2.毎度のことながら俺はイベント事に関わりがなかった。
毎度のことながら、例年の俺はイベント事には関わりがなかった。
十二月の一大イベントであるクリスマスもそうだ。食事の後にケーキが食べられる日くらいの認識しか俺にはない。
ただ、毎度のことながら今年は違う。俺には由佳という彼女もいるし、友達もいるのだ。
「それじゃあ九郎は、明日は由佳ちゃんや友達と一緒という訳か」
「まあ、そういうことになるかな」
「夜は由佳ちゃんに泊まるの?」
「一応、そういうことになっているけど……」
クリスマスイブに予定がある。そう告げても両親は特に驚きはしなかった。
それはそうだろう。由佳という彼女がいることも、友達ができたことも二人は知っている。それで驚かれたら訳がわからない。
ただ二人は、変わりに温かい目をしている。その意図は理解できるのだが、俺としては微妙な気持ちだ。
「由佳の両親、おじさんやおばさんからもそうしてもらいたいと言われたんだ。当日、二人は出掛けるらしいから……」
「当日出掛ける?」
「それって……」
俺の言葉に、父さんと母さんは顔を見合わせていた。
念のため説明しておくべきかと思っていたのだが、それは間違いだったかもしれない。空気が少し冷たくなっている。話題をそらすべきだろうか。
「所で二人に質問なんだけど、由佳へのクリスマスプレゼントってどうしたらいいと思う?」
「え? まだ買ってないの?」
「何にするべきか悩んでしまって、結局今日まで来てしまった」
「そういうことはもっと余裕を持っておいた方がいいわよ。まったく、誰に似たんだか……」
「え? あ、あははっ……」
とりあえず俺は、悩んでいたことを聞いてみることにした。
由佳とは、クリスマスプレゼントを交換しようと約束している。それを俺は、クリスマスイブ前日という今日まで悩んでいたのだ。
しかし、もう時間はない。今日もしくは明日の朝くらいまでに決めて買っておかなければ、間に合わないのである。
「まあ、でも、クリスマスプレゼントか。それは確かに、難しいことかもしれないね」
「そんなに悩むものではないと思うけど……そうね。やっぱりアクセサリーなんかは、無難な所なんじゃない?」
「やっぱり、そういうものか……」
両親の言葉に、俺は由佳の誕生日のことを思い出す。
その誕生日に、俺は既にネックレスを贈っている。その状態で、もう一度アクセサリーを贈っていいものなのだろうか。
少なくともネックレスをやめておいた方がいいのは確実だ。それならイヤリングとかになるのだろうか。やはりわからなくなってくる。中々に難しいものだ。




