ネタネーム
「道中見ておったがここの食料は木の実かのう?」
「らしいですよ」
「へー、リスーカの主食は木の実なのか」
想像通りではある気がする。
「島主よ。リスーカはウサウニーと食性が被ると思うのじゃがその辺りの分析はどうなのじゃ?」
「野菜と木の実は似てるけどちょっと毛色が違う所があるからなー。木の実って言い方してるけど果物って言い方の方が違いが分かるかも?」
「なるほどなのじゃ。野菜と果物の違いじゃな」
ウサウニーは野菜を食べてリスーカは木の実……ある程度互換は効きそうではある。
「ちなみに島主は果物の育て方も知っておるのかのう?」
「一応、俺のやっていたゲームと農家の人にそこそこ教えて貰えはしたかな」
「それは頼もしい限りじゃ。プラドでは何故か果樹は調達出来なかったから挑戦したい所じゃな」
プラドは草原になった影響か畑にも色々と変化が起こっていたっけ。
温度の変化が大分大きくなって地上でも植えることが出来る作物が増えた。
顔文字さんは果樹にも興味があるのか……農業が本当にやりたい事だったんだなー。
蛇足ではあるがウサウニーは木の実判定の作物は食べないのもあるのが分かった。
リスーカと被るのを避けているのかも知れない。
それと顔文字さんの調査でウサウニーは固体毎に好みの作物が違うと言う話だ。
ブレイブウサウニーはさつま芋が好物らしい。バータはリーダーである故に好物無しだとか。
人参系とキャベツとレタスが好きなウサウニーが多いそうだ。
ペックルもそう言った要素があるんじゃないかって話をしてた。
ただー……クリスもブレイブペックルも好物っぽい魚は見つからないんだよなー……。
調理したアイテムとかでも材料に該当の食材があれば食べてくれるらしいけどそっちにあるのかな?
ブレイブペックルはストレスが溜まりやすいから好物が分かれば運用がしやすそうだけどね。
「折角領地持ちのわらわ達が来たのじゃ。ここの領地持ちに挨拶するのが先決じゃろう」
「そういうもの?」
「近所付き合い感覚で言えば正しいでしょうね」
「領主の場合は競い合うライバルという視点もあるので余り安易に挨拶をすると舐められるという考えもあるでござるな」
硝子は肯定、闇影は否定って意見のようだ。
この辺りは個人で判断が分かれるのかもしれない。
顔文字さんは元々トップギルドのマスターだった訳でコミュ能力は高い。
だからこそ挨拶が基本って考えなんだろう。
思えばプラド草原に呼ばれた人員は人間性が出来ているというか精神年齢高かったもんなー。
一番の年下は俺か顔文字さんって所だろうし……ただ、顔文字さんとクレイさんの話からすると社会人っぽいから顔文字さんも年上とみていい。
ギャグネームを付ける際のテンションは雰囲気的に飲酒して決めた風だったし。
「む……島主、わらわに何か思う所があるのかのう?」
「なんで?」
「いや、島主が考えている雰囲気を察知したのじゃ」
「あ、わかります? こういう時の絆さんって変な行動に出ることがあるので心構えを身に付けてしまいますよね」
硝子、同意しないでくれない?
「逆に凄い事を言うのが分かりやすいので良いでござる」
闇影も同意しない。
「絆にそんな癖あったかしら?」
「あったっけ?」
「奏さん達も同様にありますね。何か悪乗りする際に、短いですがありますよ」
「芸人のノリの時なのじゃ」
いや、俺たち芸人姉妹じゃないんだけど?
ってツッコんだら自爆しそうなので黙って置こう。
「芸人じゃないわよ」
「そうそう! ネタにツッコんでるだけだもん」
「紡は黙ってなさい。絆は空気を読んで黙るのは認めるようなものよ!」
はあ……こんなところでも自爆する姉さんたちに黙とうだ。
認めるもくそも言わなければいいのだ。
沈黙は金、黙っているだけで相手はこちらを理解するのが難しくなる。
闇影ではないが真の忍びは沈黙こそが印象を持たれないものなはず。
釣りをしてるだけで萌えられる俺は一体何者なんだろうか。
俺自身が分からない。
「とりあえず顔文字さんの提案でここの領主に挨拶に行くって事で良いのかな?」
「うむ。タイミングが合えばわらわたちの行きたい所を教えてくれるはずなのじゃ」
「硝子たちも一度ここにきてるらしいけどね」
「ある程度ですけどね。確かに挨拶は必要でしょうか」
「拙者黙ってるでござる」
闇影、別にお前に交渉は任せないだろう。
人見知りするってのは確かなんだよなー……改めて思うと。
などと思いつつノースフェラトの城へと向かう。
カルミラやプラドの城は同盟関係なので簡単に入れるけれど、ノースフェラトは完全に知らない関係なので領主ギルドの許可が無いと入ることはできない。
一応来客用の受付の広間までは入れるけど奥は入れないのだ。
「たのもーなのじゃー!」
顔文字さんが臆せずに受け付けの広間まで来て大声で呼びかけを行う。
「……」
しばらく返事が来るのを待っていたけれど特にこれといった反応は無い。
「人員は出払っているって所かのう?」
「まあ、うちのギルドも顔文字さんの所も似たようなもんだからなー」
城には夜に寝泊りする所で基本は出かけていることが多い。
来客は……うちの場合は今はロミナが担当してたっけ。具体的にはロミナかアルト経由で取引してたり情報交換してる。
顔文字さんの所だとクレイさん達にって事になる。
そう考えると俺たちの来訪ってやり方が間違ってるのか。
「ギルド間でのあいさつは商人経由でした方が早いかも?」
「ふむ……」
「ようこそいらっしゃいましたッチュ。プラドの領主様ッチュ」
あ、受付にいるリスーカがなんか反応してる。
「ノースフェラトのギルド、『昆虫王者インセクトン』へようこそッチュ」
……これはどう反応したら良いんだろう。
すげーギルド名って言えばいいのかな?
「あははは! 凄いギルド名」
「センスが突き抜けてるわ。絆とノジャ子並みの癖の強いギルドマスターみたいね」
「ギルドマスターが犯人なのか。それともメンバーが原因なのかわからないけどちょっと……」
お近づきになるにはネーミングセンスが果てしない。
パチモンっぽい名前なのは元より昆虫って……。
「虫が好きな方という事でしょうかね」
「かもしれない」
「絆さんとはセンスが別ですね。絆さんの場合はカルミラ島フィッシング協会が案でしたので」
「プラド農業組合はまともじゃろ?」
顔文字さんもここで何故自爆へと走るのだろう?
「センスはこっちが突き抜けてるわね」
「でも前に来た時はノースフェラト森林管理組合って名前だった気がするよ? 城の看板で見たよ」
紡の目撃証言か……それなら割と無難な名前な気がする。
忘れがちだけどギルド名って申請すれば変えれるんだよね。
「やはりネタネームで闇影ちゃんと愉快な仲間たちにすべきなのか?」
「しなくて良いでござる! 張り合う必要性を感じないでござるよ!」
「だがなー……次の波とかでここのギルドはライバルになるかもしれないし」
「名前で勝敗が決まったら苦労しないでござるよ!」
うーむ……まあ、この件は保留か。
「個性的な方々が居そうですね」
「逆に名前だけでも個性を出したいかもしれんぞ」
「まあ……顔文字さん程の個性は中々無いもんね」
忘れがちではあるが顔文字さんの名前が俺たちの中で一番突き抜けているのは事実だ。
「くううう……リネームアイテムの実装を待つのじゃ!」
あるあるだね。ゲームとかだと。
名前を再設定できるアイテムなどの話。
「ギルド名は簡単に変えれるのに何でプレイヤー名はいつまでも固定なのじゃー!」
という顔文字さんの魂の叫びがノースフェラトの受付の間に響き渡ったのだった。




