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東照の王  作者: こめい
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第四章 金鵄降臨と概念殺しの最終決戦

大和を望む平原。


かつて兄・イツセが命を落とした、因縁の戦場。


東方最後の守護者・ナガスネヒコは、静かに目を見開いた。


「……馬鹿な。」


その声には初めて動揺が滲む。


「紀伊を越えてきたというのか。」


その視線の先には、一人の青年が立っていた。


若き神王・イワレ。


だが、その姿は以前とはまるで違っていた。


西へ傾き始めた巨大な太陽。


その輝きが、すべてイワレの背を照らしている。


神王が背負っているのは陽光ではない。


世界の理。


天地を巡る法則そのものだった。


「待たせたな、ナガスネヒコ。」


静かな一言。


しかし、その声は風となり、大地へ響き、空へ広がる。


まるで世界自身が神王の言葉を語っているかのようだった。


傍らには、三眼の神使・八咫が静かに控えている。


ナガスネヒコは笑う。


「世界を味方につけたつもりか。」


両腕を交差させる。


瞬間。


幾重もの空間断層が重なり合い、目には映らぬ巨大な障壁が戦場を覆った。


## ――天津神絶ちの盾


神の権能。


概念干渉。


物理法則。


ありとあらゆる攻撃を拒絶し、そのまま跳ね返す究極の盾。


かつてイツセを討った絶対障壁だった。


「神であろうと。」


「天地であろうと。」


「この盾は破れぬ。」


ナガスネヒコが踏み込む。


だが。


イワレは一歩も止まらない。


静かに右手を掲げた。


その瞬間だった。


雲が割れる。


蒼穹が開く。


天の彼方から、一条の黄金が降り注いだ。


澄み渡る鳴き声が世界を包む。


**――ピィィィィィィィン。**


光の中から、一羽の神鳥が舞い降りる。


全身を黄金の炎で包んだ霊鳥。


金鵄。


神鳥は円を描きながら舞い降りると、イワレが握る《フツノミタマ》の切っ先へ静かに止まった。


その瞬間。


世界が変わる。


光が戦場を満たした。


それは眩しさではない。


祝福だった。


神々が。


天地が。


世界そのものが。


神王イワレを承認した瞬間だった。


「ぐっ……!」


ナガスネヒコが初めて膝を揺らす。


盾は反応しない。


跳ね返せない。


黄金の光は攻撃ではない。


勝利という未来を世界が認めた証だった。


「ナガスネヒコ。」


イワレが静かに剣を構える。


「お前の盾は見事だった。」


「だが。」


「守るものが存在しなければ、盾も存在できない。」


透明な神剣が静かに振り下ろされる。


## ――事象消滅の神剣フツノミタマ


刃は何も斬らない。


ただ一つ。


「絶対障壁が存在する」という世界の前提だけを断ち切った。


音はない。


衝撃もない。


次の瞬間。


ナガスネヒコを包んでいた絶対障壁が、霧のように消えていた。


「……そんな。」


男は震える。


「我が盾が……。」


「消えた……。」


反射という概念。


絶対防御という法則。


そのすべてが、この世界から失われていた。


初めて。


ナガスネヒコは無防備になる。


イワレは剣を納めた。


代わりに黄金の神威が静かに広がる。


## ――天照す因果の太陽アメタラス


「我が歩む道に、障害は存在しない。」


黄金の光が戦場を包む。


破壊ではない。


裁きでもない。


ナガスネヒコという存在から、


「神王へ敵対する」という因果だけが優しく取り除かれていく。


黒鋼の神衣は粒子となって消え、


膨大な魔力は風へ溶け、


男の瞳から闘志が静かに消えていった。


やがてナガスネヒコは膝をつく。


その顔に恐怖はなかった。


あるのは、安堵だけだった。


「……見事だ。」


静かに笑う。


「理を従えた者こそ……真の神王。」


その言葉を最後に、東方最強の守護者は静かに頭を垂れた。


長き使命は終わった。


風が吹く。


厚い雲がゆっくりと裂けていく。


その先に現れたのは、神々しい光に包まれた巨大な盆地。


世界の根源が眠る聖地――ヤマト。


八咫が静かに微笑む。


「道は開かれました。」


イワレは何も答えない。


ただ静かに兄が倒れた大地へ目を向け、一礼する。


「兄上。」


「あなたが繋いだ道は、ここへ至りました。」


再び前を向く。


黄金の道は、世界の中心へ続いている。


神武東征。


その旅路は、ついに最後の扉へ辿り着いた。


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