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135.再会

 いつもの時間に目が覚めた俺は宿屋で朝飯を食っていると、トレオンが気落ちした顔で俺の目の前に座る。


「朝から辛気臭え顔してんじゃねえよ。飯が不味くなるからどっか行け」

「もうすぐ昼だっての!今日はちょっとツキが悪いんだ」

 

 ああ、そう、どうせ朝から馬行って負けただけだろ。しかもその面、昨日折角あれだけ稼いだのに、その様子じゃ結構持って行かれたな。


「それなら余計に寄ってくるな。俺のツキまで下がるだろ!」

「いやあ、ベイルは運がいいな。俺は今日珍しく時間が空いたから王都を案内してやるよ」

「いらねえよ。どうせ夕方まで暇なだけだろ。組合行って誰かに絡んでろ」


 まったく、貧乏神は呼んでねえんだ。どうしてもってんなら幸運の女神を連れて来い。


「行った所で知り合いもいねえから暇だろ」

「一人でジェリーでもして遊んでろ」

「所属してない組合で一人ジェリーとか、ヤベエ奴だろ」


 ああ、確かにそんな奴がいたら怖えな。



「で、結局ついてくんのかよ」

「だから案内してやるって言っただろ。ベイルが見てえのは大道芸人だったな。多分大広場に結構いると思うぜ。ついてこい」


 いらねえって言ってんのにトレオンの奴、強引についてきやがった。もう、断るのも面倒だから、好きにやらせるけどさ。



 そうして案内されたデカい広場を見て俺は目を輝かせる。


 すげえ!大道芸人がこんなにたくさんいる!!しかもみんな凄い派手な格好だ!モレリアの言う通りズタ袋程度じゃ見向きもされねえ!!王都凄えええええ!






「ね?僕の言った通りだったでしょ?」


 結局、途中からモレリアとゲレロも合流して、いつもの4人で大道芸を見て回った。そして時間になったので、組合に向かう途中でモレリアのこの言葉だ。


「いやあ、マジで王都の大道芸人すげえな、俺の一張羅でも霞んで見えるぜ」

「でしょ!でしょ!」


 よく分かんねえけど、モレリアが得意気なのは何でだ?別にモレリアに凄いって言ってないけど。


「いや、確かに見た目は派手だったけど、芸自体はそこまでじゃなかったか?」

「だなあ。まだ俺の盾芸の方が凄いんじゃねえか?」

「ゲレロのは凄いと思うが、流石に時間かかるし、地味過ぎんだろ」


 ここでいう盾芸とは盾を積み上げる芸の事だ。盾って言っても形も重さもバラバラだから、重心を捉えてバランスとるのがめちゃくちゃ難しい。コーバスでもクワロとゲレロぐらいしか出来ないとても難しい技だが、ただ、その様子はめちゃくちゃ地味で時間がかかるって欠点がある。


「俺は芸なんてどうでもいいんだよ。それよりも衣装だ。やっぱり王都は凄えよ」

「いやあ、でもまさかベイルがその場で買うとは思わなかったよ」

「本当だよ。その帽子5万だぞ。5万。ウイスキーより高いとか意味分かんねえ」

「しかもそれ動きにくくねえか?それにベイルの後ろ歩くと前の状況がさっぱり見えねえ」


 みんな、ごちゃごちゃうるせえが俺は5万で買ったこの帽子に大変満足してんだよ。何故ならこの帽子、孔雀の羽みたいなもんがたくさんついて凄い派手なんだ。これに俺の一張羅を合わせたら、王都の大道芸人達にも派手さでは負けねえ。非常に満足のいく逸品だ。

 

 ただ一点だけ欠点があるとすれば、この羽が前のほうにも来て前が見づらいって所だな。


 そうして良い買い物して大満足な俺率いる一行は、昨日に引き続き組合に足を踏み入れた。


「あ!来た!師匠!お久しぶりです!」

「やあ、エル。元気そうでよかったよ」


 これはモレリアと女神の会話か。前が見づらくて女神がどこにいるか分かんねえ。



「ゲレロさん、お久っす」

「よお、カルガー。ちっとは胸デカくなったか?」


 こっちはカルガーとゲレロか。ガンガン音がしているから、早速盾でどつかれてるな。


「トレオンさん。わざわざありがとうございます」

「暇だったから気にすんな」


 こっちはトレオンとザリアだな。何か普通の会話だ。おもしろくもねえ。


「せ、先生は?」

「あれ?ベイルさんいねえっすね。ったくあの馬鹿どこほっつき歩いてんだ。自分勝手にも程があるぞ」


 今のはエフィルの声だな。そんで今ふざけた事言ったのはクタイッシュか。あの野郎、俺らの前で猫被ってやがったな。こりゃあ、もっと躾しねえとなと思っていると、誰かが近づいてきた。


「それで、てめえは誰だ?ふざけた格好しやがって、それで興味引いたつもりか?間抜けにしか見えねえぞ」


 この声はクタイッシュ君だな。俺の逸品を馬鹿にするとは・・・・君はもうちょっと分からせてやらねえと駄目だな。


「おい!てめえ!何か言えよ!っていうか顔見せろ!!」


 そう言うと乱暴な手つきで俺の顔の前の羽をどけるクタイッシュ君。


 笑顔の俺が見えるかな?


「べ、べ、べ、・・・ぐべはぁあ!!!」


 俺が誰か気付いて驚くクタイッシュ君には、俺の全力パンチを叩き込んでおく。静かになったな、よし!!




「え?今のって・・・」

「てめえ!誰に手を出したか分かってんのか!」

「ふざけた格好しやがって!!」

「待って!みんな落ち着いて!」

「待つっす!みんな、その人に手を出したら100倍返しされるっす!」

「何言ってるんですか!クタイッシュがいきなり殴られたんですよ!」

「やっちまえ!」

「やめなさい!その人は私の先生です!!」



 よく分かんねえけど俺がクタイッシュ殴ると、場が何かすげえ混乱した。そんな中、エフィルの叫びで辺りが静まり返る。



・・・・・・・・



「「「「先生??」」」


「そうです。この人が私に卑怯技を授けてくれたベイル先生です!」


 いや、授けてねえよ。


「先生お久しぶりです!卑怯技は隠れてコソコソ行うものだと思っていましたけど、まさかド派手に堂々と行う、このような卑怯技があるとは考えもしなかったです!相変わらずの卑怯技感服致しました!」


 もうね、久しぶりに会ったばかりだけど、こいつと話すと疲れるわ。この卑怯馬鹿コーバスにいた頃と何も変わってねえ。


「こ、この人が・・・」

「何であんな格好してんだよ。やっぱりエフィルさんの先生だけあっておかしいぞ」

「一昨日もズタ袋被って大騒ぎしてたって聞いたぞ」

「組合に来ただけでこの騒ぎか・・・エフィルさんの先生は噂通り、凄い人だな」


 おいいい!何かおかしな勘違いされてるぞ。エフィルの馬鹿は俺の事なんて言ってるんだ!


「ベイル、あなた何て恰好しているんですか?」


 色々言おうとしたが、その前に既に組合に来ていたシリトラが、呆れた様子で近づいてきた。


「これか?さっき大道芸人から買った。格好いいだろ?」

「いえ、全然」


 お子ちゃまにはこの帽子の良さが分かんねえのは仕方ねえか。


「本当にベイルさんですか?」

「何でそんな格好しているんだぜ」

「お!その声はアーリットとクイトか!久しぶりだな」


 聞き慣れた声がしたので、声をかけながら帽子を取ると・・・・うん、多分こいつらがアーリットとクイトだな。顔覚えてねえけど多分合っている。


「ベイルは相変わらず訳分かんないわね」


 そしてその隣には女神が!!相変わらず神々しい。


「呼ばれたから来てやったぜ、エル」


 久しぶりの感動の再会。飛び跳ねたいぐらい嬉しいけど、ここは敢えて何でもない爽やかな感じでいってみる。多分こういう方が女神の好みのはずだ。


「気安く呼ばないで!」

「え・・・あれ?・・あっ、はい」


 あれー?おいでって手紙に書かれてたから来たのに冷たくない?・・・分かった!照れてるんだな。多分そうだ。


「ほ、本当にベイルさんっすか?」


 今度はゲレロをどつき終わったカルガーか。


「よお!カルガー、元気そうで何よりだ。タロウはどうした?」


 俺が声をかけると、カルガーはこっちに駆け寄ってきた。


 おお!そんなに俺に会いたかったか?カルガーとは仲良かったけど、そんなに慕ってくれているとは思わなか・・・あれ?カルガー、何で盾振りかぶってんの?


「痛!!痛い!いってー!おい!カルガー!会えて嬉しいからって盾で殴ってくんな!」

「嬉しいわけじゃないっす。、むしろその逆っす。ベイルさん、何であんな最低なデマ流したんっすか!おかげでこっちはしばらく変態扱いっすよ!」

「痛!いてーって!お前は何訳分かんねえ事言ってんだ」





・・・・・


「ハハハハハ、何でそんなアホなデマが流れてんだ?」


 落ち着いたカルガーに話を聞いたら、レッサーウルフ懐かせる方法がとんでもない事になっていた。思わず笑っちまうぜ。


「笑いごとじゃないっす!ベイルさんのせいっすよ!」

「俺のせいじゃねえよ。ヴィーラ達が勝手に勘違いしただけだろ。その噂に巻き込まれたカルガーは・・・まあ、いいんじゃね?お前犬好きだろ?・・・・いってー!殴ってくるな!」

「本当に信じられないっす」


 いやあ、再会して速攻カルガーがキレるとは思わなかった。やっぱり王都はストレス溜まるんだな。今度小魚プレゼントしてやろう。



「あのー。皆さん。少し宜しいですか?」


 しばらく再会を楽しんでいたら、ルストが恐る恐る声をかけてきた。こいつら昨日はアーリット達のハウスにいたんだって。アーリット達も自分達専用のハウスを持てるぐらい偉くなったんだな。


「昨日、組合中を巻き込む大喧嘩したって聞いたんですけど、本当ですか?」

「喧嘩したか?」

「ベイルは何で忘れてんだよ。脳みそ腐ってんじゃねえか?お前大勢ぶん殴ってたじゃねえか、俺は何人かぶん投げただけ、大人しいもんだ」

「嘘つけ。ゲレロがぶん投げた奴が関係ない連中に当たったから、そいつらも怒って参戦してきたんじゃねえか」

「一番キレてたトレオンも大概だと思うけど」

「モレリアも人の事言えませんよ。あなた達はどこ行っても喧嘩しますね。他所の街では少しは自重したらどうです」




 ・・・・・・


 いやー。多分今回一番暴れたのはシリトラだと思うぜ。言うと面倒くせえ説教くらうから言わねえけど。モレリア達も何とも言えない顔してるぜ。


「道中、喧嘩したら駄目って言ったじゃないですか!しかも全クランに喧嘩売るとか、人の話全然聞いてないじゃないですか!どうするんですか!これ絶対報復されますよ!アーリットさん達も巻き込まれるかもしれません!」

「ルスト、この人たちは言っただけで止まる人達じゃないよ。それに多分、原因は向こうにあると思うよ」


 お!アーリット、流石コーバスにいただけあって俺達の事をよく知っている。そうなんだよ、悪いのはあっちなんだ、俺達は悪くねえ!


「でも『黒』にも手を出しているんですよ」

「だから、悪いのは多分向こうだよ。この人達は誰であろうと失礼な事すると殴るんだ・・・公正ではないけど、凄く公平な人達だから」


 そんな褒めんなよ。照れるじゃねえか。


「ベイル、得意気な顔しているけど、多分これ褒められてねえぞ」




「そうは言っても、僕達まで仲間だと思われたら、全クランから狙われますよ。何度も言っていますが、アーリットさん達は本当にギリギリの所を歩いているんですよ」

「その時はその時だよ。逆にそれをどうにかするぐらい出来ないと6級にはなれないと思うな」


 そう言えばこいつ、伝説の6級目指すとか言っている、頭パッパラパーな奴だったの忘れてたぜ。

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