは・・・」

「陛下。よろしいでしょうか」


 アリシアは、隣から上がった声に驚き、視線をやった。ケヴィンは、真剣な表情で皇帝と皇后を見つめている。


「どうしたのだ?」

「はい、今回のパーティまでは、私がやらせていただけませんでしょうか? アリシア殿下の婚約者候補にも、私は立候補させていただきたいと考えておりますが、誰になるかは定かではありません。しかし、パーティまでに婚約者が決定するとは思えません」


 ケヴィンの言い分は尤もだ。アリシアも頷き、皇帝を見つめた。

 翡翠の瞳はじっと、自身の父を見定めるように眺めている。

 そのことに、身震いした皇帝は今度こそ、皇后が口を出す前に許可を出すことに決めた。


「うむ、良かろう」


 こうして、二人のパーティーへのパートナー参加が決定した。

読んでいただき、本当にありがとうございます。

皆さまへ、感謝しかございません...。

稚拙な文章ではありますが、これからもよろしくお願いします(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

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