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影の記  作者: 水鳥川 陸
第一章 出会い
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第二話

話はそれより半刻ほど前に遡る。


「小虎ぁ。どこ行ったんだよ?飯だぞ~」


後藤晃は、一人で住む山奥の小屋で途方に暮れていた。

普段なら魚の乗った皿を置くとすぐに飛んでくる猫の小虎が、今日は朝からずっと姿を見せない。

もう昼もとうに過ぎ、流石に心配になる。


「まさか猪か熊に喰われちゃったんじゃないだろうな。・・・探しに行くか」


自分の住む小屋の周りだけでなく、この山のあらかたは把握している。

が、小虎がいそうな場所のどこにも姿が見えない。


「小虎~」


ふと、普段歩く道の脇の崖が目に止まった。

猫のくせに崖から滑り落ちるだとか。


「・・・あり得ないけど。とりあえず行ってみるか」


        ***


そして現在。


もちろん小虎は崖から落ちてなどいなかった。

その代わり、そこから進んだ先の、木々が少し開けた場所で見つかった。


「もう、何やってんだよ。帰るぞ、小虎」


だが小虎は動かない。何をしてるのか覗き込んで、強烈な違和感を抱く。


「・・・影?」


地面に映る、明らかな人の影。

空を見上げれば、今日は晴天で影が出るのはおかしくないが。


「えっ、誰の影?なにこれ?」


真下を見れば、ちゃんと自分の影はある。

では、これは一体何なのか。

とても嫌な予感がする。

逃げたほうがいい気がする。


小虎を抱え上げて逃げようとしたその時、当の小虎が喋った。


『助けてくれ、俺が見えるなら、ここから出してくれ!』

「・・・」


一瞬の間。そして晃は絶叫した。


「えええええええっ?!」


思わず小虎から飛び離れる。


「なっ、なんだよ、これ。え?小虎?お前・・・化け猫だったの?」


気が動転して、自分でも訳がわからないことを言っている。

だが、もちろん小虎は今まで喋ったことなどない。

当たり前だ、ただの猫なのだから。


恐る恐る、小虎にもう一度近づいてみる。


『おい、お前、そこのお前。聞こえてるんだろ、俺の声』

「またっ!!・・・・・・ん?あれ、でも」


よくみると小虎の口は全く動いていない。

そして、晃の視線に気づくと、いつも通りに、にゃあと鳴いた。

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