ネカマロリは早すぎた
何より幼女って言うな!
さらに気色悪いファンクラブも作るんじゃない!
しかも変態が混じってんぞ! ネカマに欲情するな! 転生じゃねえよ。
くそ……姉と妹の力作アバターの所為で要らぬ連中に絡まれそうだぞ。
『水の罠を喰らいなさい!』
アクヴォルが片手を上げて雨を降らすと水で作られた罠が再設置される。
「ひるむな! 罠解除持ちは頼んだぞ!」
「当然!」
ボス周辺を意識すればまだ罠解除はやりやすい。
めぼしい罠を素早く解除する。
「く……思ったよりもダメが稼げない!」
「HP高いっつーかダメが入ってる感じがしないぞ!」
アクヴォルのHPを見ると前線組や闇影の攻撃で全然削れている様子がない。
ただ、下のゲージが徐々に減って行っているが……それもアクヴォルが時々腕を上げてセルフヒールでもするかのように回復してしまう。
どうにかして良い感じに攻撃の機会を作れないか?
あのデカマーマンっぽいアクヴォルに大きな隙……ゲージを一気に削るような意表のあるギミックが欲しい。
……アクヴォルって見た感じ魚っぽいよな。
俺は釣り竿を出してルアーをスナップ掛けてアクヴォルの顔面……具体的に口にキャスティングを試みる。
飛んでいくルアーがアクヴォルの顔、口の部分にあたるのだけどザシュっと攻撃エフェクトが発生するだけで次元ノ白鯨を相手にした時の様な引っかかる感じがしない。
いや、なんか感触はあるんだが針が引っかからないんだ。
「誰だ! ルアーをアクヴォルの口にぶつけてる奴は!」
「釣りマスター」
「ペックルマスター」
「おいおい。またやってんのかよ!」
「魚っぽいし上手くは……行ってないみたいだな」
「さすがの運営もアクヴォルにルアーまでは想定してなかったんじゃね?」
く……金魚掬いに釣り竿を垂らすことを想定している運営が想定していないなんてあり得るのか?
けど事実上手く行かないのだからあきらめよう。
「だな。とはいえ頭への攻撃は効きが良さそうだ! みんな、やれる奴は頭を狙えー!」
って感じで俺の攻撃も多少解析の役には立ったっぽい。
そんな感じでみんな手探りでアクヴォルへとできる限りの攻撃をしていく。
「本体は水属性っぽいが氷部分が厄介だ! 誰か氷に有利な属性で攻撃してくれ!」
「氷に有利な属性ってなんだ?」
パッと言われてわからなかったので周囲に尋ねる。
「土と火、雷とか水みたいに効く訳じゃないんだよ」
へー……そうなのか。
「って、なんでこんな所まで来ているのにそんなことも知らねえんだよ」
「そりゃ俺……エンジョイ釣り勢だし」
「はあ?」
っと俺の返事に何言ってんだって振り向いた奴が俺を見て、何も見なかったみたいに戦闘続行をする。
おい。何か言えよ。
まあカルミラ島みたいなイレギュラーの影響なんだけどさ。
「デュフフ……釣りマスター絆ちゃんのドジっ子具合が可愛らしいでござるよ」
闇影じゃない奴がポツリとつぶやいた。
お前、時代はロリとか言っていた奴だろ。
さっきからこの野郎! 人で萌えるな! 気色悪い!
その見るからに古臭いキモオタ言動は何だよ。
そんな言動の奴、見た事無いぞ!
「それ以外にも特攻の武器とかあるらしいけどな」
「冷凍包丁とかか?」
サッと冷凍包丁を出すと周囲の連中が頷く。
「釣りマスター、罠解除に貢献してるがこの場じゃサポートじゃなくてアタッカーに回ってくれ!」
おおう……リーダー格に指示されちまった。
よーし! ブレイブペックルたちと陣形を組んでいくぞ!
手始めにアクヴォルの背後に回り込んで尻尾をズバズバと切りつける。
ズリュっと良い手ごたえがする。
メリッとアクヴォルのHPゲージの下のゲージが大きく1割削れた。
「おお! 良いダメ出してる奴がいるな! そのまま行けー!」
「OK! 行くぜー!」
っとそのままクレーバーでコンボを放ってガリガリと下のゲージを削り切る。
すると下のゲージが弾ける。
『あっぐぅううう』
バキンとアクヴォルは大きく仰け反ったかと思うと先ほどの人魚形態に戻って吹き飛ぶモーションと共に倒れ込んだ。
「うほおお! 戻ったぁああああああああ!」
「アクヴォル様のお顔が戻ったぁああああ!」
「これはあれだ! 本当の姿はこっちだ! 変身ゲージなんだこれ! 削れると本当のお姿が見れるぞ!」
「アクヴォル様ファンクラブ再結成! 絆ちゃんファンクラブ解散」
「我々人類にネカマロリは早すぎたのだ」
まーたテンションを上げやがって、本当こいつらイベントを心の底から楽しんでいるな。
「そういえば釣りマスターがアクヴォル様の神聖なお口にルアーをぶつけていたな……」
「まさか知っていたから先制攻撃を……」
「知らんわ!」
謎の伏線にするな。
女同士のキャットファイトじゃねえよ。
「遊んでないで攻撃しろ! 変身解除後に攻撃が必要みたいだぞ!」
おお、リーダーは美少女よりもイベントクリア優先だ。
「バーストサンダーレインでござる!」
闇影も空気に流されず攻撃をしている。
まあ闇影がアクヴォル様萌えー! とか言わないのは何となく助かっている気がする。
『く……おのれちょこざいな!』
と、スタン状態から復帰したアクヴォルは再度起き上って変身する。
当然のことながらHPゲージの下にあるゲージが復活した。
うん。攻略パターンは見えたな。
が、直後。
『私のこの技を食らうが良いわ! メイルシュトローム!!』
アクヴォルの目の前に凝縮する水の渦巻きのようなものが発生し、水の衝撃波と津波が四方八方巻き起こる。
「うぐ――」
「うお――」
「ぐあああ――」
アクヴォルの周囲で攻撃しながら間合いを図っていた前線組がアクヴォルの必殺技を受けてほとんどの奴らがHPを損失して倒れる。
うへぇ……なんて超火力だよ。一瞬で溶けてんじゃねえか。
指示を出していたリーダーも攻撃を受けて即死したのか吹っ飛ばされて姿が消えている。
タンク役の前線組も大ダメージを受けて吹っ飛ばされて回復するまで戦える状況じゃない。
まともに立っているのは俺と闇影、そしてペックル達しかいない。
「手段を選ばずに着ぐるみを着用してて助かったでござる!」
ああ……超高火力の水属性攻撃に対して水属性攻撃に高い耐性を持つ河童着ぐるみじゃないと耐えきれないって事なんだろう。
ただ、シールドダメージが削り切れるくらいにはダメージを受けているので、それでも耐えきれないとか別の属性も含まれているのかもしれない。
しかし……MMORPGのボスって異様に強く設定されている事があるけど、そのパターンだな。
触れた瞬間防御特化型のタンクでも即死、みたいなゲームは結構多いんだ。
やっぱりイベントボスだからかね?
「急いで復帰するから釣りマスターチーム! 時間を稼いでくれ!」
と、リーダーが俺にチャットを飛ばして来た。
ああ、倒れる直前耐えきっていたのが見えたのね。
「だとさ闇影」
「責任重大すぎるでござるよ」
「ま、やってやるしかないさ。パターンは大体わかったんだ」
「絆殿!」
闇影が俺に注意を呼び掛ける。
一体……っと思った所でブレイブペックルがオート反応をして俺の上に飛び上がった。
「ぐううう……ペン!」
バシィっとブレイブペックルに向かって落雷が降り注ぎ、盾で大きく弾いて霧散させる。
アクヴォルが手を挙げて何かしていたが、まさか雷まで使うのかよ。
「危なかったでござる……」
「やばいな……」
河童着ぐるみは当然ながら水属性の装備だ。
古くからあるゲームによくある属性相性的に雷は非常によくない。
しかもシールドエネルギーが吹っ飛んでいる今、ダメージを受けたら超痛い挙句大幅に弱体化しかねない。
急いでカニポーションを俺と闇影は服用してシールドエネルギーの回復を行い、ブレイブペックルは僧侶ペックルが回復を施す。
河童着ぐるみで攻撃をなんでも受けきることはできないか。




