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138.野盗の巣?

 扉の手前で立ち止まりカルガーと小声で作戦を立てる。そうして作戦が決まったので、カルガーを先頭に奥に進み、開けた場所の手前で一度足を止める。そしてカルガーが一度こちらを向いたので、頷いて、こっちも準備できている事を示す。


 俺が頷いたのを確認したカルガーは前を向いて、盾を構える。そしてヒョイと槍だけを広場に突き入れると、槍に向かって左右からナイフが飛んできて、上から剣を下に向けた奴が降ってきた。


 ビンゴ!


 やっぱり扉壊す時にでけえ音したから、待ち構えてやがった。こいつらとっとと攻めてくればいいのに、俺達が作戦立てている間ずっと身を潜めていたみたいだ。今ので最低3匹は確定した。ほら!行け!カルガー。


 作戦通り、降りてきた奴にカルガーが盾を構えて体当たりして吹っ飛ばす。その後ろに俺が続き穴から飛び出したところで後ろを振り返る。


全部で5匹か。一匹は倒したから残り4匹。


「どうするカルガー?俺が全部相手してやろうか?」

「早い者勝ちでいいっすよ」

「ハハハハハ、言うようになったじゃねえか!ゲレロに注意されたみたいにカウンター狙いだと全部俺が貰っちまうぜ」


 笑いながら、斬りかかってきた野盗の攻撃を躱してこん棒で殴りつけるが、もう一匹が割って入ってきて盾で受ける。


 おいおい、この動き野盗じゃねえぞ。しかも兵士みたいに訓練された動きでもねえ。それなのに妙に戦い慣れているこの動き・・・・こいつら組合員か!しかも結構強えぞ!


「カルガー!!」

「分かってるっす!こいつらベテラン組合員っす!」


 分かってるならいい。これなら野盗だと思って、油断してサクッっとやられましたって事にはならねえだろう。

 

「てめえら何級だ?そこそこ強いじゃねえか」

「「・・・・・」」


 答えねえのは暗殺者気取りか。じゃあ、会話は無しだ。


「今から命乞いしても遅えぞ」


 そう叫びながら、今度はこん棒を両手で持って最初の奴に殴りかかるが、再び盾持ちがカバーに入ってくる。


「ハハハハハ、今度は受け止められるか!」


 今度はこん棒両手持ちだ。カバーに来るのも読んでいたので、フルスイングで盾を殴りつけると、盾持ちは大きくぶっ飛ばされた。


「ぐああ!」

「こ、こいつ!何て馬鹿力・・・・カハゥ」


 盾持ちが吹っ飛ばれたのを見て、敵の注意が盾持ちに行った隙に、絶無投を顔に向けて投げる。運が良い事に喉に突き刺さった。ラッキー!

 絶無投の紐を引っ張って回収すると、喉から血が溢れ出した敵は喉を押さえて蹲る。こいつはほっとけば勝手に死ぬだろう。って事で盾持ちに集中する。


「き、貴様!ま、待て!!」

「ハハハ、だから色々遅いんだよ」


 盾持ちが仲間に注意向けた隙に俺は距離を詰めていた。それに気付くのも遅えが、会話するタイミングも遅え。既に殺し合いの時間だ!話し合う時間は終わってるぜ!


 両手でこん棒を持って、ワザとらしく大きく振りかぶると、さっきの事が頭に残っているのか盾持ちは体を小さくして亀のように固まる。


 フェイントだよ!


 固まるのを確認したら、回り込んで盾持ちの頭を殴りつけて終わりだ。こいつも俺達がいきなり来たから防具装備する時間も無かったんだろう。奥に転がっている兜や鎧を装備していたらまた違った結果に・・・・ならねえな。思いっきり兜ぶん殴って、脳震盪おこした所に、鎧の隙間から喉突き刺して終わりだ。


 こいつら連携とれて強かったけど対人は全然下手くそだ。魔物とばっかり戦ってたんだろうな。


 さーて、カルガーは?っと・・・ひでえ、カルガー容赦ねえええ。


 ノルマ達成した俺は、最初の体当たりで気絶している敵にトドメ指してから、カルガーの相手を奪おうと見れば、カルガーが二匹目の口に槍を突き刺す所だった。

 一匹目は腹に穴が空いて地面に倒れている。カルガーは思ったより倒すの早かったな。ゲレロに注意される前なら、まだ二匹相手にチマチマカウンター狙いだっただろう。


「ベイルさんに負けたっす」

「そんなに落ち込むなって。俺の想像より倒すの大分早いからかなり成長してるぞ」

「最初の攻撃にカウンター合わせられたっす。凄いムカつくっす」

「その割には怪我してねえぞ?」

「鎧に掠っただけっす。でもムカつくっす!」


 だからってトドメを顔面串刺しはねえだろ。流石にアレはかわいそうだ。


「そんな怒んなって!今から楽しいお宝探しだぜ。言っておくけど、取り分は半々だからな!」

「まあ、良いっすけど」

 

 よっしゃあ!言質とったあ!ここを見つけたのはタロウだから、カルガーが山分けごねるかもと思ったけど、これで安心だ。さーて、お宝、お宝。



 ・・・・・・おうふ。ここ外れだ。


 何でかって?少し奥に行けば岩に打ち付けられた鎖に拘束された奴が5人ばかし見つかったからだ。若い男女に子供達・・・どう見てもこいつら犯罪者じゃねえ、一般人だ。こんな奴らが、こんな状況になっているのは故郷でよく見た。ここは多分人攫いのアジトだ。敵対貴族同士の権力争いで、こういうアジトを故郷じゃ何度も叩き潰したから分かる。


 要するにこの拘束されている奴らがお宝だ。売り先を持たねえ俺にとっちゃ何の価値もねえ。


「くそが!外れじゃねえか!カルガー帰るぞ!」 

「・・・・・」


「おい!カルガーそこで死んでる連中から金目の物もらったら帰るぞ!・・・おい!聞いてるのか!」


 何も言わねえカルガーの頭を兜の上からこん棒でこづく。何をそんなに呆けてるんだ?


「べ、ベイルさん。こ、これは不味いっす。とんでもなく不味いです。私達とんでもないもの見つけたかもしれません」


 ん?いつもの『うっス』が無くなった?カルガー、テンパってる?


「別にただの人攫いのアジトだろ?珍しくもねえ」


 むしろ、ここで介入すると面倒くさくなる奴だ。だからここは安定のスルーが最良手だ!


「人攫いってのが大問題です。奴隷商じゃないんですよ!ここは珍しいというよりこの国に在ってはならない場所なんです!」


 えーっと。よく分からないからカルガーに教えて貰ったら、奴隷商と人攫いは俺の故郷じゃ一緒くたにされてたが、この国じゃ全く違うらしい。奴隷商はキチンと国から許可貰っている商人で、奴隷も何かしら奴隷落ちした理由があり、しっかり管理されているそうだ。


 で、人攫いは当然国から許可貰ってねえし、商品は奴隷じゃなくて一般人だから国では捌けない。そうなると売り先は他国って事になる。けど、この国じゃ奴隷だろうが他国への人身売買は極刑ってぐらい厳しい法律があるらしい。そもそも奴隷は何かしらの制約で国の外には出れねえって話だ。だから他国へ売るのは攫ってきた罪のない一般人だって噂があるそうだが、それが本当だってたった今証明されちまったって事か。


「いや、待て。落ち着けカルガー。もしかしたらこいつら奴隷かも知れねえだろ?」

「子供は奴隷に出来ないっす!それに奴隷は制約で逃げる事も出来ないっす。なのにこの状態!どう考えても奴隷商のアジトじゃないっす!」


 ああ、うん。そうだね。だって捕まっている奴ら俺らを見ても反応ねえんだもん。普通は『助けて』とか言うはずなのに、全員虚ろな目で口からよだれを垂らしてる。何かの薬物でこんな状態にされているのは明らかだ。奴隷ならカルガーの言った通り、制約があって逃げられないから、こんな事する必要ないもんね。





「まずはこのアジトもうちょい漁ってみようぜ。この状況でもアウトだろうけど、誰がこんな事やっているか分かるかも知れねえだろ?」

「そうっすね」



って事でアジトを漁ってみたんだが、特に何も見つからなかった。入口の件があるから、結構念入りに隠し扉とか無いか調べたんだけど、それっぽいのは見つからなかった。


「こいつら員証も持ってねえぞ。用意周到だな」


 部屋から何も出てこなかったから、倒した連中を漁ってみたんだが、金ぐらいしか持ってなかった。絶対組合員だと思ったけど、員証も持ってねえ。


「見た事無い顔っすから、多分王都の組合員じゃないっすね。まあ、こんな事で簡単に分かるようじゃ人攫いなんてしないっすね。自分らで出来る事はこれぐらいっす、後は報告して兵士に任せるっす」



「それにしても何でこんな所にアジトがあるんだ?どうせならもっと国境近くに作った方が良いだろ」

「もし見つかればその領主にあらぬ疑い掛けられるってのもあって、国境の領地は人攫いをかなり警戒しているっす。だから行方不明者の情報があれば、街中大騒ぎで徹底的に調べるって話っす。逆に王都だと一人二人いなくなってもそこまで騒ぎにならないっす。スラムなんか特にっすね。そして多分ここは王都から攫ってきた人たちの一時保管場所みたいなものだと思うっす」


 カルガーにそう言われて気付いたけど、この捕まっている連中身なりがあんまり宜しくねえ。多分スラムの連中だ。


「それにここは王都の管轄じゃないってさっき言ったっすけど、正確にはどこの管轄かはっきりしてない微妙な土地っす」


 まあ、森の奥の崖下だもんな。だからこそ、ここをアジトに選んだって事か。悪い事する奴ってのは何でこう悪知恵ばっかり働くかねえ。


・・・・・


 うん?ちょっと待て。カルガーさっきから『管轄』って言ってるのは何でだ?組合員なら『縄張り』だろ?


・・・・・・


「違うっす。これ多分貴族絡んでるっす。こんな所にこれだけのアジトを極秘に作れるって事は多分上級貴族が絡んでいるっすね」

「うわあああああああああ!!!!!!」

「おお!びっくりしたっす!いきなりどうしたっすか?」


 ヤバい、ヤバい、ヤバい。俺は故郷逃げだして今まで、貴族に喧嘩売らずにひっそり穏やかに暮らしてきたんだ。今更貴族とか洒落にならねえ。しかもアジトの奴殺しちまった。これどう見ても喧嘩売ってるよな?ヤバい、どうする?この国から逃げるか?・・・・いやまだだ!今ならまだどうにか言い逃れできるかもしれねえ!





「うわああ!カルガーお前何で全員殺したんだよー。俺はやめようって言ったぞー」

「さっき宝に凄い目が眩んでたっすよね?むしろ自分の方が止めたっす。っていうかその小芝居なんすか?」


・・・・・・・


 うーん。このパターンじゃ駄目だ。カルガーが乗ってこねえ。パターンBに変更だ。


「俺はただの通りすがりの一般人」

「組合員っすよね?」

「散歩してたら穴を見つけたので、潜ってみたら、大量殺人の現場に遭遇してしまった」

「ベイルさんが3人殺したっす」


 うるせえな。ちょっと黙ってろ。


「そして今、私は5人も殺したイカれた女と対峙している」

「何でシレっと自分が全員殺した事にしてるっすか?」

「何でこんな事した。俺はただの目撃者だけど、こういう事したら駄目だろ」


・・・・・


「うーん。もしかしてベイルさん全部自分に押し付けようとしているっすか?」


 よーし、ようやく分かってくれたか。首を上下に振って肯定してやる。こういうのが忖度って奴だ。部下が勝手にやりましたー。


「多分それ無理っすよ。だって自分とタロウと一緒にいるの街の人に見られてたじゃないっすか」


 おうふ、そうだった。俺がカルガー達と一緒に行動しているのは街の連中に見られてるんだった。


「こうなりゃ、目撃者は殺すか」

「それすると、ここ以上に大量殺人が起こるんっすけど・・・あと、王都でそんな事したら騎士団が出てくるっすよ」

「何だよ!だったらどうすりゃいいんだ!もう詰みじゃねえか!嫌だよお!カルガー、助けてくれよー。貴族に絡まれたくないんだよー」

「きゃあああああ!抱き付いてこないで!離れ・・・強・・・全然離れない」

「カルガー、頼む、俺を助けてくれー。足でも尻でも舐めるから頼むよー」

「いやあああ!この変態!離れなさい!鎧を舐めないで!」


 カルガーに頭をバシバシ叩かれているが、助けてくれるまで俺は離れねえぞ。



・・・・・



「はあー。もう分かったっす。うまくいくか分かんないっすけど、作戦たてるっす。だからいい加減離れるっす・・・・うわあ。鎧がベイルさんの涎や鼻水で汚いっす。マジ最悪っす」

「本当か?カルガー、俺はどうすればいい?どうすれば貴族に絡まれずに済む?」


 何だかんだコーバスは気に入っているから、国から逃げるのは最後の手にしたい。


「取り合えずベイルさんの手柄は全部自分のものになるっすけど、文句はないっすか?」

「おう、ない、ない。そんなもん喜んで差し出すぜ。なんなら俺が開発した『絶無投』の試作1号もあげちゃう!」

「そ、それは別にいらないっす。あと、もしかしたら騎士団から話が聞きたいって呼び出されるかもしれないっすから、その対策っすけど・・・・ベイルさん牢屋に入るの我慢出来るっすか?」

「そんくらい余裕、余裕。牢屋なんて馴染みの宿みたいなもんだ。貴族と話するより100億倍マシだぜ」

「相変わらずベイルさんの常識はぶっ壊れてるっすねえ。でも気にしないなら大丈夫っすね。それなら・・・・・」



 アーリット達がハウスで仲間と今後の依頼について話し合っている中、乱暴に扉が開き、仲間の一人が部屋に飛び込んで来た。


「た、大変だ!アーリットさん!カルガーさんがとんでもないもの見つけた!」

「どうしたんだい?取り合えず落ち着こうか」

「落ち着いてられねえって。カルガーさん人攫いのアジト見つけたらしいんだ!今、兵士達が慌ただしく動いている」

「ほ、本当かい?人攫いとはまた凄いね。たしか見つかれば極刑じゃなかったかな」


 流石のアーリットや周りの仲間も驚きを隠せない。隣で話を聞いていたシリトラも驚いているのか、口を開けてポカンとしている。そんな中、モレリアとゲレロのジェリーを暇そうに見ていたトレオンが、興奮した様子で詰め寄っていく。


「今!何て言った!・・・いや、カルガーだ!カルガーは今どこにいる!」

「た、多分兵士をそのアジトに案内しに行ったと思う」

「場所は!!どこって言ってた!どっちに向かった!!」

「え、いや、俺も外に出ようとしたら、門の所で見かけただけだから・・・」

「チッ!!」


 その言葉を聞くとトレオンは大きく舌打ちしてアーリット達のハウスから飛び出していった。


「あいつ何であんなに興奮してんだ?」

「知らない。人攫いが嫌いなんじゃない。・・・・お!これは良い手じゃない?」

「ガハハハッ、まだ甘え。こうすりゃ俺の勝ちだ」

「うわあ。負けちゃった。もう一回勝負だ」


 興奮したトレオンを気にした様子もなく、変わらずジェリーで勝負する二人。シリトラはアーリット達の隣で逐一入ってくる情報を聞いて、状況を分析している。そんな中、また一人慌てた様子で部屋に飛び込んできた。ただ、今度は組合員ではなくしっかりとした鎧を装備した王都の兵士だった。その兵士は部屋を見渡すとこう叫んだ。


「アーリット!エフィルは・・・いるな。それからそこのコーバスから来た人達も聞いてくれ。あんたらの仲間が牢屋に立て籠もってる!悪いがちょっと手を貸してくれ!」

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