149.カラーリングゲレロ
「はあああああ!やっと帰って来たぜ!」
見慣れたコーバスの門の前に立ち。ようやく帰って来た事を実感する。桜が散るまで毎日ドンチャン騒ぎだったから、流石に飲みすぎた。帰るまでは酒飲まねえと決めて真っ直ぐ帰ってきたけど、それでも王都に向かってから一月以上は経っている。クロ達と別れてから10日以上だな。ようやく帰ってきたぜ。
「おーい!カナ!久しぶりー!お前今日遅番か?」
街に入り組合への道すがら、カナを見つけたので声をかけると、俺に気付いたカナは顔を顰めた。
「うわー。ベイルさん戻ってきちゃったかー」
おお?何だカナ?俺が戻ってきちゃダメだったか?・・・あれ?確かミーカにも前にこんなこと言われたような・・・・。いや、久しぶりだから素直になれねえだけだな。
「何言ってんだ!カナ!照れんな!照れんな!コーバスのキング!ベイル様がようやく帰って来たんだ!喜べ!」
「うーん。処刑人来てくれないかなあ」
おう?誰か死んでほしい組合員でもいるのか?多分アウグ達ベテラン連中だな。あいつら都市伝説の処刑人でも返り討ちにしそうだから、ティッチかシリトラ、組合長辺りを手枷で繋いでおいた方がよっぽど効果的だぜ。
「あ!リリーせんぱーい!」
唐突にカナが大声をあげて大きく手を振ると、前を歩く、後ろ姿だけでもくっそ美人な女がゆっくりとこっちを振り返った。
「カナ、おはようございます。けどあんまり大声で呼ばないで・・・・」
「よお!リリー。久しぶりだな。帰って来たぜ!」
俺を見て固まったリリーに俺は爽やかに挨拶をする。やっぱりこれからはクイトみたい爽やか系?でいかねえとな。
「帰ってきましたか。・・・・・これから騒がしくなりますね」
リリーは、物語序盤で訳知り顔で語る人にでもなったのかな?
「何言ってんだリリー!俺がいなくてもコーバスの馬鹿どもは変わらねえだろ?」
うん、あいつらは何も変わらねえ。俺がいてもいなくても好き勝手やってるはずだ。
「うーん。確かにみんな好き勝手やってますけど、『4馬鹿』がいるいないじゃ全然違うんですよ。ベイルさん以外の4馬鹿は馬鹿さ加減が『×2』って感じですけど、ベイルさんだけは何倍になるか分からないって言えば分かります?」
「分かる訳ねえだろ!取り合えず俺が馬鹿にされているって事か。いいぜ、その評価ひっくり返してやる」
そう言って両手に花状態で組合に向かう。美女二人と歩いていると、周りから羨望の眼差しが凄くて、いい気分だが、すぐに組合に到着した。
「おはようございます」
「おはようございまーす。うわー。今日もやってますねー」
「よーっす!お前ら・・・・・」
リリーもカナも普通に挨拶して組合に入ったから、俺もいつも通り入ったんだけど、完全に忘れてた。コーバスの連中は、俺の想像を簡単に超えてくる馬鹿しかいねえって事を。
もうね、何でこれでリリー達は組合に普通に入っていけるんだ?組合の壁が黒と黄と赤と緑の布で覆われているんだぜ。明らかにこの時点でおかしいだろ。更に組合の真ん中に何か祭壇みたいなもんが出来てんだ。そしてその祭壇も4色の布で覆われていて、その上に上手そうな料理や酒、花や野菜が並べられている。
そんで一番おかしいのがその中央に鎮座している人物。上半身裸でそのハゲ頭から体まで4色にカラーリングされてる。
こいつは、カラーリングゲレロだ!
何か得意気に『カラーリングゲレロだ!』なんて言ったけど、よく考えれば意味分かんねえよ。
何だよこれ・・・俺の知っているコーバスどこ行った?クロ達と遊んで帰ってくると何で毎回コーバスがバグるんだ?知らない間にクロ達に呪いか何かかけられてんのかな?
「ええー。な、何だコレ?」
思わず声が漏れちまったのは失敗だった。俺の声が聞えたのか、顔を赤と黒で塗ったショータン?がこっちを振り返り、俺を見つけると目を大きくする。
「ベイルさんだ!みんな!ベイルさんが戻ってきた!」
「ベイルだと!」
「本当だ!ベイルてめえ!マジでいい加減にしろよ!」
「王都に行っても俺達に迷惑かけんのやめろ!」
「これでようやく2人だ!残り3人はどうした!」
ショータンの叫びで俺に気付いた連中が、怒鳴りながら詰め寄ってくる。何故か全員顔にペイントしてんだけど、流行ってんの?アウグは4色だけど、ペコーは1色だから、塗ってる数は適当か?
っていうか怖えよ。俺に意味分かんねえ因縁つけてくるし、マジでこいつら何がしてえんだ?
「ベイル、取り合えず上の服を脱げ!」
「何でだよ!」
いきなりヒビットが訳分かんねえ事言ってくる。まあ、いつもの事だ。聞き流せばいいや。
「エール一杯」
・・・・
「ほら!これでいいのか?」
俺は友達の頼みなら、素直に聞く男だ。親友ヒビット君の指示に従い、服を脱いで上半身裸になる。
「よし。みんなベイルを4色に塗れ!」
ハイーシャの指示で、今度は何人かが俺の体に筆で色を塗りたくる。何でこんなもん準備してるんだ?しかも筆がくすぐったいんだ。
「くすぐってえからやめろ!」
「おい!動くなベイル!」
「暴れんじゃねえよ!」
「エール追加してやるから」
・・・・・チッ!我慢してやるか。
しばらく我慢したら完成したのが、ゲレロと同じで4色に塗られたカラーリングベイル様だ。
「よし、ベイル!ゲレロの隣に座れ!」
もう、ここまでくれば、逆に何がしたいのか気になるから、素直にゲレロの隣に座る。俺とゲレロが座っても祭壇にはまだスペースがあるのは、さっき残りの3人とか言ってたのが関係しそうだ。王都がどうのこうの言ってたから、ここにカラーリングされたトレオンとモレリア、シリトラも並びそうだ。
そうしてゲレロの隣に座ると、アウグ達は床に座り、頭を上下させながら『許してー。ごめんねー』とか謡い始める。何これ?凄い怖いんだけど?こいつらヘンな宗教にでもハマったのか?
「なあ、ゲレロ。こいつら一体どうしたんだ?頭が更に悪くなってるぞ。多分もうこれ手遅れだ」
隣で大人しく座っているゲレロに聞いた所、俺達がいない間に、王都から色をどうのこうの言う、お絵描き好きの連中が大勢押し寄せてきたそうだ。そいつらは団長やリーダー、幹部たちの仇!とか、居場所を教えろ!とか意味分かんねえ事言って、外で襲い掛かってきた。
コーバスの2級以下はそんな事してないって誤解解いたり、逃げ回ってたんだけど、3級の血の気の多い奴らは、意味分からなくても、当然迎え撃った。中にはそこそこ強い4級もいたらしいが、3級ベテラン勢が姑息な罠に嵌めて倒したりしたそうだ。
そうして連日現れる王都の連中を返り討ちしまくって、ようやく落ち着いてきた頃から、まるで呪われたかのように、たて続けに悪い事ばかり起き始めた。
「悪い事?」
「ああ。おい!お前らに起こった不幸について、ベイルに教えてやれ」
ゲレロの言葉に連中は、おかしな行動を止めて口々に不幸について話し出した。
「俺は2万入った財布落とした」
「3日連続財布拾ったけど全部中身が空だったんだ!マジでふざけんなよ!」
「ゴブ如きに攻撃当てられちまった」
「依頼失敗がここ最近連続しやがる」
「最近キレが悪い」
「お気に入りの姉ちゃんが領都に移籍した!」
「『快楽亭』の予約がとれねえ!」
「狙ってた子が結婚して田舎に帰っていった」
「最近股間周りがかぶれて、くっそ痒い」
「ションベンに粘りが出てきて、気持ち悪いんだよ」
・・・・・
そこまで大した事なくねえ?・・・いや、最後2人はヤベエな。多分病気だろ。医者に行ってこい。
取り合えず、これは何かおかしいと思ったこいつらは、トートーに助けを求めた。そしたら『色の呪い』って言われたそうだ。で、それを聞いてみんなで色々話あった結果がこれだ。
多分王都から来た連中の呪いだろうから、こうやって供養しようってなったんだって。
顔に色塗っているのは、それぞれ殺した奴らが言ってた色を塗っているそうだ。アウグは4色塗っているから『赤』、『黒』、『黄』、『緑』の連中を全部殺したんだな。ペコーは赤1色だから『赤』しか相手しなかったって事か。
そして俺とゲレロがカラーリングされて祭壇に祭られているのは、そいつらへの捧げものなんだとよ。王都から人が押し寄せてきたのは、どうせお前らが王都で騒ぎ起こしたのが元凶だろうって決めつけられてた。いや、確かに喧嘩したけどよ。決めつけは良くねえよ。
・・・・・
そんで、これ供養になってんのか?どう見ても悪ふざけにしか見えねえ。殺された連中もこれ見たら怒るだろ。
「ゲレロは何で黙って座ってんだ?」
「こいつらぶん殴っても連日娼館に押し寄せてきて、おちおち寝てられねえんだよ。取り合えず5人揃うまでは我慢しろって言われてるから、そこまでは我慢する事にしたんだ。エール奢ってくれるしな」
エール如きで我慢するとは、なんて安いハゲなんだ。
うん?ちょっと待て。5人揃うまで?連日?もしかしてトレオン達が戻ってくるまで毎日カラーリングされるの?そもそもモレリアとシリトラがカラーリング許可するとは思えねえ。それに毎日こんな馬鹿騒ぎやって誰も止めねえのか?
シリトラ・・・はいねえな。ティッチ・・・はもう関係ねえか。
「組合長はどうした?あの人はこのバカ騒ぎ止めさせるだろ?」
「組合長は王都に呼ばれていねえよ」
いねえのかよ。使えねえなウチのオーガは。そもそも王都に呼び出されるって今度は何したんだよ。問題ばっかり起こす組合長は、もうクビにしたらいいんじゃねえか?
そうなると、残りでこいつらを止められそうな奴は・・・・。
「ミーカは?」
「こいつらを連日怒鳴りつけていたが、止める気配の無いこいつらに、ついに限界がきたのか、今は倒れて寝込んでいるって聞いたぞ」
うーん。ミーカじゃまだまだ、こいつらを止められねえか。
リリー達は・・・鍛えられているから、俺達のバカ騒ぎ如き気にせず黙々と手を動かしている。注意する気はなさそうだ。そう考えると組合長はちょっと騒いだぐらいで、すぐキレるから全然鍛え方が足りねえな。
さーて、どうすっかなあ。今日ぐらいはいいけど、流石に連日は嫌だぞ。
そんな事を考えていたら、組合の扉が開いた。
扉を開けたのは俺が求めていた人物。眼の前の馬鹿どものよく分かんねえ謎の儀式を止められる人物。『ちょっと賢い』のリーダーで、コーバス組合の肝っ玉母ちゃんこと、シリトラだ!
あと、ついでにモレリアも。




