騎乗ペット
報酬画面は……まだ出ないか。
「よーし!」
「やったな!」
「結構ギリギリだったけどどうにかクリアしたぜ!」
「これでビザのランクアップだな!」
「おつかれー」
「お疲れ様ー」
「アクヴォル様ファンクラブ、絆ちゃんファンクラブに参加したい方はこちらー」
みんな各々勝利を労う言葉が周囲に飛び交う。
「絆殿、やったでござるな!」
「ああ、ところでリザルト画面が出ないな」
「そうでござるな、まだイベントは終わっていないって事かもしれないでござるよ」
あり得るな。
もちろんそれは戦場にいる連中も理解しているのか警戒を解かずにいる。
やがて……フィールドの上空になんか黒い影が出現した。
なんか邪悪そうな影だな。
『愚かな人間共よ。よくぞ四天王のダインブルグとアクヴォルを退けた。その事は素直に賞賛の言葉を贈ろう。貴様らを侮った我の落ち度である』
うわー……なんだろう。
よくあるイベントというかあれが魔王って奴かな?
『此度の侵攻は序章に過ぎん。四天王共も手を抜いていたのでな。我が魔王軍の恐ろしさをその身をもって理解できたか? 今日はこのぐらいにしておいてやろうではないか……精々一時の平和を甘受するが良い、フハハハハハハ――』
とまあ、なんか挑発的な口調で大きな影は姿を消していったのだった。
直後、リザルト画面が表示される。
ミカカゲ・魔王軍侵攻防衛線……二勝二敗。
水の四天王・アクヴォル戦場勝利!
という所からランキングが表示された。
与ダメージやダメージ、貢献度とかのランキングはディメンションウェーブイベントの時とそこまで差はないか。
絆†エクシード 与ダメージ 12位
戦場貢献 1位
総合計 評価 8位
おお! 目立つ活躍だと結構いい感じの戦果だ。
ただ……やっぱテクニックというかボスとかに張り付いて戦うとかは上手く出来なかったので与ダメージとかはそこそこって感じだ。
これが硝子や紡だともっとダメージ出ていたんだろうな。
どちらかと言えば被ダメージの方が高いだろうし。
で、闇影は当然ながら与ダメージ1位を取っている。
属性相性良かったもんな
やっぱ闇影って戦闘が得意だよな……魔法で色々とやっているからなんだろうけどさ。
「絆殿が与ダメージ1位じゃないのでござるな」
「まあ、そこまで攻撃に力が入っていた訳じゃないからだろ」
氷削ってー鮫を集めてーとかだしな。
変身解除をさせるのは貢献したけどそれ以上の攻撃、雑魚処理は他のプレイヤーに一歩及ばなかったって感じだ。
やっぱ戦闘特化の前線組や闇影には負けちゃうのはしょうがない。
ただ、罠を壊すとか他の部分で貢献できたから良いとしよう。
で……報酬は、スロットじゃなく宝箱表示だ。
確認をすると箱が開く演出と共にビザランクアップの表示が出た。
これで更なる先へと行けるようになったわけか……。
他に武具の強化素材と……ボス報酬って文字が表示された水の四天王の魚鱗とアクアジュエルという名の宝石だ。
さらに追加報酬の欄がある。
えーっと……。
騎乗ペット、ライブラリ・ラビット獲得!
「騎乗ペットがあるな」
ペックルの笛で巨大ペックルを呼び出せる俺だけど、ほかにも入手してしまった。
なんか本の形をした召喚アイテムの様だ。
「絆殿、拙者も獲得したでござる!」
闇影も本を持っている。
まあ、騎乗ペットって普通に移動するよりも早くなるだろうから便利か。
周囲を見ると似た様なアイテムを持っている人がちらほらと見受けられる。
入手確率はそれなりに高い様だ。
「気になったでござるが……二勝二敗というのはどういう意味でござる?」
「四つフィールドが分かれているんだぞ?」
「……やっぱりそうでござるな」
なんて闇影と会話をしつつ硝子達が気になった所で硝子からチャットが来た。
「絆さん、お疲れ様です。どうやらそちらの戦いも終わったようですね」
「ああ、戦果はどう?」
「勝ちました。私の持っている武器と防具がボス魔物……大地の四天王・ダインブルグという方にとても有利に働きまして問題なく戦えました」
どうやら硝子も相性の良い相手と交戦したようだ。
前線組の推理だけどあながち間違いはなかったって所か。
硝子の方の戦果をこっちで細かく確認はできないけれど、闇影がトップを取れたんだから硝子もトップを取れたに違いない。
「そうか、こっちも上々、水の四天王・アクヴォルって奴を倒せたよ」
「それは何よりです」
「お兄ちゃん! 勝ったよー!」
紡からもチャットが来る。
「はいはい。正直硝子と紡が居たところはボス撃破が早そうなイメージだけどあのボス、戦場のどのあたりで倒せた?」
「真ん中に届くより少し早めだよね」
「そうですね。攻撃に対してこちらが抑える手段があったので皆さん、全力で戦えていたと思います」
うわぁ……こっちはそこそこギリギリだったぞ。
硝子の地震対策がかなり刺さっていたのは間違いないか。
「硝子さんねー殆ど項目で1位を取ってるんだよ!」
「紡さん!」
「大活躍のようで俺もうれしいよ」
こりゃあMVPは硝子で間違いないなさそう。
ただー……。
「つまりしぇりるの方は惨敗だったって事だよな」
ロゼPTが居ても敗北か……チャット出しづらいな……。
恐る恐るしぇりるにチャットを送ってみる。
「……」
「えーっと」
「……失敗」
なんか割と疲れたような顔をしているしぇりるがポツリと零す。
「ああ、次は頑張ろう」
「……そう。報酬……乗り物ペット」
「あ、しぇりるも貰えたのか」
割と確率高めなのかもしれない。
「ランキング……7位」
結構上位にいる。なんだかんだ硝子や紡、闇影と一緒に居るからだろう。
負けても報酬は良い物が貰えるんだから良いんだろう。
「すぐに合流するぞ」
「そう……」
「あんまり引きずるなよ。ゲームは楽しむもんで責任は二の次なんだからさ」
コクリとしぇりるは頷いた。
「じゃあ硝子、紡、合流しよう」
「はい。今度は一緒の場所で戦いたいですね」
「お兄ちゃんのネタ行動見たいもんね」
「してないから安心しろ」
「絆殿は――」
闇影が密告しようとしたのでチャット前に外した河童着ぐるみを闇影に見せる。
「……大活躍だったでござるよ」
よし、空気を読んだな。
まあ、すぐに噂となって広まりそうだけど気にしない。
「そっかーちょっと残念だね」
「むしろ蟹工船をしたおかげで戦場で拙者も罠を見ることができて大活躍だったでござる。何が幸いするかわからないでござるよ」
「こっちも似た感じで地雷の罠とかあったっぽいんだけどね。硝子さんの武器の力で割と完封しちゃったみたい」
「次は上手く行くかわかりませんけどね」
なんて感じで俺達はさっさと着替えてフィールドから出て関所前で合流した。
奏姉さんは……失敗したときに声を掛けたら五月蠅そうなので今度声を掛けようと思う。
「今回のイベントってさー、魔王の四天王の顔出し的な奴っぽいよね。倒した後で飛んで行っちゃったし」
「そうだな。これでどこかのイベントのフラグが立つとかなんじゃないか?」
「だよねー」
「いずれ決着を付けないといけませんね。やはり今回のイベントのように戦うのでしょうか?」
「どうだろ? どこかのクエストで遭遇とかもあり得るんじゃない?」
古き良きRPGとかでもありそうだよな。
「イベントでも出てくるけどインスタンスダンジョンのボスの可能性もあるぞ? フィールドボスとかもいるかもな」
「ありそー攻撃パターンが増えていたり色々とバリエーションの出てくるボスって奴。フィールドボスでも出てくるかもね」
闇影と出会った時の出来事を思い出す。
あれもフィールドボスだったな。
「しぇりるさん、お疲れ様です」
「……」
「しぇりるさんは絆さんが戦った水の四天王と戦いたかったですか?」
コクリとしぇりるが頷く。
まあ、水関連は俺としぇりるが担当って感じだもんな。
やってることは釣り人と海女だし。
「とりあえずしぇりるの鬱憤を晴らす方向で何かしていくか。しぇりる、次はどこ行きたい?」




