第5話 21歳冒険者、ノアの日常
ザシュッ。
ダンジョン第35層。ノアは、目の前の4mはありそうな怪物の首を落とした。鋭い爪で腹や頭を攻撃してきて、厄介だった。怪物の周りには3つの死体が転がっている。
「あ、ありがとうございます……!!」
「いや、別に」
「私たちの命を助けていただき……! 本当にありがたい! 何とお礼をすればいいか……」
何度も頭を下げる冒険者たちの横をすり抜けていく。
クエストを終わらせたあと、怪物に襲われていたパーティを助けたのだ。10人ほどの大規模パーティで、3人はもう手遅れだった。
「お礼を言うんなら、自分たちに見合った階層に行きなよ。あんたたち、23階層くらいが限界だろ。数で殴ったって、格上には勝てねぇんだよ」
「は、はい……」
「じゃあ、俺はもう行くから。次からは気をつけなよ」
言い残して、ギルドへ向かった。11歳のときから属している例の闇ギルド《暁闇》だ。あの歳からクエストを取れるのは暁闇くらいしかなかった。
ダンジョン1階層まで来てため息をつく。階層が大きくなるにつれ、自分の実力を理解しないままむちゃするやつが出てくる。ノアが他の冒険者を助けたのだって、1度や2度の話ではない。
「お願いだから、考えてほしいんだけどな。実際、死んでるわけだし」
そう、人が死んでるのだ。愚かにもほどがある。
まぁ、だからといって舐めれるわけでもないけど。なんだかんだ言って、ノアはまだ若い。老後の資金を貯めるためにも、1つでも多くクエストを受けなければならない。最近、力をつけてきてるやつもいるみたいで、そいつらに取られたくはなかった。
グッと背中を伸ばし、肩を解していると、何やらダンジョンの出口付近で揉めていた。
少女を、7人ほどの男たち囲っている。
「止めるか?」
ああいうのを止めるのはめんどくさい。しかし、見て見ぬふりするのも気分が悪い。
数秒頭を巡らせたあと、ノアは助けることに決めた。
1番ダンジョンに近い男の肩を叩き、振り向かせる。少女と男たちが一緒にいたのはどうやら無理やりなのだろうと雰囲気で把握する。少女が着ていた灰色のローブがはだけて、しかも少女が泣いていたからだ。
ノアは掴んだ男の肩をぐるりと回し、地面に叩きつけた。簡単に倒れる。同様にして7人を、膝蹴りを顎に決めたりしているうちに一瞬で倒れ伏した。
「あんたら、何してたんだ?」
ノアが尋ねると、倒れている男のうち1人が口を開いた。他は気を失っているようだ。微妙に笑っていて気持ち悪い。
「ちょっと、同じパーティに入らないかどうか勧誘をな」
冒険者になる女性は少ない。少ないということは、狙われやすいということである。たまにこういうことが起きるのだ。
ノアは問答無用で少女の手を取ると、歩き出した。男は肩の関節を外しておいたから、しばらく動けないだろう。
「ありがとうございます……!!」
「いや」
お礼を言う少女に首を振る。
21歳になったノアの上級冒険者としての日常は、たいていこんな感じだった。




