表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈Genesis of Anomaly〉〜恩寵という名のデバフを盛るほど強くなるVRMMOで、盛れるだけ盛ったオンボロ機械兵器のお話〜  作者: 月麗 ジアマリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/15

第1話『プロローグ』

初めまして、月麗ジアマリと申します。


 普段は読むのみで、特に執筆などはしていなかったのですが、何事もまずは挑戦ということで、好きなジャンルであるVRMMOに関する作品を書いてみました。


 日頃から他の作者様の素晴らしい作品をご覧になっている皆様には拙い物に映るかもしれませんが、執筆を通して一歩ずつ成長していけたらなと思っていますので、暖かい目で見守って頂けると幸いです。


 よろしくお願いします。


 月麗 ジアマリ

 自作した簡素な朝食を食べ終え、寝具と一体化したカプセル型のフルダイブ機器で盛大に二度寝をかましたのがつい先程のことである。


 今はハッキリとしないぼんやりとした意識のまま、この機器を開発した企業が同じく提供するゲームプラットフォーム内のショップを、ただボーッと眺めていた。


 「そういえばこのゲーム、サービス開始予定日が今日の正午からなのか」


 現在時刻は昼前の11:30である。


 新規に発売されるゲームがまとめられた項目をサーフィンしていたところ、どうやら以前にSNSで話題になったことでウィッシュリストに登録していたゲームの配信がこのあとすぐであるらしい。


 「ポラリス・テクノロジー……、たしか独特な世界観を持ったゲームを開発していることで有名な所だったか」


 ポラリス・テクノロジーとは、いわゆる「死にゲー」と呼ばれるジャンルのゲームを開発することで有名なゲーム開発会社であり、一部でカルト的な人気を誇る大手ソフトメーカーの一つである。


 数年前に現在のフルダイブ技術の最先端を行く企業に買収される形で参加に加わり、現在も変わらず良質な死にゲーを制作していることでも有名だ。もちろん我が家にあるフルダイブ機器もその会社の製品である。


 さて、コンシューマー時代から多くの傑作を世に生み出してきたポラリスであるが、VRMMOでもそのセンスは全く変わらない。その最新作の紹介トレーラーが中々にヤバいと一部で話題になり、それが巡り巡って私のタイムラインにまで届いたという次第だ。


 「最近はこれといってハマってるゲームもないし、とりあえずこれやってみようかな」


 以前話題になった際にいつかやるかもと、とりあえずで予約していた過去の自分に感謝。事前予約特典もあるとのことで、既にワクワクである。


 ゲームタイトルは〈Genesis of Anomaly〉、通称「GoA」だ。同音だからなのか、既にポラリスのファンからはゴアなんて不名誉な略称で呼ばれているようだ。


 異常の創世…?ふむ、ピントは来ないタイトルであるが、まぁポラリスのゲームであるからして、どうせろくなものではないだろう。


 ショップの説明文によると、どうやら恩寵アノマリーと呼ばれる特殊な異形を含む、多種多様なデバフを得ることでしか生きていくことができない過酷な世界を生き抜き、荒廃した世界の真実を解き明かすことを目的とするゲームであるようだ。


「うわ」


 説明文と共に添付されたイメージ画像を見る限り、これまで私がプレイしてきたゲームとは正反対の世界観であるようで、思わず汚い呻き声をあげてしまった。


 紹介トレーラーをスワイプしたすぐ後の紹介画像の中には、見るからに邪悪そうな双眸を不気味に歪めて笑う、人間らしさが微かに残っているフォルムの老齢な女性が映っている。


 その手は、グロテスクにぐにゃりと歪み、くすんだ色の骨をそのまま剥き出しにしたもので、所々がひび割れても尚、力強い存在感を放っている。


 骨の手には、先端に獣の物に見える異形の頭蓋骨が括り付けられた杖が握られていて、今にも噛み付いてきそうな迫力がある。


 老女以外にも不気味な人物や街並み、風景がこれでもかと映っていて、どうやらこの世界に見慣れた普通の景色は存在しないようである。


 そんなこんなでGoAを調べることで時間を潰していると、あと数分でサービス開始の時刻のようである。


「もう11時45分じゃないか。これは二度寝しすぎた…」


 GoAで数十分は時間を潰せたが、どう考えても寝すぎだ。今はむしろそれで良かったが、常日頃から平均よりも多くの睡眠を求める体のせいで多くの不便を被っている身からすると、やれやれと思わなくもない。


 カプセル内の寝具の上に胡座で座り、横になった際の左手側にある特殊なウィンドウで諸々をいじっていく。


『ドリーム・スケイル、システムオールチェック完了。フルダイブ接続、準備完了。現在当機器に不具合は存在しません。』


 小さなモニターに映った文字を見て、最後にカプセルの開閉を行うスイッチを押した。


 ゆっくりと開口部が閉じていき、数秒もしないうちに完璧に密閉される。ゆっくりとカプセル内は安眠効果のある特殊な配合の気体で満たされ、次第に眠気が襲ってくる。


 セットアップを終えて備え付けの枕に頭を乗せると、機器全体のスピーカーから女性の声が響いた。


「ユーザー認証完了。バイタルに問題ありません。接続深度、異常なし」


 フルダイブ可能な状態になるまでに多くの確認や作業が必要になるが、これはフルダイブを利用する多くの人にとっては当たり前の行為だ。


 カプセル型の機器、名称をドリーム・スケイルと呼ぶが、これは開発初期のプロトタイプや最初期に発売された物を含め、多くの悲劇的な事故を乗り越えて改良を重ねてきた精密機器なのだ。


 それだけに、一つの不具合も見逃さないよう、フルダイブを行う度に細部にまで繊細なチェックを自動で行い、簡単な不具合は自動で修復してしまう機能まで備え付けられている。


 それでも定期的なメンテナンスは必須だが、それもドリーム・スケイル専門の整備型アンドロイドを呼べば数時間で完了するほど、この精密機器はメンテナンス性に優れた構造をしている。


 実際にここ半世紀で死亡事故は発生しておらず、最近は発売当初の懸念や事故を見事に克服したことで、改めてその安全性を高く評価されている。


「睡眠導入開始。琉生様、素敵な夢をお楽しみください」


 ドリーム・スケイルのキャッチコピーでもある文言を聴きながら、ゆっくりと微睡んでいく。ああ、この感覚……本当に気持ちいい。


 意識が薄れていき、次第に何も考えられなくなる。ゆっくりと意識が沈んでいき、心地良い暗闇の中をまるで赤子のように揺蕩うのだ。ぼんやりとした意識のまま、その時を待つ。


 それが数秒続いた後、今度は意識がゆっくりと浮上していくのを感じる。フルダイブ時特有の感覚だ。徐々に昇っていく感覚が強まり、意識が沈んだ時以上の勢いで上昇していく。


 パタリとそれが止まると、ぼんやりとしていた意識がハッキリとしてくる。


「……ふぅ、やっぱりあの寝落ちの感覚、何度味わっても心地良さを感じてしまうな」


 フルダイブの際に必要な睡眠導入は、寝落ちの感覚と似ていると多くのユーザーが口を揃えて言うほど心地良いものだ。


 意識が明瞭になるにつれて真っ暗だった世界に鮮やかな光が差し、どこまでも続く草原と、どこまでも続く青空に挟まれた大きな豪邸の前で目を覚ました。


 私の意識がシンプルな造形の人形に乗り移ると、そのまま豪邸へと向けて歩みを進める。足元の草が爪先を擽る感触や、時折頬を撫でる穏やかな風が心地良い。


 ここはドリーム・スケイルが提供するプラットフォーム内にある特殊な空間で、そのカスタマイズ性からユーザーによって千差万別の姿をしているが、まあいわゆるホーム画面である。


「さて、GoAはどこかな」


 玄関までのアプローチをゆったりとした足取りで進み、大きな扉を押して豪邸内に入る。


 目に入ってくる豪奢な調度品を横目に廊下を歩み、突き当たりにある書庫へと入る。ユーザーによって姿形が様々であるが、私はソフトを本の形で保存している。


 その数は膨大で、とてもではないが人力で探し出せるとは思えない量が、事細かく分類分けされてそれぞれの本棚に納められている。


 まだプレイしていないGoAは、入ってすぐのカウンターの上に置いてあった。その他にも積み上げられた未プレイのソフトが多くあるが、とりあえず今はGoAである。


「そろそろダークなゲーム用の本棚も増築が必要かな、これは」


 取り急ぎ空の本棚をダークファンタジー用の物にし、そこにGoAを納めた。不格好だが、この本棚も直ぐに空きがなくなってしまうだろう。


 本棚に収められたGoAを眺めて満足した私は、その背表紙に素早く二度触れる。


 すると、目の前にこのゲームをプレイする際の注意事項や免責事項等が表示され、それを隅々まで確認していく。当たり前だが、確認せずにプレイすることは不可能なのだ。


 ドリーム・スケイルはこういった部分での小細工は見逃さないし、個人の自由が増えるに比例して負うべき責任も当然のように増えた22世紀の地球で、こんなものに疑問を呈する人間などまず居ない。俗に言うチンピラや不良でも、一応は隅々まで読むのだ。


 そもそも、機械によってしっかりと読んだと判断されないとアプリケーションを開くことすらできない。


「よし、読み終わりっと。じゃあ、行こうか」


 説明を読み終わる頃にはサービス開始まで後2分を残す程の時間になっており、ゲームを始めるのに丁度良いタイミングである。


 幾つかの文章を再確認したり、注意事項等と共に出たゲームトレイラーを眺める等して時間を潰した後、視界の端にゲーム開始が可能になったことを告げる通知が表示された。


「どんな世界が待ってるのか想像もつかないけど、隅々まで遊び尽くそう」


 そう口遊むと、表示された開始ボタンを押してGoAの荒ぶ世界に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ