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〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ
第二章▼避難所から始まる地下研究所探索▼

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第31話『サクスドルフ滅亡の神話』

 沢山の感想、ありがとうございます!


 一つ一つ丁寧に返したいので、時間がある時にまとめてお返事しますね!


 それまでしばらくお待ちくださいm(_ _)m

 随分と歩いた後、私たちはロヨンの塒に辿り着いた。筆舌に尽くし難い経験をしたが、なぜだかここが落ち着く気がするから不思議だ。


 「さて、ルイスよ。お前さんのおかげで新たな一歩を踏み出せた。心から感謝するぞ」


「私は何もしてないさ。ただもう少し近くで観察したかっただけで、その殆どはあなたの功績だよ」


 ふう、と一つ息を吐き、木箱の上に腰をかけた。


 ボーッとしながらあれこれと先程のことを考えていると、ふとロヨンの後ろ姿が目に入った。やはりかなりの長身だな。


 ロヨンは以前と同じように棚からコーヒー粉が入った容器と二つのカップを取り出し、ケトルに水を入れて加熱用の器具の上に置いた。


 そのままカチャリとガスマスクを外すと、私の方へ一度振り返り、意味深な微笑みを浮かべてから何かしらの作業を続ける。


「随分と熱心にゲートを見上げていたじゃないか。なにか気付いたことがあったのだろう?」


 彼がどんな表情をしているのかは背中越しゆえに見えないが、きっと私が何らかの特殊な状況にあったことを察しているのだろう。


 まあ、御託を並べるまでもなくおかしな状態だったと思うから、特に言い訳する必要もないだろう。彼が感じた違和感は正しいわけだし。


 「以前、私は自分が機械系の種族だと言っただろう?きっとそれに関係していたのだと思うが、ゲートに近付いた時に特殊な通信を感知することに成功してね、面白いメッセージを受け取ることができたんだ」


 技術に関する情報や、サクスドルフに関する情報も今は伏せる。今から渡す情報の反応を見て、開示するか否かを決めるべきだ。


 「なんぞ面白いものを得たんだか」


 彼に返事をする代わりに、そこらに置かれた藁半紙を手に取り、私のイメージをここに書き出すようイメージする。当然サクス文字の技術を応用して、だ。


 私がしばらく何かを念じているのをロヨンは怪訝そうな目線で眺めているが、紙に文字が顕れ出したのを見て、酷く驚いた顔をした。


 博識な研究者を驚かせることができたのは、少し気持ち良かった。


 「ロヨン、できたらこのことは無闇に広げないで欲しいんだ。理由はこれを読むことで理解できるはず」


 私はそういうと、ロヨンにその藁半紙を手渡しした。私が渡すまでにずっと視線がこの紙に固定されている姿が滑稽だったが、まあ無理もあるまい。私でもそうするはずだ。


 「ふむ……、な、なんと……」


 彼は読み進めていくにつれて、その目を厳しく細めていく。眉間によった皺が、彼の内なる激情を表しているかのようだ。


 ロヨンが一通り文章を読み終わるのを待ち、ゲートから得た情報と上層で得ることのできた研究者の記録を見比べたり、検証したりすることで時間を潰した。


 これはかなり有意義な訓練になるだろう。未知の技術を解き明かそうとする優れた研究者のプロセスと、実際の結果を細かく比較することで、その手法や効率的な調査方法のノウハウが得られるはずだ。


 これは今後も暇な時には積極的に行うべきだろう。


 そうこうしている内に、私が書き出したカーミナ・マルトの言葉を読み終えたロヨンが話しかけてきた。


「ルイスよ、もしこれに書かれていることが事実であるなら、儂は一刻も早く地上に戻り、数多の神殿を撃滅しなければならないのだが、如何か?」


 いや、如何か、と言われても……


 何か彼の心を動かすような部分があったのだろうか。もちろん私もその神々に思うところがないわけではないが、彼らの主張にもある種の正しさはあるだろう。


 急な技術的進歩は、たしかに人類を苦労や苦難の試練から解き放ち、生活を随分と便利にしたに違いない。それは人々にとっては甘受すべき人類の進化だとしても、神々はそうは思わなかったのだろう。


 それはアビステイカーに備えて、ということではないのだろうが、何かしらの意図があったはずだ。


 この世界の惨状を鑑みるに、アビステイカーは神々の予想すら裏切って顕れ出したはずだから、もっと別のことを見据えていたはず。


 それらを理解することなく地上で神々の神殿を破却するのは、些か性急に感じなくもない。


 世界に絶望と混沌を齎すなら、それも悪くないだろう。この世界に満ちる瘴気から身を守るための手段として加護が挙げられるが、それらを管理する神々の神殿や祭壇を破壊すれば、とんでもなく楽しいことになるに違いない。


 しかし、ロヨンもそれによって護られている一人の人間であるはずだ。


 ここは直接聞くのが早いか。


「そう思ったのはなぜだい?彼らの忠告にもある種の正しさがあるように見えるのは、私が愚かだからだろうか」


 「ああ、違うぞ。全くの見当違いだ。人類の技術的進歩に貢献したサクス文明を滅ぼしたからだとか、まだ見ぬ多くの技術を消し去ったからだとか、そんなもんじゃないわい。私の中で幾つかの論理が結びつき、一つの結論に至ったからじゃ」


 ロヨンは何やら得心がいった風な顔で、私に話し続ける。


「今は亡き我が先祖の祖国は、ある日、数多くの神々の使徒に襲われる形で滅亡したのじゃ。そういった神話が子守唄として語り継がれていてな。全てに納得したのだ。全てに、な」


 彼のその両の目には、あらゆる物を呑み込んでしまいそうな黒い光が滾っていた。


 ロヨンが、サクスドルフ帝国に住んでいた人の子孫だとでも言うのか……?


 「我が一族の祖国、サクスドルフを焼け野原にした憎き神の尖兵共のことを、儂、我が両親、爺婆、そのまた爺婆に至るまで、一時も忘れたことなどない。我が一族に語り継がれた亡国の歴史は、神々の七つの大罪によって引き起こされたものだということをな!」


 ぶわりと彼の魔力が巻き起こり、周囲に雑然と置かれていた細々しい物を揺らしたり砕いたりするその姿は、まるで悪鬼羅刹のようだ。


 二メートルの怪物が目を血走らせて力む姿は、子供が見たら気絶するに違いない迫力がある。


「ルイスよ、そもそもなぜサクス文明の遺物を調査しているのか、まだ教えていなかったな。それは我が一族の悲願を叶えるためじゃ」


 怒りを発散することで冷静になったのか、大きく息を吐き出し、落ち着いた口調でポツリとこぼした。その姿は先程の激情とはうってかわり、酷く小さく見える。


「十年前にここへ来たといったが、それ自体に嘘はない。しかし、それ以前にも当然数多くの遺跡を調査してきた。我が祖国が生み出した多くの痕跡を辿り、ここに辿り着いたのが十年前のことじゃ。騙して悪かったの」


 そう言うと、頭を下げた。


「その必要はないよ、ロヨン。私にも隠し事の一つや二つ、あるからね」


 私は曖昧に微笑むことで茶を濁した。


 私の隠し事は一つや二つじゃない。これ、どうしよう、私が君の祖国で祀られていた神の寵児だとか言ったら、とんでもないことになりそうだ。


「それで、その言い伝えとは聞いても良いものなのだろうか?」


「ああ。カーミナ殿の言葉で、一族に伝わる神話の失伝した部分を補うことができての。ある一つの物語になったのじゃ」

 

 彼が語る話によると、サクスドルフの崩壊の歴史は以下の通りであるらしい。


 この大陸には、様々な種族の祖先となる存在の小集団が偏在する形で均衡が保たれていた。ある日、一つの集団にとある神より神託が降りたという。内容は簡潔で、石を三角に加工しなさい、というものだった。


 その集団はなんのことやらとその内容を疑いつつも、とりあえず神より降された神託だからと、それに従って適当な石をどうにか三角に加工した。


 これがあらゆる機械、機構の先駆けとなる始まりの恩寵、楔だった。


 楔を用いることで木を割き、梃子を組み上げ、石を割り、それを使って金属を加工し、複雑な機構を組み……


 それらを繰り返すことで、サクスドルフは偉大なる技術を擁するサクス文明を作り上げた。サクス文明は彼らが崇め奉る神の意向により、周囲の小集団にその知恵を惜しみ無く分け与えていった。


 その結果、サクスドルフの元には多くの集団が集まり、やがては神より神託を賜る神官が、その神によって王権を神授されることで帝国へと変化していく。


 彼らは日々汗と涙を流して生活を豊かにするための努力を繰り返し、少しずつ少しずつ暮らしが楽になっていく。外からその技術を奪おうとする者らとの戦いが続発するようになるのは、少し先のことだ。


 そんなことを繰り返すこと数百年、サクスドルフが持つ技術は、ついに埒外の領域にまで届いた。遠く離れた位置に望むものを送り、外から襲来する蛮族に対しては絶対の防御を誇る結界を張り、またそれでも危険な存在に対しては遠く離れた土地へと吹き飛ばす機構を用いた。


 外敵への心配が無くなった彼らは、更に人々の生活を豊かにするであろう技術の研究に邁進していく……と思った矢先、彼らが崇める神とは異なる神より神託が降った。


 曰く、人類は健全な競走の上て緩やかに発展していくことが望ましいことであり、サクスドルフが行う技術革新は人類から成長する意欲を奪う悪だと。


 その進歩を捨て、再び野に帰るなら手を叩いて褒め讃えよう。が、それでもなお人類を堕落させることを辞めぬのならば、あらゆる神々より遣わされし精強なる勇者達が、その尽くを撃滅するだろう、と。


 サクスドルフの者は困惑した。どういうことだ、私達は得られた技術の多くを他の神々が庇護する種族にも分け与えたではないか。彼らとも仲良く暮らしているし、共に研究している技術もあるのだぞ?彼らはいったい何を考えているのだ?


 彼らの忠告にはたしかに納得できる部分がある。我々の行いは、人類の技術的発展を著しく早い速度で駆け抜け、彼らが本来経験するであろう苦労や困難を無視している側面も否定できない、と。だからといって、滅ぼすほどのことなのだろうか。人類はそこまで綺麗に進化していくものなのだろうか。


 彼らは崇め奉る神に助けを求めるも、流石に数え切れない数の神に襲われては、どうすることもできないらしい。一人の神が対処するには、相手の数が些か多いらしく、その対処に手間取っている間は地上への監視が疎かになってしまう。


 あなた達の努力の甲斐あって凄まじい力を手に入れることができたが、その多くは戦うことではなく、新しい物を作り出すための力であり、直接彼らを攻撃するような手段は限られている、とも。


 そこでサクスドルフの民は考えた。迫り来る脅威に対抗するためには、非道な兵器の開発、使用が必要不可欠なのだと。彼らは自国のポリシーに反することを理解しながら、凄まじい技術力を用いて一つの決戦兵器を作り上げる。


 デウス・エクス・マキナと名付けられたその機械兵器は、迫り来る神々の使徒である勇者に対して脅威の力を発揮した。色とりどりの魔法を吸収したかと思えば、その魔力を自身の力に変換し、逆に凄まじい破壊力を伴った一撃を放つ。


 五種の超技術によって造られた武装を巧みに駆使し、迫り来る幾多の勇者を塵に変えていったという。


 しかし、数の暴力とは恐ろしいものであり、次第に劣勢になっていくと、徐々にあらゆる物資が枯渇していく。生活必需品の不足と共に機械兵器を修復する部品も不足し、その戦果に翳りが見えてくるのはすぐの事だった。


 結局、サクスドルフは滅亡した。見事なまでの敗北だった。民は虐殺され、優れた技術の結晶は何も顧みられる事なく破壊され尽くした。多くの技術が失われ、人類の位階は大きく減退した。


 生き残った僅かな民は各地は散り、貧しい暮らしを余儀なくされた。


 戦う力を持たない神が多くの神の前で暴虐の限りを尽くされ、襤褸のような姿になってかつての愛し子達が作り上げた土地を眺めたのは、それからすぐのことであった。


 神は慟哭した。心の底より深い絶望が沸き上がり、その光り輝く美しい神気はドス黒く濁り、灰とも黒とも言えない不気味な色へと変貌した。神が生き残った民を祈るように探していると、ふと一つの機械が目に付いた。


 その機械こそがデウス・エクス・マキナの残骸であった。ボロボロに朽ち果てたその機体には、もはや再び動き出すような気配はなかったが、最後まで戦い抜いたその姿を見た機神は、そこから一つの着想を得た。


 使徒、勇者、機械兵器……


 神が直接手を下せなくとも、使徒ならば可能なのだろう?ならば、刮目せよ、愚劣なる阿呆の神々よ、貴様らの求めるその技術の退化という奴を、我自ら代わって行ってやろう、と。


 神は民の作り上げる技術の全てを愛し、見守ってきた。成功も、失敗も、その全てが愛おしくて堪らなかった。ゆえに、その全てを知り、憶えていた。


 朽ち果てた機械兵器を具に観察することでリバースエンジニアリングを行うことなくその機構を詳らかに理解し、機神の権能を用いてあらゆる超技術を組み込んでいく。


 五つの武装を操る決戦兵器というコンセプトは変えず、ただこの世界に絶望と混沌を齎す為だけに暴れる機械を作り上げた。


 機神はそこに疑似人格を与えて自らの寵児とすることで、他の神々が使徒を勇者という駒にしたように地上へと現出させた。


 機神はその機械兵器にエクス・マキナ・アポカリプスという名をさずけ、たった一つの命令を与えた。


『サクスドルフの民を除く全てを破壊しつくすのだ』


 機械兵器はその力を遺憾無く発揮し、あらゆる文明、文化、国、集団を滅ぼし尽くし、世界に絶望と混沌を齎した。


 機神は満足した。ああ、ざまあみろ。どうだ、お前たちが我らにしたことはこれと同じことだ、と。その苦痛を味わい尽くせ!と。


 その哄笑が止むと、途端に壊れた世界に光が溢れた。失われた全てが元に戻り、再び当たり前の毎日が始まった。機神の眷属たるサクスドルフの民たちを除いて。


 何やらより大きな力を持った神がその権能を行使することで、彼女の行いを無かったことにしたらしい。


 彼女は膝から崩れ落ち、失ったサクスドルフの跡地を眺めた。これ以上彼女の力が増すことはないだろう。あってもそれは、技術が成熟していく随分と先の話だ。今の力でその神に勝つことはできない。それまで、虎視眈々と牙を研ぎ続けるのか?我には不可能だ。


 彼女はこの世の全ての絶望を一身に受け、壊れてしまった。自らが作り出した傑作を小さな箱の中に封印し、異次元へと放り投げた。自らは世界の深い深い場所へと潜り、そこで長きに渡る眠りにつく。


 世界は光に満ち溢れ、美しい野山を駆ける人々の姿が戻った。彼らはサクスドルフの民と同じような手段で緩やかに技術を進歩させていき、いつの日かに失われた超技術の残滓を発見する。その技術の欠片をしばらく見つめ、ある一人が言った。


 この技術を研究すれば、きっと人類は豊かになるに違いない、と。


 彼が語り終わる頃には、既にコーヒーは冷めきっていた。同時に私の心もだ。


 その話は、生き残ったたった一人の神官が、破滅のしばらく後にやぶれかぶれで祈った際に見たイメージを元にした話だそうで、その神官はこの神話を子々孫々に末永く語り継ぐよう言葉を残して逝ったらしい。その子孫の一人が目の前の男、ル・ロヨンだ。


 「儂は誓ったのじゃ。いつの日か我が祖国の秘密を解き明かし、必ずその真相に辿り着く、と。しかし、重要な部分が失伝しておったらしくての、その全容が不明瞭だったのじゃ。そなたのおかげでこの通りじゃ、感謝するぞ」


 ロヨンはそう言うと、深く深く頭を下げた。


 私は彼の旋毛をみながら、どう声をかけるべきかひたすら悩んだ。

 ここで主人公の種族のバックボーンを書くかどうか大変悩んだのですが、これからより大きなスケールの作品にしていけばいいかと思い、ここで書き切ることにしました……!


 少し説明調の話になってしまいましたね。ただ、こういった話を書いている時がいちばん楽しいです!

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