水の四天王防衛線終了
判断力が物を言う……けど、攻撃モーションは一通り確認した。
これでもゲーマーな姉と妹を持つ身だ。
どんな攻撃が来るのか分かれば対処もできる。
姉と妹程じゃないが……やってやろうじゃないか!
根気だけは姉にも妹にも負けない!
「闇影、行くぞ!」
「当然でござる!」
ブレイブペックルに敵の注意を引きつけて守らせつつ冷凍包丁でアクヴォルの変身を解かせて見せる!
「お前だけが罠を使う訳じゃないのを見せてやる!」
バラバラと戦場に敵にしかかからないトラバサミをばら撒く、今度攻撃的なトラップも習得しておくか。
これでアクヴォル以外の地面を歩く雑魚の足止めができるはずだ。
更に遠距離攻撃とばかりに釣り竿を出し、ルアーを青鮫のルアー<盗賊達の罪人>に付け替えてからぶつける。
遠距離なのに斬撃と出血ダメージを与えることができたぞ。
当然とばかりにアクヴォルは氷の鮫なども呼び出している。
前線組が出現と同時に散らしていたけど、今は周囲にいて煩わしい。
闇影にも魔法攻撃に範囲で散らしてもらうとするか。
と、思ったら氷の鮫が俺がルアーで攻撃して出血ダメージを起こしている奴に群がっている。
血に反応している? これは良いな!
トドメに行くぞ!
「フィーバールアー!」
ヘイトを集めるフィーバールアーを発動させると氷の鮫が一目散に俺のルアーへと群がり始める。
それを竿を動かして巧みに回避しつつ攻撃して一か所に誘導だ。
「サークルドレインからのブラッティレイン……からのー」
っと闇影が集まった氷の鮫を一網打尽にし、色々とアクヴォルに攻撃をしている中で俺も氷部分を冷凍包丁で何度も切り裂いて削って行く。
攻撃はペックルたちに耐えてもらい、津波は河童着ぐるみで無効化、変身ゲージ削りを俺が行い、三分の一まで削る。
そうしている内に前線組が駆けつけて来て、戦線の立て直しができた。
「よく耐えてくれた!」
「よくこの人数で耐えてるよな」
「釣りマスターが鮫を良い感じにまとめてくれんだよ」
「ペックル使いが上手いっていうか特殊ペックルが凄いのな」
クリスとブレイブペックルのおかげだな。クリスも攻撃に大きく貢献している。
ただ……問題はブレイブペックルのストレスゲージだ。
徐々に増えて来ている。まだ大丈夫だがそんなに長時間稼働をさせてはいられない。
「よし変身解除させたぞ! 畳みかけるんだ!」
そうして再度ゲージを削り切ってアクヴォルの変身を解除させて前線組が各々必殺技をアクヴォルに叩きんでアクヴォルのHPが一気にごっそり削れる。
『うぐうう……おのれ人間どもめぇえええええ!』
が、削り切ることができずに再度アクヴォルは変身する。一定以上のHPが削れた影響かセリフが変化したな。
『喰らうが良い! メイルシュトローム!!』
「こっちも対策済みだぁああ! な――!?」
と、装備を切り替えてきたっぽいリーダーを含めた前線組の連中がまた必殺技を受けて蒸発した。
俺達もカッパ着ぐるみの上からかなりのダメージを受けている。
もしかしたら撃つごとにメインの属性が違うのかもしれない。
「つ、釣りマスターとペックル……礼を言う」
「ああ、ほかの連中が戻るまでしっかりと戦ってくれよ」
「当然!」
幸い俺達の近くにいたプレイヤーにはブレイブペックルを指示して守らせることで多少は人員の減りを軽減できてはいた。
「うう……かなりの赤字でござるな」
「言うな。損失分は後で稼げば良い」
スピリットだからセーブポイントに戻らずにいられるが、ほかの種族だったらセーブポイント行きなのは間違いない。
ちなみに今回はタンク組も消し飛んでしまっていて、周囲がガランとしてしまっていた。
「ダメージを受けた事で本気になったって感じか……」
追いつめられると同じ技でも攻撃力が上がるボスとかゲームではよくある。
おそらくその辺りだろう。
「また駆けつけてくるまで時間稼ぎをするぞ」
俺達以外のスピリットで溶けた奴も見た……アレは悲惨だろうな。
仲間とか今までの熟練度は失われる訳じゃないので全てを失う訳じゃないけど戦線復帰は難しい。
ブレイブペックルのストレスゲージも危ない。
早めに片付けないとじり貧で負ける。
なんて思いつつモーションがわかっているので時間稼ぎをしながら前線組が駆けつけるまでの時間稼ぎを終える。
「攻撃力高すぎだろ。もう少しバランス考えろよ」
「歯ごたえあって楽しー!」
なんかワクワクすんぞって顔をしている奴が前線組に紛れている。
ああ、やっぱゲーマーってタイプ別れるよな。
俺みたいなコツコツタイプ、しぇりるみたいな冒険が好きなタイプ、硝子みたいな協力するのが好きなタイプ、紡みたいな戦うのが好きなタイプとな。
難しければ難しいほどに燃える連中が前線組には多いのは何となくわかるぞ。
ただ、正直そろそろ終わらせないとじり貧でイベント失敗になる。
アクヴォルの奴が防衛拠点に近づいていてどっちにしてもここで削り切らないといけない。
ただ、前線組が総動員で削った時のダメージを目算すると……少し足りない。
「闇影、一気に仕掛けるぞ」
氷ゲージが五分の一になった所で俺は一気に片付けるためのチャージに入る。
「承知でござる!」
ブレイブペックルとクリスにはアクヴォルの攻撃と防御を任せる。
どうにかブレイブペックルで耐えさせることができるのが幸いだ。
冷凍包丁で構えつつピュンピュンとチャージ音が鳴り響く……。
まだだ……前線組の削りが終わるまであと少し……俺が攻撃に参加してないから想定よりも削りが遅くて非常に歯がゆい。
『あっぐぅううう』
と言う所で削り切ってアクヴォルの変身が解除された。
く……チャージが出遅れた。
「一気に畳みかけるんだぁああああ!」
「おおー!」
みんなが畳みかけている中、歯がゆい思いをしているとアクヴォルのスタンが解除される兆しが表れる。
HP表示は俺の読み通り削り切るにはちょっと足りない。
チャージ長すぎだ。もっと練習しないといけないな。
なんて思った所でキン! っと音が響いた。
「よし! ブラッドフラワー!」
高速でアクヴォルに近づき、俺の最も強力な技が発動してアクヴォルを切り刻んだのちに通り抜けていた。
冷凍包丁を振り回して血糊を飛ばしてから振り返る。
するとタイミングよく血しぶきのエフェクトが発生して血の花が咲き乱れる。
「おおおおお! 派手な技当てた奴がいるなー!」
「今の技なに?」
「見覚えの無い技だな」
「解体武器のブラッドフラワーだ。うちのメンバーに使えるのがいる」
「へー、そうなのか。結構派手な技あるんだな。つーか削り切ったって火力たけー!」
「いや、解体武器だから火力はそこまで高くないはずだけど……」
「技放ってたの釣りマスターだったぞ」
「なら火力あるのは当然か。めっちゃ下のゲージ削ってくれてたし」
なんてみんながホッと余裕を見せる。
まあどうにかHPを削り切ったからだ。
『……思ったよりやるようね。良いでしょう』
大きく仰け反ったアクヴォルはそういうとシュバッと空高く飛び上がって姿が消えてしまった。
うわ……倒した扱いにはなるけど死んだ扱いにはならないイベントボスだったのか。
ディメンションウェーブイベント時のボスとは扱いが違うらしい。
魔王軍侵攻、水の四天王撃退!
クエストクリア画面が出る。
同時にフィールドにいた雑魚たちも一斉に姿を消したので防衛は成功した。




