サービス残業【閑話】
少し短めです。
ヘラルーと一緒に自分の常宿として使用している宿まで帰って来たセヴンは、ある事に気が付いた。
「あ、あのぉ…ヘラルー?」
「どうしたのぉ?旦那様」
神殿を出て歩いて来る途中、ヘラルーと会話する時にどうもぎこちないセヴンに「私はあくまでセヴン君が召喚した存在よぉ」っとの事で喋り方に気をつける事になった。そこまではまだ良いのだが…。
「俺の泊まっている宿屋で一緒に寝るのかい?ってそもそも使い魔って寝るの?」
「ウフフフフッ、召喚された存在にも睡眠は必要よぉ?睡眠を取る事で体内魔力を回復するのよぉ。召喚された者は微量の魔力を常時放出しているのよぉ、だから魔力を回復させる為に睡眠を取るかぁ、主人の魔力に戻るかぁ、直接魔力を吸引するかのどれかが必要になるの~」
「そ、そうか。それじゃあ一度戻って…」
「ダメよぉ?私戻らないからねぇ?ずっと旦那様を見守るって決めて折角降りて来たんですものぉ、常に一緒よぉ♪」
「さ、さいですか…」
若干食い気味で答えられてどうしようもない事を思い知る。たとえ自分の使い魔だとしても、まだ女を知らない少年が親以外の女性と一緒に寝るのはどうも事故の予感しかしないのである。
「ど、ど、どうていちゃうわっ!」
「何か言ったぁ?ご主人様」
誰に言うでもなく突然心の声に従って声をあげるセヴン。ともかく別々の部屋を取れば良いのだし、それくらいの金銭的余裕は十分にある。お約束としては部屋が埋まっている事が考えられるが、そこまで賑っている宿屋でも無いし、常に半分ほど部屋は空いている。宿屋の数自体も、バニアが泊まってる宿を合わせてこの小さい街に4軒もあるのだ。
一先ず別々の部屋で寝れば良いのかと自分の心を落ち着かせ、常宿へと入る事にした。
「おう!おかえり坊主!」
宿屋に入ると、愛想の良い店主が声をかけてくる。冒険者としてこの街に滞在する事になって以来この宿を常宿としているセヴンだが、食事は普通、部屋もそこまで広くも無くむしろ狭いと言っても良いくらいなのだが、この店主の面倒見の良い人柄にどこか親近感が湧き、常宿として使用していたのだ。
「おっちゃんただいま。ところで明後日なんだけど、この街を発つ事になったんだ」
「お?遂に旅立つのか。まあ男として生まれたのなら狭い世界でウジウジやってねえでドーンッと広い世界に飛び出していかにゃなあ!まあそう言ってる俺はしがない宿屋の親父なんだがよ」
常連の客が居なくなる事に微塵の不満も洩らさず、逆に励ましてくれる。ちょっと恰幅が良いが、基本的に眉目秀麗なダークエルフに漏れず肉付きの良い顔から見せる笑顔もどこか男前だ。
「それで今日はソッチのお嬢ちゃんも一緒かい?ドコで拾って来たんだそんな上玉。おっちゃん何か変な気分になっちまうぜ」
「あらぁ~オジサマ嬉しい事言ってくれるわねぇ、でも私は旦那様の所有物だからダメよぉ?」
「しょ、しょ、所有物っ!?しかも旦那様って坊主っ!?」
「あ、いや、おっちゃんが想像してるのとは違うとは思うけどな、俺召喚士になったんだ。そんで彼女ヘラルーってんだけど俺が呼び出した使い魔なのよ」
「へぇ…すげえなぁ冒険者っつうのも、こんなお嬢ちゃん呼び出しちゃうんだからな。それで部屋はどうすんだ?一緒でいいのか?」
「いや、部屋は別々に…」
っとセヴンが喋り終わる前にヘラルーが店主に近づくき目を見つめている。そして何か魔力の放出を感じる。
「しゅまねえなぼうじゅ、ほかの部屋は改装中でいまあいとぇないんどぁ」
呂律も回らずトロンとした目で答える店主。
「ヘラルー…何かしたな?」
「オホホホホホッ、さぁ早く部屋にむかいましょうよぉ~旦那様♪」
店主は大丈夫なのか?っと思う所だが、何やら恍惚の表情を浮かべながら手を振って見送ってくれている。まぁ生死に係わるほどの事ではないだろう。また自慢の双丘を腕に押し付けながらせかされ、仕方なく部屋へと向かう階段を登る。
何かどんどん追い詰められている気がするのは気のせいだろうか?ドキドキする胸を必死に落ち着かせ、部屋へと入る。
中は木造の5畳ほどに部屋で1人で寝泊まりするには十分の場所である。ギシギシと音の鳴る軋んだベッド、丸い小さな机とロッキングチェアーが1脚あるだけだ。
中に入るや否やベッドに進み腰かけるヘラルー。ギシィッと音を立て、窓から指す月明かりに照らされて妖艶さが際立っている。
見入ってしまうほどのヘラルーを余所に壁に掛けられたランタンに火を付けるセヴン。そして振り返った時いつの間にか目の前に移動してきていたヘラルーに驚く。
「うわぁっ!ちょちょちょちょちょっ!」
「ん~どうしたのぉ?もしかしてこぉ~ゆ~の初めてぇ?」
ツツツツーッとセヴンの胸板に指を上から下へと走らせる。そしてむせ返る様な良い香りが鼻腔をくすぐる。もう心臓は激しい音を奏でながらこのまま爆発してしまうのではないか?と思えるほどである。
「ほらぁ、前に体のサービスもしてあげるみたいな事言ったでしょぉ?私も嫌いじゃないしぃ、今晩はサモナーになれて私と出会えた記念日でもあるしぃ、たっぷり楽しみましょう?」
「ででででででででもっ!やっぱ仮にも女神様とそんな事するなんてマズくないですかっ?」
「もぉ~また言葉が硬くなってるぅ~。硬くするのはココだけでいいのよぉ?」
「アッ、アッ、アーーーーーーーーーーーッ!!」
そしてその夜、少年は大人の階段を登った。
次の日の朝、肌をツヤツヤにしたヘラルーと、何やらブツブツと「もうお婿に行けない…」と呟いてるセヴンが宿屋の階段を降りて来た時、宿屋の店主がサムズアップして良い笑顔をしていたのは言うまでもない。
休日として取った1日は装備の点検や、旅の消耗品の購入。そして連れて歩くだけで世の男性の一部分を硬直させかねない服装のヘラルーに、1着の膝まで隠れる紺色のマントをプレゼントしてその日の活動を終えたセヴン。
だがしかし、その夜も少年の肉体は女神の供物として捧げられる事となって、宿屋に激しく響くベッドの軋む音と少年の悲鳴が、宿屋に泊る他の客達の寝不足を誘発させた出来事があったのもお約束である。
休息を取るはずだった1日を終えたはずなのに、どこか疲れた表情をするセヴンに、旅立ちの朝心配の声をかけるバニア。
「ちょっと魔力供給してもらいすぎちゃったみたいねぇ~」
少し申し訳なさそうな顔をベールの影から覗かせながらも、何時もの様にグイグイと双丘を押し付けて来るヘラルーと、心配な顔をしながら歩くバニアを連れて、エルフの国へとセヴンは旅立った。
これにて序章は終了です。次回より新章エルフの国編突入です!
節目の20話がこんなお約束な話しで良いのか?とも思いつつ、やっぱコレだよねっ!っと書き上げてしまいました。
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