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あさきゆめ  作者: yoshihira
10/10

余話

前話と繋がっておりません。


 寒風が吹き荒ぶ、千の時を越えて生きる大木の根元に、漆黒の羽根を広げて彼は降り立った。


 この大木は、常磐山の山神が宿る神木だ。

 彼の相棒となった退治屋の老婆をことのほか気に入り、何やかやと彼女に手を貸してやっていた。


 何処から湧いて出たものか、屋敷に住み着いた鬼子らが、その神木の前でそれぞれに立ち尽くしていた。


 普段は目障りだと彼らを邪険にしているのだが、彼は他に何も目に入らぬかのように近付くと、地に横たわった一つの骸の前に膝をついた。






 腕を背に差し込んで掬い上げると立ち上がる。

 驚くほど枯れたその身は軽い。先日まで目の当たりにしていたあの存在感が嘘のようだった。






 そのまま彼は飛び立った。







 腕に抱いた、既に魂魄の失われたその人を見やり、風見は囁いた。


「―――あなたは一度も、私と共に空を往こうとはしてくれませんでしたね」


 落とされるのは御免だ、と。

 お前の腕にすがって空を飛ぶなど信用できるか、と。


 彼女はアヤカシを退治る退治屋で、そして、彼は天狗の名を持つアヤカシだった。


 ―――それでも二人は寄り添い、数十年の時を共にした。






 ―――あなたがもう何処にも存在しないなんて。

 とうとう最期まであなたを殺せなかった。





 

 変えられた。

 知ってしまった―――喪失の意味を。


 風見は記憶を巻き戻し、惜しむように、愛しむように、少しだけ再生した。






 ―――あさきゆめみじ。

 すぐに醒めてしまうゆめなどもう―――みない。




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