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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第二章▼避難所から始まる地下研究所探索▼

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第35話・閑話『モリア、枯木の案山子』

 ここまで読んでくれた皆様に協力して頂きたいことがございまして、当作品の掲示板に出てくるプレイヤーの名前を募集したいです。


 一人でうんうん言いながら思いついたものを書き出しているのですが、ストーリーのプロットを考えなければいけない都合上、リソースをそちらに集中したく思っています。


 作中に自分のアイデアが使われても構わないよ!という方がいらっしゃれば、そのプレイヤーの名前と、できましたら簡単なパーソナルな部分(簡単な性格、趣味嗜好、口調など)も含めてコメントして頂けると幸いです!


 私の方でそれを作中の雰囲気に合うようブラッシュアップし、登場させる予定です。


 締切期日は特に設けていないので、何か良いアイデアが思い浮かんだ場合にはエピソード問わず、どしどしコメントして頂けると大変助かりますm(_ _)m

 この身に宿る恩寵の名を、私はまだ完全には理解しきれていない。


 けれど、それを授けてくれた神のことならば、少しだけ分かる。私をこの森に生まれ落とした枯木の神は、一目見た瞬間に背筋が冷えるような女神だった。


 妙齢の喪女、とでも言えばいいのだろうか。枯れた枝を編み込んだような衣を纏い、静かに佇んでいるだけで、周囲の空気が湿った墓所のように重くなる。


 目は爛々と輝いていて、初めて向き合った時など、ああ、これは話しかけた瞬間に呪い殺されるやつだ、と本気で思った。


 ところが、実際に言葉を交わしてみると、彼女は想像していたよりずっと親しみやすかった。声音は低く、時折じっとこちらを覗き込む視線には迫力があったが、話す内容は驚くほど穏やかで、こちらの言葉を急かすこともなかった。


 むしろ、たどたどしい私の説明に最後まで耳を傾け、分かりにくいところは少し首を傾げながら待ってくれる。


 何より、優しい。


 この世界に生まれ落ちた瞬間から、私は彼女の寵児として扱われているらしい。もちろん、寵児と言われても実感は薄い。けれど、最初に与えられたこの身体も、いくつかの扱いにくい力も、そして森の中で生き延びるための導きも、思い返せばずいぶん良くしてもらっている。


 正直に言って、私はかなり運が良かったのだと思う。


 ただ、移動する度に周囲の植物が黒い霧になって溶けてしまうのは、少し複雑な気分になることかもしれない。


 恩寵の影響だ。


 私が歩いた地面の周りでは、芽吹いていた植物がしゅうと音もなく霞み、細かな黒い霧となって散っていく。枯木の神に連なる力なのだから、そういうものだと受け入れてはいる。受け入れてはいるのだが、森の中で植物系の身体をしている身としては、少々複雑な気分になる。


 これが唯一の不満と言えば、不満だろう


 「根よ、貫け!」


 地中に眠る植物の種が急激に芽吹き、根を伸ばし、やがて鋭い槍へと変じる様子を強く思い描く。土の奥に押し込められていた生命が、私の声に呼応して一気に膨れ上がる。足裏から伝わる微かな震えを感じた次の瞬間、目の前の地面が裂けた。


 幾本もの木の槍が、湿った土を跳ね上げながら飛び出す。


 醜鬼は喉を震わせる暇もなく、腹を、胸を、肩を貫かれた。捻じれた牙の隙間から濁った息が漏れ、歪んだ身体がびくりと跳ねる。突き出した根の槍は獲物を持ち上げるようにしばらく静止し、やがて役目を終えたかのように、ぱっと淡い光の粒子へほどけていった。


 穴だらけになった醜鬼の身体も同じように光へ変わり、森の薄暗がりの中へ溶けるように消えていく。


 「ふう。これでレベル十ですか。まあまあのペースかしらね」


 戦闘ログを確認しながら、私は小さく息を吐いた。息といっても、この身体が本当に呼吸を必要としているのかは怪しい。


 とりあえず目の前に斃れたモンスターの素材をインベントリに収納し、拠点へ戻るため来た道を辿る。


 周囲は相変わらず鬱蒼とした森だった。背の高い木々が天を塞ぎ、枝葉の隙間からこぼれる光は緑というより濁った灰色に近い。地面には苔とも草ともつかない植物が広がり、ところどころに獣の骨のように白く乾いた根が浮き上がっている。


 だが、不思議と迷う気配はなかった。


 現実の私は、笑えないくらい方向音痴だ。駅の出口の見分けがつかないし、ショッピングモールでは何度も同じエリアを回ってしまう。地図アプリを開いているのにどういうわけか迷う、という情けない特技すら持っている。


 それなのに、フルダイブした先の世界では空間の把握が妙に冴える。


 背後にどの障害物があり、右手にどれくらいの傾斜があり、少し前に倒したフォレストウルフの爪痕がどの方角に残っているのか。


 そういう情報が、視界だけでなく脳の奥に刻まれているように分かる。今も私は、目印にしていた倒木を直接見ているわけではないのに、そこまでの距離と角度をおおよそ掴めていた。


 ありがたい能力だが、慣れておかないと危うい。現実の感覚との落差が大きすぎて、油断すると妙なところで判断を誤りそうだ。


 「このゲームでも、ちゃんと訓練しておかないといけませんね」


 小さく呟きながら、先ほどの魔法の出来栄えを振り返る。


 地中からの奇襲はかなり上手くいった。実際、あの醜鬼は完全に反応が遅れていたし、そのせいで身体中に風穴を空けられたのだから、戦果だけを見れば申し分ない。


 ただ、イメージが少し難しい。


 地中から伸びる根といっても、もしここが土ではなく岩肌だったらどうなるのだろう。魔法には法があり、法がある以上、何でもかんでも願えば叶うというものではない。果たして、岩から根が生えることなどあるのだろうか。


 そう考えたところで、ふと現実の景色を思い出した。


 家の近くには自然の多い場所があり、体を動かすついでによく散歩をしている。そこにはいくつもの岩が転がっていて、その表面に逞しく根を張る植物を何度も見た。


 わずかな隙間に土を溜め、雨水を吸い、石を抱え込むようにして生きる草木。岩そのものから生えるのではなく、岩を足場にして、岩を割るほどに成長する命。


 それを思えば、不可能と決めつけるには早い。


 辺りを見渡せば、この森にも似たような光景はいくつもあった。大きな石を飲み込むように根を絡めた木、倒壊した壁材の隙間から幹を伸ばす未知の植物、割れた瓦礫を抱えたまま太く膨れ上がった蔦。生き物というのは、思っているよりずっと強かだ。


 ならば、岩場で使う時は、根が岩を突き破るというより、亀裂を押し広げながら伸びるイメージにすればいいのかもしれない。あるいは、岩を土に還すほど長い年月を一瞬に凝縮するような感覚でもいい。


 このゲームの魔法は、ただスキル名を叫ぶだけのものではない。何をどう起こしたいのかを細かく思い描くほど出力が安定するのは、多くのプレイヤーの経験から分かっているこのゲームの絶対のルールだ。


 そんなことを考えながら歩いているうちに、拠点として使っている廃墟が見えてきた。


 かつては小さな家だったのだろう。半ば崩れた石壁に、蔦が何重にも絡みついている。屋根は一部が落ち、雨風を完全に防げるとは言いがたいが、それでも森の中で一息つくには十分だった。私は周囲の廃墟から拾ってきた朽ちかけの家具を手直しし、椅子や簡単な棚として使っている。


 廃墟の奥に置いてある姿見の前で足を止める。縁は欠け、鏡面にも斜めに細いひびが走っているが、まだ十分に機能していた。薄暗い室内の中、そこには私の姿がぼんやりと映る。


 枯木が、人の形に無理やり押し込められたような身体。


 手足は細く、関節のあたりは枝の節のように歪んでいる。胴体には樹皮めいた皺が走り、胸や腹にあたる部分も人間の柔らかさとは無縁だ。顔には目、鼻、口に見合う位置に漆黒の穴が空いていて、そこだけぽっかりと闇が抜け落ちているように見える。


 頭からは髪の代わりに葉が垂れていた。生い茂るというより、枯れかけた葉と黒ずんだ若葉が入り混じった、不思議な質感の髪だ。動くたびにかさりと乾いた音がする。


 そして、全裸である。


 とはいえ、肌は木なのであまり気にならない。人間の身体だったら羞恥で落ち着かなかっただろうが、今の私はどこからどう見ても木だ。服を着ていないというより、最初からそういう造形の怪物と言った方が近い。


 悍ましい見た目だとは思う。


 けれど、私個人としてはとてもかっこいい。歪で、禍々しくて、普通の可愛らしさからは遠い。だからこそ良い。スキル構成もかなりピーキーだが、組み合わせ方次第で一気に化ける相性がある。


 枯らす力と芽吹かせる力、森に溶ける感覚と、地中から命を突き上げる魔法。その噛み合いを考えているだけで、いくらでも試したくなる。


 「やっぱり、お気に入りですね」


 姿見の中の私は、黒い穴の目でこちらを見返していた。


 椅子に腰を下ろし、今日の戦果を確認する。ゴブリン、リーフラット、フォレストウルフ、フォレストスネーク、スティックモンキー。改めて一覧にすると、なかなかの量だ。


 拠点の修繕や強化に使えそうな素材も順調に集まっている。この調子なら、この廃屋をもう少しまともな家に建て直せる日も遠くないかもしれない。


 「あ、そういえば島くんからメッセージが来ていたかしら」


 フレンドリストの右上で、赤い丸が点滅している。未確認のメッセージがある合図だ。


 内容を確認すると、どうやらオンボロ機械からボロ機械へ成長できた、という報告らしい。伝え聞いたところでは、最初は移動するだけでも相当に苦労していたようだし、ここまで来るのも大変だったのだろう。


 私も最初は、ほんの小さな環境の変化でこの命を左右されていた。けれど成長するにつれて、少しずつ適応できる範囲が広がっている。彼もきっと似たようなものなのだと思う。


 「さて、では私も軽い報告を送るとしますか」


 この森に潜む中ボスの手下へ挑む準備が整いつつあること。このゲームの魔法に対する理解が、少しだけ深まったこと。そうした内容を、できるだけ分かりやすく咀嚼して文面にしていく。


 それから、忘れないうちに種族名も追記した。


 【イビル・ダークシード・ツリーマン】


 前に話した時は伝えそびれていた。ついでに、この森の名前も添えておく。


 【新緑芽吹かぬ不毛の森】


 島くんは、たしかサンクティンという都市にいるのだったか。ここからどれほど離れているのかは分からない。けれど、いつか合流できる日が来るなら、その時までに少しでも使える手札を増やしておきたい。


 「よし。もう少し敵を倒してから、今日はログアウトしましょうか」


 私は姿見に映る枯木の怪物へ小さく頷き、再び森へ向かって歩き出した。足元で草が黒い霧へほどけ、湿った空気の中へ静かに消えていく。その光景を横目に、私は次の戦闘で試す魔法の形を、ゆっくりと思い描き始めた。

 森さんのお話でした。病院で会話した際に話題に出た、種族名と生まれ落ちた地についての情報が開示されましたね。


 何やら不穏な響きですが、果たして……。


 そして、どうやら特異な空間把握能力を有しているらしいです。森さんも主人公と同じ疾病に苦しんでいる身ですので、そこに関連しているような?

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